1-35 その者。狂人
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狂った声で高らかに、心底愉快そうに叫ぶラッセル。
「ふいっひゃぁ!」
妙な叫び声と共にバスケットボールほどある拳を真上から振り下ろすラッセル。
「ちっ!」
それをサイドステップで躱すと同時に距離を縮め、刀を一閃する。
「無っ駄どぅえーす!!」
硬いっ!?
どうやらただ巨大になっただけじゃないらいしな。
まるで鋼鉄の塊を斬っているかのような衝撃が俺の腕に伝わった。
反射的に刀を落としてしまいそうになるが、それよりもはやく痛みを治癒させる。
「ふいっひゃぁ!」
迫り来る大木のような蹴りを躱し、再度攻撃する。
「無っ駄無っ駄無っ駄どぅえーす!!」
ラッセルの攻撃は巨大になったからなのか大振りで随分と避け易い。
回避しては攻撃、回避しては攻撃を繰り返しいるものの、だめだ。小さな傷すら付ける事が出来ていないぞ。
「はぁ。頼りなくないんだけどな」
「頼るぅぅぅ? 誰に頼ると言うのでっすかぁーー!?」
「相棒……かね」
「相棒ぅー?」
次の一手は斬撃ではなく、床にめり込んだ奴の腕を踏み台にして後ろに飛び退いた。
そして、呼び掛ける。
「ピピカ」
「はぁーーーーーーいっ!!」
待っていたとばかりに元気な返事と共に俺の胸あたりから出てくるちっさい相棒。
「にひひっ」
ピピカの姿を見た瞬間。ラッセルが気持ち悪い笑みを浮かべていた。
こいつ、ピピカがどういう存在かわかってるのか?
嫌。逆か。
わかってるからこそ、笑うのか。
研究者からすれば精霊なんてとっ捕まえたくて仕方がないだろうからな。
「イツキぃー、こいつ気持ち悪い……」
うん。同感。
「ということで、さっさと倒してガラスの奥にいる奴らを助けるぞ」
「はいはーい! ピピカの一大魔法見せてあっげるよっ!」
クルクルと回りながら既に定位置になりつつある俺の頭の上までやってくるピピカ。
ちっこい胸の前でぐぐぐーっと力を込めた後、「おりゃー」と両手を前に突き出した。
「『精霊魔法・一大雷電』っ!」
一大魔法の一大ってそのまま術名かよ!?
さっきのキメラケルベロスにも放たれた極太の雷のラッセルへと向かう。
ってそれオーバーキル!
確かにもはや人間には見えないけども! めちゃくちゃ気持ち悪いですけれども! それ人間だから!
たがまあ、放たれてしまったものは仕方がない。
特大の雷がラッセルに直撃し、もくもくと煙が巻き起こる。
「ありゃー。ピピカー、やり過ぎ」
「……あはは……」
ピピカも自覚したらしい。苦笑いして誤魔化そうとしても俺は誤魔化されないぞ?
「なぁーにを勝ったつもりでいるんでぇーすかねぇー」
煙の中から聞こえる声。
その内部より何かが飛び出し、ピピカの身体を壁に縫い付けていた。
「ピピカ!」
「くっふふー。まっさか精霊と出会えるとはー、わったくしは幸運でぇーす」
煙が晴れていく。
再びその巨体を露わにしたラッセルの身体に傷は何一つない。
何かを持って前に突き出しているラッセル。
「これは魔力を遮断する特殊な石を加工してこのわったくしが自ら作り出した賜物どぇーす」
どういう事だ?
魔力を遮断する?
もしそれが本当だとすれば、ピピカの攻撃はあの小さな機械の力で当たる前に煙にされちまったって事か?
対魔力攻撃用のバリア。それも強度は凄まじい。
それに、今ピピカを壁に縫い付けている動物用の罠みたいな奴にも同じ機械らしきものがついている。
ピピカはそこから逃げ出そうという気配もなく、黙ってしまっている。
力を封じられちまってるのか?
「くっふふー」
こいつは……やばいな。
次回更新は明日です!
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