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第85話 対魔物戦闘試験2

前回のあらすじ:

対魔物戦闘試験の塔へと入り、トマトを収穫した。

「やっぱり2階のトマトの方がおいしいね」



 塔の魔物や地形の種類は2階毎に変わる為、1階の魔物と2階の魔物は同じ魔物となる。とはいえ1階よりも2階の魔物の方が強く、その分食べ物としては美味しくなるのだが。



「トマトはまだ野菜マップに無かったわよね」


「えっと……まだないですね。ここの塔を追加しておきましょうか」


「そうね。階数も書いておいてもらえれば役に立つかもしれないし」



 サクラは収納から取り出したノートに、トマトの魔物生息地として東京ダンジョン内のウエノ第3塔1-2階と記載する。このような手に入れた情報をまとめるなどのサポートは、今はサクラが一手に引き受けている。

 基本的にはユウキたちが所有しているダンジョン内の野菜系魔物生息地を記入しているノートであるが、今のところユウキたちのダンジョンではトマトの魔物は見つかっていない。



「少し前までは、肉がーって言ってたのにね」


「ホントね。サクラちゃんに出会ったきっかけは、オーク肉が欲しかったからなのに」


「なんかすでに懐かしいですね」



 肉は既に各種魔物の肉が大量に冷凍されており、魚もそのまま冷凍されているものがある。野菜もある程度冷凍庫や冷蔵庫の魔道具に保管しているが、生で食べたい野菜は冷凍に向かないため、出来ればすぐに取りに行きたいのだ。タマキの転移を使った贅沢な食事である。


 2階のトマトを海藤たちにも提供し、ゆっくりと進む受験生の流れの最後尾を付いていくユウキたち。先頭付近は当然通路に居るトマトの魔物を倒しながら進んでいくので時間がかかっている。とはいえ動かない細い木であり、倒すだけなら簡単なのだが飛んでくるトマトを避けるなりキャッチするなりしないと汚れるために面倒なのだ。


 海藤たちからしてみれば、そんなトマトをどうやって手に入れているのかがさっぱりわからないのだが、ユウキにしてみれば慣れたイチゴの作業と同じことなのであまり気にせずに行ってしまったのである。



 そのままゆっくりとした流れで3階への移動口へたどり着くと、先頭の動きが一度止まる。



「どうしたんだろう?」


「たぶん明りの確認ね」



 先を覗いたタマキが受験生と試験監督官の動きからそう判断する。



「ああ、3階は洞窟タイプか。照明がないタイプなんだね」



 ユウキが知覚で先の地形を把握し、洞窟タイプだと判断してからそう告げる。



「明りの道具を見せているみたいだから、たぶんそうだと思うわ」



 タマキが持っている魔道ランタンの様なダンジョン産の物もあれば、魔石エネルギーを電気に変えて使う懐中電灯もある。中には頭につけるヘッドライトや体に固定するタイプのライトもあるが、人に合わせて動くために明かりが安定して照らされるわけではない。


 少しづつ列が先に進んでいく中、ユウキはいつも通りに剣型の明かりを作り出して前後左右と上空に一つ展開する。光の剣は対人試験でも見せており、この後のユウキの戦闘方法としても使うために出し惜しみする必要がない。



「私達の明かりはこれです」



 ユウキが明かりを展開したのを確認したタマキが傍に居た試験監督官の増田に説明する。



「魔法で明かりを用意するとは……持つのか?」


「大丈夫です」



 実際は魔法ではなく魔道具であり、出現させている間中どんどんEPが減っているのだがユウキから見れば微々たるものである。当然そんな余計なことを説明したりはしないけれど。



「万が一のためにこういうのもありますから」



 そう言ってタマキは魔道ランタンを取り出す。タマキも明りの指輪を持って居るので、もはや魔道ランタンを使う可能性はないと言える。それでも自分たち以外の誰かに貸す可能性は否定できないため、過去の宿泊設備などと一緒に保管自体はしているのである。



 3階へ入ってからの受験生の流れは特に遅い。

 足元はでこぼこした石がむき出しの地面であり、壁や天井も整えられていない洞窟である。そして明かりが照らす事の出来る範囲は狭く、魔物がどこから襲ってくるか分からない不安の中で先頭は進んでいる。


 中学校の実習ではあくまで魔物を倒して強くなる実習であるため、目的地までは引率の先生に付いていくという作業であった。しかし今回は受験生自身が先頭に立って道を進んでいく。魔物への警戒を行うのも受験生自身の役割だ。


 そして試験をする側としては、事前判断として余裕があるPT程後ろに位置するように順番を決めている。余裕があるPTが先頭に立って進んでしまうと、引率をされているのと同じことになるからだ。

 その分先頭を進むPTには地図を見ながらの進行状況判断や魔物への警戒や対応といったちょっとしたプラス項目が考慮されるので、そう簡単に先頭を譲ったりはしない。



 そんなユウキたちの前のPT、つまりユウキたちに次いで期待されているこの集団の2番手PTは、ユウキをにらみつけてくる金持ちPTである。



「魔法の明かりなんてずっと持つわけないだろ。

 途中でばてるのが目に見えるな」


「だな。

 良いところを見せようと練習しただけで、実戦慣れしていないんだろ」


「だがまぁ、素質の無い並野が小野寺さんを明かりでサポートして動きやすくするという意味では理にかなっていると言える。今回は5階までではなく上に行く事になるし、どこまで持つのかが見ものだな」


「照明の魔法って、クラスで使っている人はいなかったわよね」


「他のクラスで覚えている人はいたな。

 それでも戦闘時の補助としてだけ使っていた程度のはずだ」



 そんな後ろのPTについてあれこれ言っている受験生をみて、同行している試験監督官は魔物への警戒は大丈夫なのかと少し心配するのであった。





「3階はダンジョンミニコッコか」


「懐かしいわねぇ」


「ボスは因縁のダンジョンコッコだろうね」


「何かあったんですか?」


「俺が最初にタマキに連れられて入ったゲートのボスがダンジョンコッコだったんだよね。スキルも何も使わないで武器で近接戦をやったんだけど、当時はボロボロになったよ」


「そんな事があったんですね」



 3階に入って特に変わらない雰囲気のユウキたちを見つつ、海藤は会話の内容から事前に地図を見て魔物を把握していると考えた。ユウキたちは特に地図を出してみている様子もなく前のPTから少し離れて付いていっているだけである。

 初めはただ単に道順は前のPTに任せているのかと考えていたのだが、まだ出会っていない魔物の情報を覚えているのであればしっかりと事前の予習が出来ているという予想をしたのだ。


 実際はただ単に離れた位置に居る魔物の魔石を収納し、その後魔物を収納して鑑定したことによって魔物の名前を知っただけなのだけれど。

 そしてユウキたちは普段の攻略から誰かが作った地図などは使用しておらず、ユウキの知覚で判断しているだけである。


 ダンジョンシステムとしての地図表示もあるのだが、東京ダンジョンのダンジョンマスターではないために地図が全域で表示されるわけではない。そして塔の中での地図表示は地上程周りの範囲が見えないために、最初はユウキの知覚の方が便利なのである。一度通ってしまえば地図に表示されるため、ユウキが居なくても道は十分にわかるのであるけれど。



『右手の脇道からダンジョンミニコッコがこっちに向かってくる。

 丁度良いから、この階でミスリード作戦実行しておいていいかな?』


『いいわよ。

 と言ってもこの階の魔物を倒しても得点にはならないから、キレイに倒す必要はないわよ』


『3階なら踊らないでも行けますよね』


『実験ではこのままの装備でも10階までは出来たし、踊りはまだいいかな』



 PT会話でタマキとサクラの了解を得たユウキは、戦闘の流れを確認する。今回は倒すのが目的ではなく、光の剣に攻撃力があると誤解させるのが目的だ。いつの間にか倒していたというのでは意味がない。



「右手からダンジョンミニコッコがやってきます」


「あら。良く分かったわね」



 ユウキが海藤に魔物の発見を報告すると、海藤はあっさりとよく見つけたと返事をする。プロのダンジョンシーカーにとって気配を探るのは当然の事であり、近寄ってくる魔物程度は当然わかる。

 まだ多少距離が離れているにもかかわらず、中学生であるユウキが見つけたことの方がすごいのである。



「戦闘陣形はこのままでいいの?」



 刀装備で軽戦士タイプのタマキと踊り子装備のサクラ、そして斥候の様な防具だが杖を持って明りの魔法を使用しているユウキ。

 どう見てもタマキが前衛でありユウキとサクラは後衛である。しかし特にやってくるダンジョンミニコッコに対してタマキが前衛に立つそぶりが無い。



「まぁこの階の魔物程度でしたら」



 などというものの、ユウキたちは最近陣形などという事を考えたことがない。

 ユウキたちにとって魔物は素材であり、タマキが戦闘経験を得るために戦おうとする場合以外はユウキが魔石を回収するだけのことである。転移すればいくらでも魔物が居るところに行く事が出来るのだから、タマキが倒したいタイミングで倒す以外はユウキが回収したところで問題はない。


 そして前衛後衛とは、前衛が魔物の対応をして後衛に攻撃が行かないようにする戦い方が本来ではあるが、タマキが戦うのであればユウキやサクラは<魔化>を使用してしまえば守られる必要などない。

 そしてただでさえ対魔物結界の指輪を装備しているので、万が一<魔化>を使用していないときに攻撃されてもダメージを食らう事すらない。タマキの移動速度や転移から考えても、ユウキたちが陣形にこだわらなくなってしまったのは仕方がない事だった。



 ユウキは迎え撃つ準備として、ダンジョンミニコッコが現れる方向の通路へと光の剣を移動させ、十分な量の光量で視界を確保する。

 そして走って突撃してくるダンジョンミニコッコの動きに合わせ、空中で静止していた光の剣を操作する。


 光の剣はダンジョンミニコッコの首をサッと一閃。


 何の抵抗も無く、魔物の動きにも変化が無く通り抜けた光の剣。ただの照明なのだから当たり前である。

 そのままダンジョンミニコッコは慣性に従い突撃してくると、途中で頭が胴体から離れて落下した。


 これはユウキの<収納>のアレンジ部分である部分出納で、ダンジョンミニコッコの首を少しだけ面状に切り取って収納した結果だ。<収納>の容量も領域もとんでもなく増えているのだから、当然切り取る攻撃力も十分に上がっている。

 これを活用して弱い魔物に対して使用することで、光の剣にしっかりとした攻撃力があるという誤認をさせるために仕込んだことである。


 もちろんこれだけでは終わらない。光の剣はダンジョンミニコッコの元へと移動し、大きな光の玉へと姿を変えて包み込んだ後は小さな光に形を変えてユウキの足元へと移動する。その時に既に元の場所にはダンジョンミニコッコの姿はない。


 そしてユウキの足元で再び光の玉は大きくなり、その後光がはじけたその場所には頭と胴が別れたダンジョンミニコッコが存在している。



「この階では倒した魔物を見せる必要はないんでしたっけ?」


「ええ、そうね。

 対魔物戦闘試験は5階の魔物からが得点になるから、この階はまだ倒した魔物を見せる必要はないわ」


「分かりました」



 ユウキはそう返事をすると、あえて倒した魔物に直接手を触れて収納した。

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