2話
その日の朝、玲音はウキウキしていた。
暇続きじゃなくなった事と、なにより今日も図書館の管理人(鏡野 颯人)に会える事で昨日の夜はなかなか寝付けなかったのだ。
今日は朝少しだけ早く起きて、暁美(母)の分まで朝食を作った。
作ったと言っても目玉焼きにトーストなのだが今の玲音の手料理レベルからみてみればなりのものだ。
「へぇー玲音もやれば出来るんだねぇー」
「当たり前よ、これ位ちょちょいのちょいよ!」
「でもさー、、、急にどうゆう風の吹き回し?」
暁美にそう言われて一気に恥ずかしくなった玲音
「え、あ、はい?べっ、、べつにいつもの事じゃない!あ、もうこんな時間!出掛けて来るね!」
いきなり慌ただしくなった我が娘が面白くてずっと観察してしまう。
玲音は昔から直ぐ顔や行動に出てしまうので一切隠し事が出来ないタイプなのだが暁美はその事は内緒にしており、その時その時の反応を楽しむようになっていた。
「ふふふ、青春っていいわね。気を付けて行ってらっしゃい!」
その時はもう玲音は靴を履き終える所だった。
「じゃ、行ってきまーす!」
慌ただしく外に出てみたもののまだ朝の8時、まだ図書館はやってないだろうか?まぁやってなかったら近くの海で時間を潰そうと思い取り敢えず自転車にまたがり皇綺羅図書館を目指した。
そして玲音は気持ちがウキウキしていたせいか自転車のスピードが早くなり思いのほか早くついてしまった。
「しまった、早く着きすぎた、、、まだぁー、、やってないよね?」
と石段を上り図書館を覗いてみる。
すると、図書館の玄関の前に人影が。
どうやら知っている人が箒を片手に掃除をしていた。
やはり美しい、と玲音が見惚れているとその視線に気いたのかこちらをみて笑顔でお辞儀をしてくれた。
嬉しいけどこんな朝早くから来て掃除姿に見惚れてる自分に恥ずかしくなり顔が赤くなっていくのが自分でも分かる位だった。
すると颯人がこっちへおいでと手招きをしてくれた。
玲音は犬の様にワンッと言わんばかりの早さで颯人の所へ走っていった。
多分私が本当に犬だったら尻尾をふりふりしていただろうなー
とこの時玲音は心の奥底で思っていた。
「おはようございます、今日も天気が良いですねぇ」
朝早くからここに来た事はあえて触れなかった、これは颯人の優しさだろうと玲音はこの時思い、少し安心した。
「は、、はい、あのー、、玲音、、中村玲音と申します」
あまり年上?の男の人と話す機会が無かった玲音はどう話せば良いのか分からず緊張していた。
この堅苦しい話し方が面白かったのか颯人は笑顔になった
「そんなに緊張しなくてもいいですよ?私には軽い話し方で良いので玲音さん」
「あ、うん、、、それ言われて少し楽になった」
それでも顔を合わせるのが恥ずかしいのか、それとも名前を言われたのが嬉しかったのか、まだ玲音は下を向いたままだった。
きっと顔が赤くなっている所を颯人に見られたくなかったのである。
「あ、そう言えば玲音さんは朝食は済ませましたか?私お腹が空いてしまいました。良ければご一緒にどうです?」
「はい、是非!」
即答だった。
颯人と一緒に朝食を食べれる何てこの時は思ってもいなかったので先程トーストと目玉焼を食べた事などすっかり忘れてしまっていたのだ。
そして二人は皇綺羅図書館の中へと入って行った。
「この図書館、実は1階は普通の図書館なのですが2階はレストランになってましてね?当時はとても珍しくお客様も多かったのですよ。」
と何故かその表情は悲しそうだった。
「さ、玲音さん、こちらへどーぞ。」
と奥の窓際席に通される。
その窓から見える景色がまた一段と絶景だった。
山に囲まれて奥には海も見える。
玲音にもその景色がどれ程良いのか分かるぐらいのパノラマが広がっていた。
「わぁー凄い凄いっ!勝浦にもこんな景色があったんだねー私気付かなかったよー。」
「はい、この上から見える景色がこの図書館の2階をレストランにした本当の目的だったのですよ」
と言いながら颯人はメニュー表を差し出した。
「あ、そう言えばさっきから気になってたんだけど、ここって颯人さん以外人が居なさそうだけど?」
「そうなんですよ、あまりこの場所が目立たないせいか今はお客様もあまり居らっしゃらないので私一人でやってます」
「えぇー!?もしかして、料理もっ!?」
そう言うと颯人は少し自慢気に
「こう見えても私、料理が得意なのですよ?以外でした?」
と何故かイタズラそうに笑ってみせた
「いやいやいや、颯人さんて何でも出来て羨ましいなー。私何も取り柄とかないし、ただ夏休み毎日暇でぐーたらしてるだけだし、、、あっ、で、でも私だって料理位出来るんだから!」
玲音は少し後悔した、トーストと目玉焼を意地張って胸張って言ってしまった事を、、、
後から食べさせてと言われないか内心ドキドキした、、、
すると颯人はニコッと笑い
「是非玲音さんの手料理が食べてみたいものです。」
(きたーーーーーーーーっっ)
こういう時に限って思った返事が返ってきてしまう。
「あ、、、う、うん、、今度ね!ハハハハ」
やばっ、絶対今の嘘笑いも顔に出たはず!
と思いながらまた顔が赤く火照っていくのが分かった。
「玲音さん何か食べたいのはあります?」
「あ、そうだよね!せっかくだから何か頼むね!」
とメニュー表を見たが色々難しい単語の料理ばかりで何を頼んで良いのか分からなかったがそこに1つだけ玲音も好きな食べ物が書いてあった。
「じゃあフレンチトースト下さい!私フレンチトースト好きなんです。」
「そうなんですね?でわ気持ちを込めて作らせて頂きますね。後、お飲み物はどうします?」
イケメンに気持ちを込めて作られるフレンチトーストなんて鼻血ものだと思いながら飲み物を選んでいく。
また飲み物が厄介だった、オレンジジュースと水以外は普段頼んだ事もない名前だった。
かと言ってオレンジジュースだとお子様臭いしそんな所を何故か颯人には見せたくなくてつい背伸びしてしまっていた。
「あ、、じゃーエスプレッソにしようかなっ」
すると少しだけ驚いた表情をした颯人はすぐさま笑顔になり
「かしこまりました、お嬢様。」
とだけ言い残し厨房へ向かった。
ん?私何か変な事言ったかな?と思いつつも辺りを見回す。
アンティークな物が並ぶ中1つだけブリキのおもちゃで飛行機の形をしたものを見つけた。
とても珍しく思った玲音はその飛行機のおもちゃを手に取った。
「それは、私がまだ幼い頃母に無理言って買ってもらったものなのです。」
後ろから突然に颯人の声が聞こえたので玲音はビックリした。
「あ、ごめん、つい珍しかったから。」
「いいんですよ、母から色々なものを買ってもらったのですが何故かそれだけは捨てられなくて、、、今じゃ形見なのです、、、」
また颯人が悲しそうな表情で飛行機のおもちゃを見ていた。
「あ、ごめん、私、何も知らなくて。」
「いいのです、こちらこそすみません!あ、食前にサラダを持ってきたのでどーぞ?」
またいつもの笑顔に戻った。
玲音はその笑顔を見るたび何故か胸が痛んだ、きっとこれは作り笑いで本当の笑顔ではないのだと。
席に座るとそこに小エビがふんだんに使われたサラダが置かれていた。
「わぁー!私エビが好きなんだ!何か颯人って不思議、何でも私の事知ってるみたい。」
「そおですか?喜んでもらえて良かったです。なんででしょうね?ひょっとしたら私、超能力があるのかもしれませんよ?」
と嘘か本当か分からない笑みを浮かばせながら厨房へ戻っていった。
この後、二人は他愛の無い話で盛り上がりながら食事をした。
颯人も玲音に合わせてフレンチトーストと小エビのサラダを食べた。
しばらく暁美の話や引っ越す前の東京での話。
颯人は楽しそうに頷きながら玲音の話しを聞いてくれた。
そしてあの時颯人が少し驚いた表情をした意味が分かった。
食後に出てきたエスプレッソをみて玲音はまた恥ずかしくなった、まさかこんなに小さい器に出て来るとは思ってもいなかった。
20を過ぎた大人なら分かるのだがまだ高校生でましてや玲音みたいな性格の子がエスプレッソを頼むなんて滅多にないのだ。
「すぐに飲み終わっちゃった。」
また恥ずかしそうにする玲音をみて颯人は笑った。
それにつられて玲音も笑った。
この時の颯人の笑顔はなんとも言えない可愛らしい顔だったのでいつしか見惚れてしまっていた。
「そう言えば、玲音さんはどういった本を読むのですか?」
玲音は正直読書はあまり好きではなく、あの時はたまたま懐かしいって言うのもあって絵本を読んでいたのだ。
その事を颯人に正直に言うと颯人はまたニコッと笑い
「丁度玲音さんにお似合いの本があるのですが読んでみませんか?」
そう言って玲音に手を差し伸べた。
あまり男の人と手を繋いだ事のない玲音は一瞬戸惑ったが、颯人のはにかむ笑顔を見ていると何故か自然と手を握る事が出来た。
そして二人は本がいっぱい並ぶ図書室に向かった。
「何度見ても凄い数、私目眩がしそう。」
そう言うと颯人が気を使って
「この前お休みになってた席で休んでてください」
と席を指差した。
しばらく前に座った席について考え事をした。
何故こんなに立派な図書館があるのに私も母も知らなかったのか。
何故昔あった出来事の様に颯人は話しをするのか。
何故、、、
何故颯人は時々悲しそうな表情を見せるのか
好奇心旺盛な玲音は知りたい事が山程あった。
いつの間にか頭の中が颯人で埋め尽くされていた。
昨日会ったばかりなのに?
どうしてこんなに彼の事が知りたいのだろう?
「玲音さん、どうされました?」
不意打ちだった、、、
「ふぎゃっっ!!」
玲音は今まで出した事のない奇声を上げた。
「あ、すみません!ついボーッとしていたので心配になってしまいました、すみません!」
あまりにも驚いた玲音をみた颯人は申し訳無い気持ちでいっぱいだった。
「あ、いや、こっちこそゴメンね!つい考え事してたみたい。」
「そうなんですね、あ、玲音さんにお似合いの本を持ってきました。」
すると分厚い何か哲学的な本が来ると思いきや以外に薄い文庫本なのでビックリした。
「夏色ジャンクション?」
「そうです、福田栄一さんの夏色ジャンクションという作品で題名の通り夏の舞台で年齢別目的別の3人がドライブで旅するって言う単純だけれど何処か爽快感があると言うか読み終わった後にスッキリしますよ?」
玲音はあんぐり口が開いたまま颯人をみていた。
「ん?私の顔に何かついてますか?」
「あ、いやっ、本の説明する時の颯人さんがとても生き生きしてたので、本当に本が好きなんだなぁーって」
玲音は嬉しかった、また颯人の新たな引き出しを開けたかと思うとウキウキしてたまらなかった。
すると、またハニカんだ笑顔で
「私は本が本当に好きで、本と共に生きてるのですよっ」
すると窓は全部閉まっていて風が入らないはずなのにフワッと身体が宙に浮いた気がした。
と言うより玲音と颯人二人が宙に浮いているように思えた、、、、
そして一瞬、いや、一瞬だけど長い時間二人で手を繋ぎ合って宙に浮いている感じだった。
「え、、、?、、、え、、、、っ!?」
すると颯人が安心させるように少し笑ってみせた
「大丈夫です、安心してください、すぐ収まりますから」
と言い終わったと同時位に二人は地面に足が着いた。
玲音はあまりの驚きと感動で言葉が出ずにいた。
「驚かせてすみません。玲音さんになら見せても良いと思ったので、私、、魔法使いなのです」
玲音は頭の中が混乱していた。
まず何処から整理したら良いのやら
その中から導き出された答えが、、、
「あ、もうこんな時間っ!わ、私、、帰るねっ?あ、家に帰ってこの本絶対読むからっ!ぜ、絶対!」
そう言ってカバンに先程オススメで持ってきてもらった夏色ジャンクションをバックに入れそうそうに図書館を後にした
そして外に出て自転車にまたがり
「はぁーまたやっちゃったぁー、、、せっかく私の為に見せてくれたのに、これじゃ嫌だって思われちゃったかな、、、あーーーーまたしても帰り際失敗したぁー、、、」
と反省しながら帰宅した。
何故か魔法の事は不思議と思わなかった。
颯人が例え魔法を使えても嫌いにならない自信があったからだ。
そして玲音は家に着き、今日借りた本"夏色ジャンクション"をひたすらに読んだ、活字は好きではないがこれを読まなければ明日の話のきっかけが出来ないと考えた玲音は徹夜覚悟で読み続けた。
「あ、意外にサラサラ読める、と言うか、、、面白い!読書ってこんなに良いものだったんだ!」
明日颯人に会った時の心の準備と話しの準備は満たん。
のはず。
続く
やっと物語が動き出しました。
真夏に海辺の近くの図書館って憧れませんか?
私は昔からの憧れで今現在ようやくこの願いが文章によって蘇っているのが楽しくて仕方がありません。
そしてこんな恋愛が出来たら良いなと私の夢や願望そんな欲求全てが含まれている作品がこの真夏の夜空は万華鏡なのだと思っております。
皆さんも夏の思い出や夏に経験したい物語はありませんか?
この玲音と颯人を見てこんな真夏の物語を憧れて頂ける方が居らっしゃれば光栄に思います。
また次回もお会い出来たら嬉しいです。
おかぴ先生




