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33.感想いってほしい

「いつも文句もいわないけど感想もいわずにただ黙々と食べるだけなのに、今日はめずらしいね」


「そんなことない。いつもうまいっていってるよ」


「よくいうよ。テレビ見ながら食ってるだけじゃないか。人が一生懸命作ってるのも知らずにさ」


 テーブルの上にあるピッチャーからグラスに麦茶を注ぐ。


「そうだっけ」


 麦茶を飲んで、また食べる。どんぶりはもう半分なくなっていた。


「たまには今日みたいに、感想いってくれると参考になるんだけど」


「そうだな」


「あ、それでさ。話は変わるけど、最近帰り遅いじゃん。なにしてんの? もしかして兄ちゃんもとうとう彼女でもできた? おれにだけ教えろよ」


「別に」


 洋介は食べるのか話すのかどちらかにした方がいい。


 苛立ちをあおるかのように、電話が鳴った。ごはんどきにかかってくる電話は、飯が冷めるので出たくない。


「兄ちゃん出てよ、カツ丼作ってやったとき、ずっとテレビ見てただろ」


 だれも晩ごはんを作ってくれと頼んでない。好きで勝手に作ってるくせに。今まではおれが作ったのを、当たり前のように食べていたくせに。仕方なく箸を置いて電話機に向かった。


「もしもし」


「……ちょっと待って。洋介、父さん」


 洋介はどんぶりを抱えたまま、口を動かしている。


「なに?」


「ちょっと代われって」


 しぶしぶとやってきて、洋介は受話器を受け取った。


「もしもし? 今飯食ってたんだよ。カツ丼、そう、おれが作ったの。うまくできたよ」


 この時間帯はちょうどシューベルトが忙しいときだ。なんの用だろう。それも洋介に。


「えっ、ほんとに? 手伝ってもいいの? 今から? 行くよ。余裕で行く。5分で行くから、ちょっと待ってて」


 洋介は勢いよく受話器を置いた。


「ちょっと行ってくる」


 興奮した、いかにもうれしそうな声だった。


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