ある日突然に0003
部屋にて作業をしていると…
ピィ~ンポォ~ン。
インターフォンの呼び鈴がね。
っと。
誰ですかい?
思っているとだ。
ドアをノックする音が。
「○×さん。
おられますかっ?」
呼び声もな。
《は~い。
居ますよぉ~
霊体ですけど…
何か?》
折角返答したのに反応なし。
失敬な。
って、無理ですか、さいですか。
暫くした後で気配が消える。
誰だったのかねぇ。
まぁ良いか。
ネット情報の収集やね。
ある程度、目に付いた情報をストックしていく。
成仏できなくても、これらの情報は財産になる可能性があるからな。
成仏できてアノ世とやらへ辿り着いたとしてだ。
その際に有用な情報となる可能性もある。
無駄になっても良いのさ。
何か作業でもしていないとな。
自分が死んでいると言う現実…
直視できまへんがな。
現実逃避?
そうとも言う。
んでだ。
そんな事をしているとな…
玄関の鍵が開いたぞっ!
何事ぉっ!?
だがな。
ドアストッパーがドアの開閉を妨げる。
チェーンロックでは無くてU字型金属棒にて開閉を阻害するタイプだな。
チェーンロックと違い切るのが困難な訳で…
ガンッ!
ドアの開閉が阻害されて音がな。
「ッ」
開けた者が驚くが…
「ドアストッパーがされていると言う事は、御本人様は御在宅の様ですね。
それで長時間に渡り反応が無い訳ですか…
これは、念の為に消防と警察に連絡を入れた方が良いでしょう」
知らない男の声だな。
「それは…
成る可く穏便に済ませて頂きたいのですが…」
女性の声か…
誰?
「その場合は、そちらの判断でお願いします。
但し、此方は一切の責任を負いかねますので」
告げられて困った女性が電話をな。
上司へ連絡しているのだろう。
報連相は社会人の常識。
妥当な判断だろうさ。
電話にて遣り取りが行われた様だ。
んっ?
俺?
無論、作業中です。
そこっ!
現実逃避などと言わない様にっ!
これは、れっきとした崇高なる作業なのですから。
分かりましたか?
私は分かりませんが…
何か?
んな阿呆な事を考えていたら、色々とサイレンがな。
賑やかだなぁ~
何があったんれしょうね?
んっ?
玄関前が騒がしく…
チュゥーゥィィィッ。
ぐぎゃっ!
なんぞっ、この音!
玄関にて金属を削る様な音が!
あやっ。
ドアストッパーが切断されとりますがな。
何すっだすっだ。
ドアストッパーが取り除かれ、人が雪崩込んで来た。
ギャァァッ!
あにすっだよぉ~
不法侵入、ヤンヤン。
何で、そんなに大人数が入ってくっだよっ!
一応は靴を脱いでくれているから良いが…
土足だったらアンパンチ喰らわすぞっ!
無理だけど。
ほんでな。
俺様が御就寝の場所へと至り…
「なっ!
起きなさぁぁぃっ!」
勘違いした女性が怒鳴る。
うむ。
その制服は、ウチの会社の制服ですね。
ふむふむ。
総務の女の子かな?
ご苦労様ですな。
俺が寝ていると勘違いして滾ってらっしゃる。
生きている様な顔だろ、それ。
死んでるんだぜ、それ。
ってな。
いや…
警察官や消防士は流石だ。
俺を見ただけで遺体だと気付いた様だな。
「遺体に触れないで下さい。
現場検証を行いますので」
いやな。
サラリと告げたよ、この人。
総務の女の子の顔が真っ蒼にな。
一般人がもう1人。
不動産の管理関係かな?
流石に動揺している様だわ。
まぁ、そうなるわな。
一挙に室内が慌ただしくなる。
色々と人が出入りして忙しない。
落ち着かんぞ、これ。
んっ!?
なんだか…課長まで現れてんな。
顔が真っ蒼ですが…
何時も強気でイケイケなのに珍しい。
うや。
部長さんもですか、さいですか。
へっ!?
オラの身体さ司法解剖っすか。
そんだ、こっぱずかしいだ。
止めてけれ。
んっ?
過労死と判断されたら監査が入る。
いやいや。
明らかに過労死だからな、俺。
何を巫山戯た事を、コソコソと話してやがる。
呆れるな、ほぉ~んとにさぁ。
っう事で…
俺の身体が搬送されて行く。
お達者でぇ~
ハンカチを振り振り、お見送り。
えっ、俺?
ついて行かないのかって?
や~だよぉ~ぅ。
だってさぁ、考えてみなよ。
自分の身体が切り刻まれる様を見るっうこったぜ。
そんなん見るのヤだよ。
だから霊体である俺はお留守番ってな。
あれだけ居た人々が退去する。
何だか部屋が広くなった感じがするな。
んっ?
勿論、本当にそうなっている訳じゃ無いけどな。
知ってた?
そらまた失礼しました。