序章
「成人してもまだ、か」
手に昼頃受け取った手紙を持ち、布団の上で小さく溢す。
数日前に18の誕生日を迎え、ついに隣国へと考えていたヘルマ。
しかしながら、少し前から戦争が激化し始め、簡単には国を行き来する事ができない状況にあった。
(ウチの街は随分と遠いから戦火は及ばないだろうけど…彼女はどうやらそうじゃないみたいだしな)
暗い顔のままランプの灯りに照らされたベッドの上に座り、手紙の封を切る。
「いつまでも待たせちゃいられないよな…」
かつて約束をした少女の顔を浮かべながらも、その声で文字を再生していく。
『お元気ですか?
この手紙が届く頃には誕生日を迎えている頃かと思います。
大きくなりましたね、なんて。
成長した姿を早く見てみたいと思うところですが、どうも立場がそれを許しては貰えないようです。
国同士の関係は悪化の道を進むばかり、私達とは真逆ですね?
はあ、早く会いたくて仕方がないです。
最近は毎日あなたの事を考えては、早く会いたくて仕方がないのです。
ですが、このままではまだしばらくは話す事すらできません。
もう限界だと感じています。
ですので』
「今、」
声が聞こえた。
知らない人の声が。
自分しか居ないはずの部屋に、声が。
「会いに!」
部屋の天井を見上げる。
そこには、何だか”四角に空間を切り取った”ような。
「来てしまいました!」
そこから、豪華な服に身を包んだ。
如何にも貴族かのような。
あの少女が成長したかのような姿をした女性が。
飛び込んで来た。