朝、起きて
朦朧とした眠りから覚めると、やけにすっきりとした気分で朝を迎えた。
(夢…だったのか。良い夢を見たな…)
いや、夢じゃないかもしれない。
何か違和感を感じる。
これは、やたらと長い髪の毛じゃないか?
あれは、昨日見た服の上着じゃないか?
どこかで、足音がしないか?
すっきりとした目覚めから、さらに脳が急速に活性化しているところで。
滑らかにドアが開け放たれる。
「良いタイミングで起きましたね。朝食を用意しているんですが、ご一緒にどうです?」
「ア……ソノ、ヨロシクオネガイシマス」
「くふっ、顔でも洗ってきてください」
あのやたらと整った、人の事をバカにするような顔…!
間違いない!
昨日のアレは夢じゃなかったんだ!
大急ぎで顔を洗い、食卓に向かう。
いつの間にやら増えている椅子を不思議に思いつつも、料理を口に運ぶ。
信じられないぐらい美味しいものと、親近感を感じるもので二分している。
これまた不思議だとは思いつつも、それより先に話すべき事がある。
「なあ。今日さ、どうするつもりなんだ?」
「はあ。一緒にお出かけですが」
「分かっているとは思うけど、無理だからな。絶対に」
当然だろう。
見てくださいこの姿。
あらまあなんと、絢爛豪華で容姿端麗。見た目のためだけに一体いくらかかっていらっしゃるの?
しかも敵国の貴族衣装を纏っていらっしゃいますわ。
街を歩けば一体何人から武器を抜かれる事でしょう。
「多少汚してあなたの服を着れば良いでしょう?簡単なことですが」
「いや、確かにそうだけど。いや、その、いやぁ…」
他国のお貴族様になぜ自分の古着を着せねばならないのか。
この日、この時に恥を晒すために服を着てきた訳じゃないというのに。
しばらく唸っていると、段々とドラセナの表情が悲しげになっていく。
「私。この日を楽しみにしていたんですけれど」
「…そう言うのはズルいよね。はあ…分かったよ。一緒に街を回ろう」
僕の言葉を聞いたドラセナは、安堵した表情で僕の部屋へと_____
あっ!
「ちょ、ちょっと!勝手に服とか漁らないでくれ!」
急いで料理を口に詰め込み、自室へと向かう。
しかし既に手遅れで、綺麗に上下がセットされ、あとは順番に試着していくだけの状況が出来上がっていた。
しかも、はじめの1セットは既に着替えが終わっているようだ。見事にポーズを決めて立っている。
「感想は?」
「もうそれで良いんじゃないかな…問題ないでしょ」
「ちょっと。そんな感想あります?」
「分かった分かった。次を見てみないと比べられないから、ちゃんと見てるから」
眉を寄せて次の服へと手を伸ばすドラセナ。
納得して貰える感想が出るまで、着せ替えの時間は続いた。