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第32話 魔化不思議

前回のあらすじ:

狂乱の塔を脱出し、体の状態について確認した3人は温泉を堪能した。

タマキの攻撃力が、予想以上に上がっていた。

「体や装備等は透けているけど、光らないね」


「そうね、何が違うのかしら」



 温泉を堪能した翌朝、3人はギルドマスターの元へと向かう前に<魔化>についての実験を開始した。

 塔から出た直後こそ動揺していたものの、一晩経ってみると新しい力についての好奇心が勝ってしまったのだ。既に戻り方は判明しているため、状態に対する恐怖心は無くなっている。


 しかし<魔化>のスキルにより魔力状態へと任意変更をした結果、体は透けているものの光ってはいない。塔を出た時の状態とは明らかに違っている。

 さらに光っていない魔力状態の場合、体の輪郭を保つのが難しく、気を抜くとまるで霧のように全体がぼやけて薄まって広がっていってしまうのだ。幸いにも体に異常はないようで、肉体の状態に変更すれば普通に元に戻れるのだが。



「あ、光りました」



 そんな中、サクラが透けて光る状態の再現に成功する。

 それは肉体状態固定でもなく、魔力状態固定でもない、自動発動状態。固定しない状態の標準が透けて光る状態だった。



「こうやるのね」


「この状態だと、肉体状態にも魔力状態にも少しずつ移行できるんだね」


「そうですね。あと、魔力状態だと浮けますよ」


「ほんとだ。あと地面にも入れる。さっきは地上に接地した状態で浮いてたっていう事か」



 3人は気が付くことをどんどんテストしていく。

 魔力状態だと移動に制限がなくなるが、光っている状態だと空も飛べなければ地面に潜ることもできない。

 さらに光っている状態では霧のようにぼやけてしまうことは無いものの、液体のように体の固定が甘くなる。

 そして……テスト中にサクラが肉体状態で地上へと落下した。



「あら。落ちちゃいました。

 ……あれ?

 ……魔化できません」


「「え?」」



 サクラの突然の発言に地上で肉体状態へと固定するユウキとタマキ。

 しかし二人はその後も魔力状態にも固定できれば自動状態へも移行できる。



「なんだろう?」


「私達はできるようね」



 二人が問題なく変化できる状況を確認し、サクラはあることに気が付く。



「EPが0になってます」



 その状況を聞いたユウキとタマキは魔力状態でEPの変化を確認する。



「魔力状態だとEPを継続消費するね」


「そうね、しかも結構消費量が多いわね」


「光っている時の方が少ないみたい。魔力状態は面白いけど、ずっとは無理か」


「そうね、それに移動速度が遅すぎるわ」


「俺から見ると、普通に走る位の速度で移動できているから十分なんだけど」


「光っている状態で地上を走る分には、いつものように速く走れるのよね」



 その後サクラへとエネルギーキューブ経由でEPを渡すとサクラも再び魔化できるように戻った。


 さらにテストとして模擬戦闘も行ってみたものの、結果は芳しくない。

 魔力状態固定ではそもそもお互いに触れる事すらできず、自動状態でもまるで液体同士を操ってぶつけているように力が伝わらない。


 肉体状態から普通に攻撃してみても、魔力状態には全く影響が表れず、自動状態相手ではやはり液体を切っているような状況だった。液体はいくつもの塊に分離しても勝手に戻ってしまう。それどころか、液体を個別に操作する事すら可能だという事も判明した。操作自体は非常に難しいけれど。


 一方魔法攻撃に関しては、攻撃する側の場合はどの状態でも魔法を発動することができた。

 しかし攻撃を受ける側に関しては、魔力状態だとそもそも魔法も素通りする。自動状態では当たるものの、液体が周りに飛び散るだけで装備が壊れるということは無い。

 ただし自動状態で魔法を受けた時はEPを消費するようで、EPにダメージが入っているという状態が分かりやすい。



「これ、移動や防御には便利だけど、俺達だと攻撃には向かない?」


「ユウキが倒してしまえば意味はあるけど、それなら魔物の傍まで近づかないわよね。サクラちゃん魔法攻撃は?」


「素質は中です。魔法自体は覚えてませんけど」


「私と同じ中か……。何かあるかもしれないし後で覚えておきましょ。お金はあるから。

 でも魔法力の事を考えたら、私の攻撃で倒しやすい魔物だけを倒して、後はユウキに回収してもらった方が効率良いわよね」



 サクラもPTとして一緒にやっていくと決めた事で、ユウキとタマキは自分達のアレンジスキルの事をサクラにうちあけた。そしてユウキの素質に関しても。これからずっとPTとしてやっていくのであれば、気が付いたことなどはできれば協力し合いたいからだ。


 その時サクラのアレンジスキルについても話が出たのだが、既にユウキの収納の中にある魔石に関してはEPに変換してしまっていた。

 ユウキは魔石としての活用方法というものがあるとは知らず、魔石を回収した段階でEPに変換するという事まで自動化してしまっていた結果だった。サクラの話を聞いた今は、自動で変換する部分は無くしているけれど。レイドボスの魔石に関してはタイミングが悪かったという他ない。



「そうですね。攻撃魔法よりもリジェネーションの魔法を覚えさせてもらった方がユウキさんの移動に役立つ気がします。徐々に回復の方が長時間回復効果が続くでしょうし」


「それいいわね。あとは回復魔法であればメガヒールも覚えて欲しいわ。そうすればユウキをプチッてやってしまっても治せるでしょうし」



 それを聞いたユウキは当然のように焦る。



「出来ればプチッは無い方がうれしいけど」


「無い方がいいわよ。けど、とっさの力加減ってあるじゃない。リザレクションも覚えられたら良いわね。プチッとなる場所によっては。でも聖女ではなかったのよね?」


「実は聖女かどうかは分からないんです。教会で実際に試したわけではないですので」


「そうなのね。ギルドで売ってるかしら。魔法の塔にはまだ入れないし、そもそも魔法の塔で手に入るのかも知らないけど」



 魔法の塔はダンジョンシーカーのライセンスが無いと中に入る事が出来ない施設だ。どちらにしても、現状で出来る事ではない。


 魔化に関するある程度の事を確認したところで、3人はギルドマスターの元へと向かうことにした。





 ギルドマスターへの面会はあっさりと実現した。

 これはサクラがギルドで働いていたという事と、オークの集団に関する情報の報告を持ってきたためだ。ギルドとしては、個別に20Fへと状況を確認しに向かうかどうかを検討する必要があったため、詳しい情報を知っているという事であればぜひとも聞いておきたかったのだ。



「さくらちゃん、いらっしゃーい。他の二人は初めましてね。ギルドマスターの、す、み、れ、よ。よろしくネ」



 ギルドマスターの部屋には、巨漢の漢女が待ち構えていた……。



 ギルドマスターの名前は田中剛。ガッチリとした体格で顔も完全に男なのだが、自称スミレである。フリフリのワンピースに身を包み、化粧もばっちり決めている。格好は完全に女性の服装だ……見た目が女性に見えるかはともかくとして。


 そんな濃いスミレとの対面を終え、3人は塔での出来事について報告をする。


 3人は称号の説明からレイドボスを倒したという結果は分かっていても、どういう状況でたどり着くのか、また、他にもそういう場所があるのかなどは分からない。

 そして他にも同様な事があるのだとすれば、踏み込んではまずい場所は分かる範囲では知っておきたい。


 レイドボスとの遭遇で、タマキは自分の知識だけで進むことの危険性を理解したのだ。

 今回は偶然対処ができた。しかしこれが3人バラバラの場所に転移していたら、転移の目印をつけてあるユウキはともかくサクラを助けることはできなかっただろう。もしかしたら転移先が特別な空間であった場合、ユウキと合流すらできなかったかもしれない。

 無知な自分達が、いかに無謀なことをしてしまったのかを理解してしまったのだ。



 とはいえ、タマキが理解していることと、行動を起こした結果とは話が別である。



 3人はオークの集団とレイドボスの事だけを話したかったが、スミレは話を聞くのが上手かった。


 それには、スミレのアレンジスキルによる影響が強く働いている。

 スミレのアレンジスキルは<気配察知>を元にしている。これに気配を察知した相手に対して<直観>が働く事と、見えない相手でも<見える>という追加の効果がアレンジされている。

 本来は『魔物の気配を察知した時に魔物の事がわかればいい』という事と、『気配だけで見た目が分かれば良い』という考えから発生したアレンジ内容だが、人間相手にも働く直観は様々な場面で役に立つ。もちろんスキルではなく思い込みの感もあるので、全てが正しいとは判断できないのだが。


 その結果、本来隠しておきたいような部分まで言葉巧みに誘導され、いつの間にか自分達の秘密迄しゃべらされていた。

 そして……。



『バチン! バチン! バチン!』



 3人の頭にハリセンが振り下ろされた。



「せ、い、ざ!」


「「「……」」」


「正座!」


「「「はいっ!」」」



 1回目の言葉では反応できなかった3人だが、繰り返された強い言葉を聞いた瞬間、反射的に床に正座した。



「貴方達はまだ中学生なのよ。なんて馬鹿なことをしているの!」



 盛大な説教が始まったのだった……。

タイトルはわざとですので誤字ではありません

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