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1-14 えげつないっすね

 ごめんなさい! 短いです!

 ブックマーク評価共にありがとうございます!

「一輝」

「なんですか?」


 いつもと声色の違うマーレ師匠に顔を向けると彼女は心配そうな眼差しを俺に向けていた。


「……どうしたんですか師匠。これは悲報じゃない。希報ですよ?」

「……本当にそう思っておるのか?」

「一輝さん……」


 師匠以上に表情を歪ませていた水連が小さく呟く。


「どうしたんだよ、二人とも」

「……あの、ミクさん」

「何かしら?」


 俺から視線を外し、実久へと向けると水連。

 その顔は至って真剣で、実久の中に緊張が走っているようだった。


「ミクさんは向こうでも一輝さんとお知り合いなんですよね?」

「……そうね。とは言っても深い関係じゃないわよ? まともに話したのはこっちに来てからね」

「……そうですか。あの、一つだけ、一つだけ教えてください」

「……何かしら?」


 声色がさらに濃くなった水連に実久の声色に強い緊張が宿る。


「一輝さんの肉体はどうなってるんですか?」

「…………」


 実久は何も答えない。いや、あの顔。まるで答えたくないかのようだった。


「も、もしかして一輝さんは……」


 俺は水連が心配しているそれにやっと気が付いた。


 俺がこっちの世界に落ちてきた寸前。何があった?


 俺は、事故にあっているのだ。


 普通、物理世界からこっちの世界に落ちてくることなんて早々ない。

 だけど、現に俺はここにある。


 ここで一つの仮説ができたのだ、


 俺の固有式は回復魔法だ。

 そして、この回復魔法の力によって俺はこっちの世界に来るのとほぼ同時に傷を完治させている。


 もしかして俺は無意識のうちに己の回復魔法に頼ったのかもしれない。


 つまり。


「一輝さんは、生きているんですか?」

「ーーっ!?」


 あの時の事故によってもしかすると俺は本来死ぬはずだったのかもしれない。

 水連がマーレ師匠に説明していた時の傷からして思ったのだ。


 生きているわけがない。


 少なくとも、回復魔法がその効力を持たない物理世界では望みがない。それほどの傷。


 俺の潜在意識がそれを悟り、せめて幻体と意識だけでも助けようとこの世界にやってきたのではないか。


 その可能性は高い。


 だからこそ水連は、今、これほどまでに泣きそうな顔を浮かべているのだ。


「…………」


 この場にいる全員の視線が実久に注がれた。

 躊躇うような間の後、この中で唯一答えを持っている彼女が口を開いた。


「……生きてるわ」


 その知らせは朗報だ。

 そのはずだ。

 だけど、何故だ?

 何故ここまで。彼女の声には不吉が含まれているのだ?


「けど」


 誰の顔にも安堵の色なんて欠片もなかった。

 紡がれた言葉に皆の表情がやっぱりかと言いたげな風に染まる。


「……あたしは詳しい話を知っているわけじゃないわ。だけど、担任から聞いたの。今、一輝は意識不明の重体だって、それに……」


 何かを言いかけた実久は首を振ると俺から目を逸らした。


「実久……今……」

「そうか。そっちのこいつはそういう状態なのか」


 俺の言葉に被せるようにしてマーレ師匠が少し大きな声を出した後、パンパンと手を打ち鳴らした。


「なんだこの空気は! 今ここにいるこいつは間違いなくこいつ自身なんだ。こいつはこの世界で生きている。それで良しとしようではないか!」


 何かを誤魔化しているかのような空気を全力で発しているマーレ師匠。


 彼女は俺が悟れていない何かに気付いたのか?


 頭の中に何か靄のようなものが掛かっていた。

 まるで、隠された何かから俺を守っているかのような。


 なんだ?


 この、どうしようもないほどの違和感は。


 一体なんだ?


「と、いうことでだ一輝」

「……なんですか師匠、その笑みは……」


 不吉以外の何物も感じないのだが……。


「これからお前はこの世界で生きるしかないわけだが」


 それは事実だ。確かに事実だ。

 仮にどうにかして俺が自分の肉体に戻ったとしても、その身体は意識不明の重体。


 意識は同じもののはずだが向こうで意識がないのは、俺の意識そのものがここにあるからだとは思うのだが、水連がなぞってくれたあの傷。

 ……うん。魔法でもない限り治らないな。


 結局戻ることは出来ないと言っても良い。

 だけど、普通このタイミングで堂々とそんなこと言いますかい? ドSロリ師匠。


 次回更新は明日です!

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