自室にて
「ちょっ____!」
落下してきた女性をなんとか両腕で受け止め、鳴り止まない心臓の音に足が震える。
ジワジワと冷や汗が流れ始める僕の内情を見透かしているのか、彼女は腕の中から嫌な笑顔を向けてくる。
「ふふ、お姫様扱いとは。随分と分かってるお出迎えじゃないですか」
「ぐ、う、うるさい…よ…」
いつもはすらすら出てくる軽口でさえ、喉から捻り出すのがやっと。
文字でなら、いつもは、もっと。
「驚いているとは思いますが、そろそろ下ろしても大丈夫ですよ?ずっとこのままでも、私は構いませんが。」
「いや、その、下ろす、よ。」
「意外とぎこちなく話す人なんですね?」
んふふ、と小馬鹿にするように問いかけてくる。
いや、流石に。
「そ!…そんなわけないだろ。あんなの初めてだったから、動揺が、あっただけだ」
「ふぅ〜ん…そうなんですねえ〜」
いつまでもニヤニヤとした笑いが止まらない。
それでも絵画のような美しさがあるというのがおかしな話だ。
くっ、バカにしやがって…!
「いや、そんな事より!君の家は?どうやってここに?ほっ、本物?」
「無粋ですね…もっと他にあるでしょう?」
他に?いや大事だろう。他、他か。
「な、名前は?」
「ドラセナ。それも今?」
「僕はヘルマ。本当にあの少女なのか?」
「あの時助けて貰った少女で間違いないですわ。雰囲気ってものを学ばない国なんですの?」
言う事がある、って事は質問って訳でもないみたいだな。
何が正解なんだ。
いったい何故こんな事に。
想像ではもっと感動的な再会を、再会を…
そうだ。
僕は、
「また会えて、嬉しい…凄く嬉しいよ。ドラセナ。」
言葉は返ってこなかった。
強く抱きしめられる感触と、耳元で微かに涙を堪える音がするぐらい。
気の利いた言葉も言えず、背中を優しく撫でる事もできないで。
僕は、ただ涙を流す事しかできなかった。
泣き疲れて眠りに落ちる中で、一つの不安が頭に残った。
明日から、これからどうなっていくんだろうか。




