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第49話 初めてのミッション1

前回のあらすじ:

ユウキたちがスミレたちを引率して訓練施設『初級コース』に入ることはできなかった。

「スミレさん。ミッションの方はどうしましょう?」



 魔法都市マジクのギルドへと戻ったユウキは、この後予定していたミッションについてスミレに尋ねる。


 第一歩目から予定が崩れたユウキたちだが、この後の計画はユウキたちだけでも問題はない。どうせやるなら一緒にという事で、ユウキたちはスミレたちと一緒に行く予定だったというだけの事だ。

 ただ魔物を倒すだけで終わる内容であれば、普通の人が突破できてユウキたちが突破できないような状況は考えにくいのである。



「そうねぇ。ミッションが施設を一つ制覇することで、行きたいのは魔法の塔だったわよね」


「サクラちゃんのリザレクションを手に入れる事が出来るかもしれないから、魔法の塔が良いと思うわ」



 スミレの問いに答えるタマキ。



「本来はダンジョンシーカーの資格が必要だけど、今は既にギルドの管轄を離れているからその点は問題ないわ。貴方たちはシルバーシーカーでもあるわけだしね。

 ただ、一応あそこは初心者には厳しいという面もあるの。

 魔物が魔法を使ってくるから気を付けてね。

 魔法を防ぐには”マジックシールド”か”マジックバリア”の魔法で対抗するのが一般的な対応よ。貴方たちの対魔物結界でも防げるけど、普通はEPが持たないわ。<魔化>も本来はそうなんでしょうけどね。

 だから無理に戦おうとはせずに、ユウキ君に任せてしまった方が良いかもしれないわ」


「魔法を使ってくる相手とは戦ったことが無かったわね」


「魔法といっても、火のブレスや風の刃、水弾なんかも含まれるのよ。

 魔物が使うと魔法と見えないかもしれないけど、よく見ると魔法陣が出ているわ。

 ワイバーンがブレスを使用しなかったかしら?」



 スミレは訓練施設『初級コース』の最後の敵がワイバーンだったことを思い出しそう告げる。



「あれは<魔化>の完全状態のままユウキが全部魔石を回収したので。

 あの状態だと魔物に気が付かれることもないのよね」


「そういえば最後は超スピードで駆け抜けていたわね。

 まぁ、使われないにこしたことは無いわよ。

 後は曜日ね。今日は木曜だから、制覇を目指すなら14日の月曜まで待った方がいいわ。

 ゲートと違って施設は誰かがクリアしても消えないけど、コア自体は消えてしまうのよ。だから今週はもしかしたらすでに誰かがクリアしてしまっているかもしれないわ。

 制覇を確実にするには、リセット後にした方がいいわね」



 折角クリアしようとしてもコアが無ければ恐らく制覇にはならないだろう。

 ユウキたち3人もそう判断し、スミレのアドバイスに従いそれまでの間はユウキの勉強や修行の時間に当てる事にした。

 ユウキの受験勉強も大切な事である。





「まさか同じことを考えている人が居るとは」



 月曜の朝9時になる少し前、魔法の塔入口へと転移しようとしたところ、タマキは目印のそばに人間がいることに気が付いた。

 目印の半径10m以内であれば、タマキは状況を把握することができる。

 そのため3人共<魔化>でエネルギー状態になったうえでタマキのスキルで転移してきた。



「この人達もやっぱり制覇を狙っているんだよね」


「このタイミングでいるという事は多分そうね」


「都市は既に動いてしまいましたけど、平気なんでしょうか」



 既に魔法都市マジクは4日分移動しているので元の場所からは1000㎞以上離れた位置にいる。あと数日でダンジョンの出入り口に着くと、3人はスミレから聞いている。



「帰還石を持っているか、転移魔法を使えるか。移動用の装備や設備を持っているのかもしれないわね。

 飛行装備を持っていれば、シーカーであれば追いつけるでしょうし。

 よく考えたらダンジョンシーカーなら宿泊設備もあるでしょうし、移動中に適当なゲートを見つけてボス後の安全部屋で宿泊すれば都市が無くても問題ないわね。水は魔道具があるでしょうし、食料は魔物系の物と持ち込んでいる物によるでしょうけれど」



 ユウキたちの会話は魔法の塔に入る者達には聞こえていない。

 これは<魔化>の完全エネルギー状態になっている間は、<魔化>のスキルを持っていない者には見ることも聞くこともできないからだ。

 そのため、ユウキたちは自分達のライバルがいることに気が付いているが、相手は気が付いていない状況なのである。



「問題は、どうやって追い越そうかしらね。

 せっかく向こうは自分達だけだと思って油断しているのに、出来れば姿を見せたくないわよね」


「でもこの状態だと、移動速度がものすごく遅いですよね」



 今の<魔化>の完全エネルギー状態は、見られないうえに攻撃される心配もなく、物質も透過できるというメリットがあるが<身体強化>の影響も反映されていないと3人は考えている。

 ユウキに関しては自分で走るのと大差ない移動速度だが、タマキやサクラから見るととても遅いのである。タマキの<移動術>やサクラの<踊り>を用いたバフを使用しても、移動速度が変わらない。<移動術>の転移に関しては無事に発動するので、恐らく肉体に対する魔法やスキルの影響が表れないのではないかと予想している。



「じゃぁ久々に、裏技やってみる?」


「魔法の塔も狂乱の塔と同じタイプで、上下にはつながっていないらしいわよ」


「うん。スミレさんが言っていたのは覚えてる。

 この間タマキとサクラちゃんの連携修行を見て、ちょっと思いついたことがあるんだよね」


「連携修行っていうと、対空戦の事?」


「そうそう。サクラちゃんが、タマキの転移目印が付いた矢を使って弓で攻撃してたでしょ。

 矢が外れてもタマキがすかさず転移して攻撃してた連携修行」


「やったわね」


「私、弓もあまり得意ではないんですよね」


「その時、俺が矢の回収をしたじゃない?

 だから外れても変な方向に行ってもサクラちゃんはすぐに何回でも攻撃できたし」


「あれは助かりました。

 矢を探しに行くのも手間なんですよね」


「魔石以外でも意外と便利な回収だよね。

 で、その時タマキの目印って俺が収納の中に矢を入れても消えてなかったよね」


「そうね。私も収納の中に目印が空いたままの投げナイフとか保管しているわよ」


「うん。まぁ自分の収納と他人の収納では変わるかもしれないかと思ってたんだよね。

 で、回収してサクラちゃんに渡しても消えないなら、俺が目印を遠くに置けばいいのかなと。

 ちょっとその石に目印をつけてみてくれる?」



 ユウキは足元にある小石を指さす。



「つけたわよ」


「ではちょっとテスト」



 ユウキはそう言うと目印の石を回収し、魔具の塔の入り口付近に石を出現させる。



「これでさっきの石まで転移できる?」


「行けると思うわ。さっき付けた目印を選べるし」



 そういうとタマキはユウキとサクラを連れて目印の石まで転移する。



「行けるね。こっちは魔具の塔だけど、待っている人はいないね」


「魔法の塔は、やっぱり貴重な魔法スクロールを狙っているんですかねぇ」


「そうかもしれないわね。ユウキは石を回収して、そろそろ9時になるから魔法の塔入り口へ戻りましょ」



 こうして新しい裏技を手に入れたユウキたち一行は、魔法の塔入口へと戻っていった。





 9時になり、先行するシーカーたちが入っていくのを確認した後、ユウキたちも続けて入っていく。

 ただ、先ほどまで予想していた状況と違い、少しだけ想定外の事態も発生している。



「まさかもう1PTリセットで出てくるとは思わなかったね」


「そうね、お陰であっちの2PTがお互いを意識して急いでいるわね」



 ライバルがいないと油断させるつもりで姿を現さなかった3人だが、現状では別のライバルが出てきてしまったためゆっくり移動するなどという事はあり得ない。お互いが自分たちの最速ペースを目指して移動するだろう。



「さて、とりあえず俺たちは俺たちのやり方で行こうか。

 1Fの階層切り替え付近に目印を出したから転移お願い」



 魔法の塔に入った1Fは、迷宮タイプである。

 照明用松明のある平らな壁に、整地された石畳。天井も平らになっており、足が引っかかるとか頭をぶつける様なでこぼこはない。通路幅も3m程度はあるので十分に走り続けるスペースがある。先行している2PTは既に通路を曲がった先に居るので直接見ることはできない。

 ユウキが知覚で感じている状況では、お互い差がつかずに一団となって走っているように感じている。



「では飛ぶわよー」



 タマキが言葉を発した後、3人の視界に映る景色が変化する。



「階層切り替えのところにあっさり来れたね」


「相変わらず、おかしな使い方を考えるわね」


「いやいや、俺一人じゃできないから」


「今回は私、何も役に立てませんね」



 ユウキとタマキの連携移動が決まる一方、役に立てないと嘆くサクラ。



「サクラちゃんは俺が修行する時の支援もできるし、タマキが戦う時の支援もできるでしょ。

 タマキが1対1で魔物と戦う状況になったら、サクラちゃんは役に立てるけど俺は役に立てないし。俺が魔石を回収しちゃったら<収納>スキル以外の成長はないだろうから、本当はタマキが倒したほうがいいんだよね。

 今回もある程度先行したら、丁度いい相手の魔物辺りとタマキが戦いたがるんじゃないかな」


「そうね。魔物の強さは狂乱の塔とあまり変わらないというから、少し余裕を見るとしてオークが居た20F位の魔物と戦ってみたいわね。その時はサクラちゃん、支援をお願いね」


「分かりました。

 すいません、なんか落ち込んじゃって」


「私だって2回目の訓練施設の時は基本的に役立たずだったわよ。

 お互いが違う事を出来るからこそ上手く協力すればいろいろできるんだし、それでいいじゃない」



 タマキも自分一人だけでは多くの事はできないことを知っている。

 PTで協力することの重要性を確認する3人であった。

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