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 明けて翌日。

 僕は、ホープタウンの街中で。


「『カフェ・神月』、リニューアルオープンしましたー! 明日、営業しまーす! よろしくお願いしまーす!」


 カフェの宣伝活動に励んでいた。


 ふたりの死神は、朝早くから出かけて行った。

 僕の故郷の事件を、調べるために。

 カフェを休みにしてまで。


「ナヅキもカンナギも、僕のために動いてくれている」


 それに。


「昨日は結局、カフェに泊めてもらっちゃったし」


 だから。


「僕もふたりのために、できることはしないとな!」


 僕は街を駆け回りながら、出会う人たちにチラシを渡す。

 掲示板を見つけては、チラシを張り出す。


 そんな中で。


「おい、知ってるか? 『フューチャ村』の跡地で、妙な霧が発生してるらしいぞ」


 聞き覚えのある地名が、僕の耳に届いた。


(フューチャ村……僕の故郷か!?)


 声の方を見ると、冒険者たちが何やら話し込んでいた。

 僕は冒険者たちの話に、耳を傾けてみる。


「ああ、知ってるぜ。何でもかれこれ、1週間ぐらいは続いてるんだろ?」


「原因も不明らしい。不気味な話だねぇ」


「スゴ腕の冒険者ふたりが調査に出たらしいんだが、行方不明になっちまったってよ」



「『雷光の魔法剣士ユウリ』と、『専属メイド戦士のアイ』だろ?」



(……なに!?)


 僕は息をのんだ。

 ユウリに、アイだって?

 僕の幼なじみたちと、同じ名前じゃないか!


 心に、小さい頃の思い出がよぎった。



『アイね! おっきくなったらメイドさんになる! ただのメイドさんじゃないよ! 戦えるメイドさんになって、マモルさんやみんなを守るの!』


『それじゃあユウリは、魔法剣士になるわ! 剣にカミナリをドカーン! って落として、ズバッ! て敵をやっつけるの! かっこいーでしょ!』



「……いや」


 僕は首を振った。


「ただの偶然だ。ふたりは10年前に死んだ」


 そう。


「ふたりとも。もう、この世にはいないんだから」


 僕が思い出に浸っている間に、冒険者たちはいなくなっていた。


「気を取り直して……っと」


 僕はふたたび、街中を駆け回る。

 チラシを配り。

 チラシを掲示板に貼り。


 人通りのない、裏路地に差しかかったところで。


「よぉ!」


 いきなり背後から、声をかけられた。


「この声は……」


 聞き覚えがあった。

 忘れるわけがない。


「まさか、昨日の今日で再会するとはな……」


 つぶやきながら、僕は振り向く。

 そこにいたのは。


「いやー! やっと見つけた見つけた! また会えて嬉しいぜぇ!」


 勇者ダイト。


「まったく……どこの宿に泊まってたんだ? 我々は昨夜から、ずっとお前を探してたんだぞ?」


 剣聖サリィ。


「もう! 手間を取らせないでほしいなぁ! 睡眠不足はお肌の敵なんだよー? ぷんぷーん」


 聖女シャルロッテ。


「最終的には見つかったから、めでたしめでたしですけどね♪」


 賢者ツカサ。


 『封印の塔』で僕を殺そうとした、勇者パーティーの4人だった。


「参考までに、聞いてもいいですか?」


 いきなりツカサが、僕に質問をぶつけてきた。


「どうしてあなたは生きてるんです? あの状況での生存確率は、ゼロだと思ってましたけど――」


「説明してやる理由はない」


 僕は一蹴した。


 心は、不思議なほどに落ち着いていた。

 

 昨日のことで、悔しさを感じないわけじゃない。

 憎しみがないわけじゃない。


(でも、それ以上に)


 相手にする時間がもったいない。

 これ以上、コイツらに関わりたくない。


 そんな気持ちの方が、はるかに強かった。


「大切な仕事中だ。アンタらと話をしてるヒマはない」


 そう言い捨て、僕は立ち去ろうとするが。


「ま、待て待て! ちょっと待て! ちょっと待てってば!」


 ダイトに、行く手をさえぎられた。


「そっちにはなくても、こっちにはあるんだ! ほら、見てくれ! コイツをよ!」


 ダイトが、自分の首を指さした。

 そこには、不気味に輝く首輪がハマっている。 


「実は、さ。『魔王ジョウカー』のヤツに、呪いをかけられちまったんだよ」


 ダイトはしおらしい表情で、僕に訴えてくる。


「これを解呪しないと、オレは死ぬことになる! オレは勇者だ! この世界の希望、勇者ダイトなんだ! 魔王も倒さずに、死ねるわけがねえ!」


 ダイトは一方的に、ベラベラまくし立てた。


「だから、マモル! あんたの素晴らしい『解呪』の力で、この首輪の呪いを解いてくれ!」


「……そういうことなら。魔王を倒せば、その呪いとやらも解けるんじゃないか?」


 僕が突き放すと、ダイトは首を振った。


「それがムリなんだよ! 魔王が死ぬと、この首輪も道連れで爆発しちまう! あの陰湿魔王のヤローが、オレにそう言いやがったんだ! オレは勇者だ! 魔王が死んでも、オレが死んじまっちゃあ意味がねえ! そう思うだろ?」


「いや……別に」

 

 思わず、僕は本心を出してしまった。

 でも、ダイトには聞こえていなかったらしい。


「そんなわけで、頼んだぜマモル! 過去は過去、今は今だ! 勇者の頼み、もちろん聞いてくれるよな?」


 続けざまに。


「ふたたび、我ら勇者パーティーの力になれるんだぞ? こんなに光栄なことはないだろう?」


「この大聖女・シャルちゃんの命を救えるんだよ? 世界中の人たちに褒められること、まちがいなーし! よかったね~!」


「いろいろありましたけど、昔のことは水に流しましょう! よろしくお願いします、マモルさん♪」


 サリィが、シャルロッテが、ツカサが。

 僕に声をかけてくる。

 解呪してもらえるのが当然、とでも言うような口調で。


 ……本当に、何なんだコイツらは。

 あきれて物も言えないとは、こういうことか。


「断る」


 僕は拒否した。


「んなっ!?」


「え……?」


「はぁぁ!?」


「う……」


 四者四様の反応だった。

 ダイトは目を見開き、サリィはあ然とし。

 シャルロッテは眉間にしわを寄せ、ツカサは手で口元を押さえた。


「な……な……な……な……!?」


 ダイトは声を震わせ。


「何でだよテメエ!? どうしてだよ!? どうして断るんだよおおぉぉ!?」


 顔を真っ赤にしたかと思うと。


「おおおおオレは勇者だぞ!? オレが死んだら、世界はどうなると思ってんだよ!? 魔王ブチ殺せねぇぞ!? 殺せねぇと滅んじまうぞ!? 滅んじまうんだよオレの世界がよぉ! わかってんのか!? どうしてお前は断るんだよ!? 理由を聞かせろ理由をおおおおぉぉ!」


 意味不明な叫びをまき散らかした。

 何を言ってるのか、サッパリ理解できなかったけど。

 言葉尻を捕まえ、答えを返す。


「いや、理由もなにも」


 僕はダイトをにらみつけ、言った。


「アンタら僕を殺そうとしたよね?」




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