ある日突然に0029
契約終わった昼下がり。
暑いとは言い難いが、寒い訳でも無く…
うん。
最高に美味しく氷菓子を頂けるシチュエーションでは無いにしても、氷菓子を頂くには良い日和だと言えよう。
うん、気取ってみました。
如何でしょう?
勿論、俺にベストマッチに違いありません。
そうあるべきです。
うんうん。
などと納得している間に移動完了れす。
っか…
湖畔へと迫り出す形で設けられた家屋がな。
湖に浮かんでいる様にも見える。
湖底へ柱を打ち込み、それを基点に床を張り巡らせてるんだろうな。
その床を土台にして店舗を確保ってか。
凝った事をしてまんなぁ~
岸部からは湖上に架けられた橋を通って移動しやす。
全て木製なんだが…
キシキシと鳴る音を想像していたのに鳴りません。
っか…
生木の上を歩いている様な安定感がね。
んっ?
んんんんんぅ~っ!
床と柱が一体化してやせんか、これ?
どうやって建てたんやろ?
不思議れす。
そんなん思ってっと、親父さんがね。
「何時来ても、矢張り凄いな」
その様に感心した呟きをな。
なんれしょね?
「左様ですな。
エクスード様が隠居地に選ばれるとは…
都でも噂になっておりますから」
「まさしく、まさしく。
それも飲食店を開かれるとは…」
肩を竦めて告げる。
「いや…
飲食店は奥方様とお嬢様の御趣味が高じた為とか」
「左様か。
まぁ、都の喧騒より逃れての隠居と聞く。
故に都より大挙して人が参る事はあるまいが…
我らも静かにゆるりと楽しまねばな」
そんな事を親父さんと騎士さん達がね。
って…
エクスード様って…誰?
知らない人名にてハテナってな。
此処はチミィ、矢張り訊いてみるべきでしょうよ。
だもんでぇ~
「父さん。
そのエクスード様って…誰?」
尋ねたら…
皆さん黙っちゃいました。
あれ?
なんか遣っちゃった感があるんですが…
なに?
したらな、親父さんが頷いてから告げる訳よ。
「ふむ。
ガリルには話した事がなかったか…」
そう親父さんが告げるとな。
「そうか。
嬢ちゃ…コホン。
坊ちゃんは5歳でしたか…」
をぉいっ!
今、嬢ちゃんって言い掛けたやろっ!
っかさぁ…
「坊ちゃんは止めて下さい!」
そんなん言ったんだが…
「おおっ!
そうでありましたなっ!
余りに賢い言動をなさる故、歳を間違えてしまいますぞっ!」
って、ガハハハハッと笑う訳です。
でな、この騎士さんの声が馬鹿デカいわけよ、これがぁ。
んでぇ。
俺の声が、掻き消されちゃいました。
グッスン。
少し拗ね拗ねなオイラに気付かないガサツ中年共。
此処ら辺の細やかな気配りは、ガサツ騎士共には無理だろ~ねぇ。
そんなん思っていると、親父さんが説明してくれる。
「エクスード様はな、元宮廷魔導師様なのだよ。
魔術と精霊術に長けた御方でな、この建物も魔術と精霊術を駆使して造られたとか。
我が国の魔術師が憧れる存在でもあらされる。
兎に角、凄い御方なのだ」
何故か親父さんが自慢げに。
どったの?
そんな親父殿に騎士さんがね。
「いやいや。
御館様は、そのエクスード様に暗黒術の遣い手として認められておられるではありませぬか」
ヨイショれすか?
まぁね。
暗黒術と神聖術の遣い手は稀。
しかも使いこなせる者となると、更に稀ってな。
そら異界の者、より高次元に住まう方々に認められないと行使できない術だかんな。
仙界と幻界は1つづつしか無いんだが…
神界と魔界は複数の世界に別れてんだってさ。
神界と魔界で対をなす形らしいんだけど…
神界、魔界の両方より加護を受け術を行使できた者は皆無。
そして複数の魔界より加護を受けた者は歴史的にも限られるんだとさ。
んでな。
親父さんは、その限られる内の1人なんさ。
お袋さんもだけどね。
ま、お袋さんは複数の神界より加護を受け術を行使する神聖術の遣い手。
神界加護を受ける者と魔界加護を受ける者が連れ合いって…
馴れ初めが気になりやす。
まぁ…
そんな暗黒術の遣い手だから、エクスードっう爺さんに気に入られたと…
そう言う事なんだね。
そう理解しようとしたんだが…
「はぁ?
何を言っとる?」
親父さん、ぽっかあ~ん。
いや、違うんかいっ!
「エクスード様は、儂の呑み仲間ぞ。
この地には良い地酒が揃っておってな。
それを知ったエクスード様が押し掛けて来たのだ。
その似非話は何処から得たのだ?」
いや…
酒が目的かぁ~いっ!
会う前から不安になりましたっ!
んな事をダベりながら店内へと。
清潔で小洒落た感じのお店れす。
此処で氷菓子が…
堪りません。
早よ、氷菓子、早よっ!




