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1-19 その単語、しつこいぞ!

 ブックマーク評価共にありがとうございます!

 さてと、とりあえずこの旅の中での目標ができたのだが、活発化ってどうやるんだ?


 前にやり方をマーレ師匠に聞いた事があるのだが、返ってきた答えは。


「活性化の感覚は人で違う。習うより慣れろだ」


 らしい。


 だけどヒントを俺に与えないのは意地悪とか、そういうのじゃなくて、マーレ師匠の感覚を聞かされたらそれが先入観になって本来俺に適している感覚をつかみ損ねてしまう可能性が出るからだ。


 先入観によって得た中途半端な運用法より、自分に合った運用法を自らの手で掴んだ方が最終的にたどり着けるレベルは上になれる。

 まあ、後者は俺に最適化されているのだ。当然と言えば当然だな。


 そんな事を考えているとふとノック音が耳に届いた。


「実久か? 開いてるぞ」

「ざんねーん。彼女ちゃんでもメディンちゃんでなくルカお姉さんだよー」


 ニヤニヤとした笑みを浮かべてドアを開けたのはセリフ通りルカさんだった。


「ルカさんでしたか。すいません」

「いいよいいよ。それにその敬語だって本当はいらないよ? あたし、そういうの気にしないからねー。どちらかというと壁を感じてちょっぴり寂しいかなー」


 ニヤリとした笑みを浮かべながら言うルカさん。……いや、ルカ。


「わかった。これでいいか?」

「おお。ちょっと声色も変わったね。うん、そっちの方がしっくりくるよ」


 ケラケラと笑うルカ。

 まあ、敬語を使う時って自然と声を変えちゃうよな。


「それじゃ、行こっか?」

「行く? 何処にだ?」

「メディンちゃんと実久ちゃんのところにさ」


 そう言ってウイングをしたルカの後を追って俺は宿屋を後にした。


「おーい。お二人さーん」


 ルカが大きく手を振る先にいるのはカフェのようなところでお茶と洒落込んでいるレディー二人組だった。


 店内は賑わっており、レディーたちがいるのは外の席だ。


「……よくご飯の直後に食えるな」


 俺の呆れた視線に映るのは実久の前にある既に半分ほどにまで減ったケーキだ。


「何よ悪い?」

「そんか事言ってないだろ?」

「あははっ。まあまあ、甘いものは別腹って言うじゃない」


 二人がとっていてくれた四人席に俺とルカも座ると、さっそくルカが近くにいた店員を呼んだ。


「いつものセットを頂戴っ」

「はいっ、かしこです!」

「すみませんがメニュー貰えますか?」

「あっ、すみません!」


 今このテーブルにメニューはない。ルカはいつも来ているらしいが俺は当然初めてだ。

 何があるのかわからない。


「ど、どうぞ」

「ありがとうございます」


 メニューがわからないからメニューを頼んだだけなのだが、何故か実久からジト目を向けられているこの状況。

 何故?


 それはともかく、メニューに目を通してみるのだが、うーん、まあシンプルでいいか。


「オリジナルコーヒーを一つ、ブラックでください」

「はいです!」


 ぺこりと頭をさげた後、たったと店の中に入っていく店員さん。


「あんた、わざわざメニューを持ってこさせた割には普通の注文ね」

「まあな。ちょっと気になるメニューもあったけど、とりあえずはな」


 ルカが注文した奴がどんなものかはわからないが、今テーブルの上に並んでいる量を見る限りここでそれなりの時間を過ごすつもりなのだろう。


 二人に、主にルカに聞きたい事もあるしな。


「気になるメニュー? どれだい?」

「これ」


 ルカにメニューを見せながらそれを指差してみる。


「ほほー。こんなメニュー増えたんだねー」

「ルカ、知らないのか?」

「まねー」


 俺の指の先にあるメニューは【神々の涙】……なんというか、コメントに困る。


 おそらくこの神々ってのはあの谷をつくった者のことなのだろうが……ここまでやるのか……。


 これには流石のルカも苦笑。


「お待たせしましたー」


 やってきた店員は二人。あれ?


「おー。一輝の分もあるのに二人で運べるとは、ここの店員も成長したねー」


 それっていつもはルカのだけで三人以上店員が必要って事か?


 ……どれだけ食べるんだ?


 一人の店員が何枚ものお皿を持っている。えーと、一、二、三、四……九? えっ、それどうやって持ってるんだ? もしかして魔法?


 そしてテーブルの上に並ばれる料理の数々。俺の前にあるのはコーヒーカップが一つ。スプーンとかは無し。ブラックだしな。


「そんじゃいただきまーす」


 料理が揃った事で手を合わせた後に食べ始めるルカ。どうやらルカはまだ何も食べていなかったらしい。


「なあルカ。楽しそうに食べてる中悪いんだけどいいか?」

「いよー。なんだい?」


 一旦食事を中断してこっちに顔を向けてくれるルカ。


「……いつの間にか呼び捨て……あたしもそうだったし、もしかして、たらし?」


 何やら実久がボソボソ言っているが、からしがどうかしたのか?


 実久の事は放っておくとして、今重要なのはルカだ。


「ルカってここらへんじゃ有名なんだよな?」

「そうだねぇ」

「じゃあ、一番情報を持ってるのもルカだよな?」

「……ああ。そういう事か」


 俺の言い様に何かを納得した様子のルカ。どうやら過去に俺たちみたいなのがいたらしいな。


「まっ。君たちならいっかな。何でも屋ルカ。欲しい情報はなんだい?」


 指を組んで流し目気味に笑うルカ。その目は薄く光っていた。


「ここ最近この近くで起きている失踪事件に関する情報が欲しい。量、質、共に問わない」

「失踪? ああ、そういえばそんな報告があったねー」


 報告か。もしかするとルカは知名度の高さ、いや、顔の広さを利用して組織的に情報屋をやっているのか?


「んー、知ってること話してもいいけど対価は?」

「対価?」

「あたしは何でも屋だよ。その何でもの中には情報だってある。今言った事に関するであろう事を幾つか知ってるけど、それを聞きたいなら対価を貰おうかな」


 対価ねぇー。クマったな。

 わかりやすい対価となると金なんだが俺には持ち合わせがない。


 つまり対価を払えるか払えないかは実久次第だ。ちらりと彼女の顔の横見すると、ゆっくりと首を横に振られた。


「その様子じゃないのかな?」

「……ええ」

「そっか。あたしのこれは商売だからね。友人、恋人、家族であろうと対価無しで情報を与える事はないよ」

「そうか。まあ、ルカにもルカの生活があるんだろうし仕方ないな」

「一輝……」

「あ、あのルカさん?」


 俺たちの会話を静かに聞いていたメディンがふと声をあげる。


「ん? なんだい?」

「今月分の薬草が対価じゃだめですか?」

「…………へ?」


 メディンの言葉に目を見開いたのは言われたルカだけでなく、俺と実久もだ。


「ちょっと待ってメディンちゃん。それってつまり?」

「二人が欲しがっている情報の対価として今月分の薬草ではだめですか?」

「え、えーと」


 この会話的にメディンはルカにとって薬草の仕入先って事か?

 それで今月分のお支払いの代わりに俺たちに情報を与えてくれって事か?


 なんで?


 チラチラと若干困った様子で視線をこっちに向けてくるルカ。

 いやいや、こっちも疑問符ですって。


「メディンちゃん? なんで急に?」


 俺とルカも持っている疑問を代表して聞いてくれる実久ちゃん。いやー、優秀だねぇー。


「その、お二人は私の話を信じてくれました。今まで誰もが鼻で笑ったような話をです。お二人は普通の人とは違う何かがあると思うです。その、例えるならこの世界にとっての薬草みたいな人たちだと思うんです」

「薬草……ねぇ……」


 世界にとっての薬草。

 薬草師であるメディンならではの比喩なのだろうが、それってどうなんだ?


 いや、なんとなく今はわかるぞ?

 世界そのものを良くするための特効薬。考えようによっては正義の味方とでも言われてるのか?

 うむ。悪い気はしない。


「まあ、確かに二人はあの子達と同じ匂いがするからねー」


 あの子達? もしかしてあの谷を作ったって言う奴の事か?


「まっメディンちゃんがそれで良いって言うならあたしはそれでいいよ? 二人はどうする?」


 ルカにそう問いかけられ、メディンへと視線を向ける俺と実久。


「良いのか?」

「はいっ。お役に立てるのなら幸いです」

「そうか。ならそれで頼むよ。いいな実久」

「ええあたしもいいわ」

「オッケー。なら交渉完了だね。情報はまとめ次第宿屋に持ってくよ」

「まとめ次第ってどれくらいかかる?」

「そだねー。結構量あるし、まあ今日中には持っていくよ」

「わかった」


 ともかく有力そうな情報はこれで得られる事になった。


 マーレ師匠から受けさせられたクエストと一つ。

 それが今の会話にあった失踪事件だ。


 この近くとは言っても関係するであろう失踪のど真ん中にあるのがこの街ってだけだったのだが、良かった。

 さっさと全てのクエストを完了させないとなんか嫌な予感がするからな。

 次回更新は明日です!

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