第33話 シルバーシーカー
前回のあらすじ:
魔化についていろいろ試した。
スミレに説教された。
「貴方達が倒した魔物は、確かにレイドボスと言われる魔物よ」
説教を終わらせ、さらにサクラを助けてくれた礼を言ったスミレは、3人が知りたがっていたことを口にする。
称号に関しては鑑定魔法を使用して確認することが可能であるため、スミレは3人の許可を得てから実際に鑑定魔法を使用して確認済みだ。
これは他人に所有権がある物は、許可なく鑑定魔法を使用しても成功しないという制約があるためだ。
「レイドボスというのはね、普通にその場所に行っただけでは出現しないの。
特定の条件を達成した場合にだけ出現するのよ」
特定の条件というものは一つではなく、実際にどういう条件があるのかまでの詳細は分かっていない。
同じ条件を達成したつもりでも、出現したりしなかったりと差がでるのだ。
実際には、正確な条件を詰め切れていないという事である。
「PTは6人まで、クランは10PTまで、レイドは200人まで。
まだ中学生では習っていない範囲だけど、そういう仕組みがあるの。レイドボスはね、本来はそういう相手という事よ。
中学生が3人で倒すなんて、多分世界初ね。おそらくランクSSS討伐も。
少なくともここにある資料では、ランクAが最上位ではないかと思われているのよ。普通はランクF-D討伐なの。ランクC討伐でさえめったに出ることは無いわ。
しかも初討伐報酬……狂乱の塔のオーク城に、新たなレイドボスの出現方法があったという事ね」
レイドボスとは通常100-200人程度の集団で討伐する魔物であり、本来3人で討伐できるようなものではない。
レイドボスを討伐した時の初討伐報酬という表示も、その人がレイドボスを初めて倒したという意味ではない。その場のその条件で発生するレイドボスが、初めて討伐されたという表示だ。
事実スミレが初めてレイドボスを倒した戦闘後の表示には、初という文字は付いていなかった。
「340体のオーク。これがきっと何か意味があるのよね。
20Fのオークは、元々すべて集めてもそんなに居ないのよ」
とはいえ、オークがどこからやってきたのかなど、考えただけでは分からない。
「隠し通路か何かがあるのかもしれないわね。それはギルドで調べておくわ」
「スミレさん。後で称号の効果を確認しに20Fへ転移する予定なんですけど、一緒に行きますか?」
3人は称号のスキルを強化(超)の効果を確認するため、タマキが20Fのオークと戦闘をする予定でいる。タマキは20Fの入り口地点に目印を残しているため、リセット前であれば何時でも行く事が出来る。
そのためタマキは、スミレに一緒に行くかと提案しているのだ。
「危険……という訳でもないのよね、貴方達に関してだけ言えば。
でも他の子が真似をする危険もあるし、現地にいる周りの大人が貴方達をかばおうと動いてしまう可能性もあるのよ。
15歳成人になったのは今年からだから、まだ周りも慣れていないの。
とはいえ15歳成人に慣れたとしたって、オークを中学生が倒す光景を見たら目を疑うと思うけど。
……今回は私が付き合うわ。丁度現地で確認したいこともあるし。
隠し通路の件は急ぎでもないから、後々やるわ」
レイドボスが倒されると、オーク城がリセットまで消滅する。
現在の状況を考えれば、今は現地にオーク城は無いはずなのだ。ギルドとしてはそれを確認し、今週レイドボス討伐の申し込みが来た場合には止めなければならない。
「それはそうと、3人共おめでとう。戦闘系のランクB以上の称号を一つ確認したわ。貴方たちはこれでシルバーシーカーよ」
「「「え?」」」
ダンジョンシーカーのライセンスカードには色分けがある。
現在3人が持っているのは無地の白色。
これは限定シーカーのライセンスカードの色で、プリペイドカードの意味しかない。
白のライセンスカードのランクの情報は、その都市でシーカー登録をしてギルドの情報と結びつけることで初めて蓄積されるのものだ。
従ってほかの都市ではプリペイドカードであることと限定シーカーとして活動しているという事しか分からない。
白の上のカードがブロンズカード。
これはダンジョンシーカーの国家ライセンスを取得した者が手に入れるカードだ。
そしてブロンズの上がシルバーカード。
これはギルドの定めた規定をクリアした者に与えられるカードの事。
当然ブロンズカードよりも様々な特典を得ることができる。
「ただ……貴方達は当然ながら国家ライセンスをまだ持っていないのよね。
本来の趣旨的には、ブロンズカードの所持者が既定の条件をクリアした場合に発行されるものだと思うのよ。でも、規定にはそこまで考慮されていないのよね。
だから最終的にはダンジョン探索協会の会長次第よ。
報告書を送って返事が来てだから、5日後ってところね。
多分制限付きのシルバーカードというような状況になると思うわ。
国家ライセンスはきちんとそのうち取るようにってね。
3人共、5日後は大丈夫?」
ユウキはタマキの方を確認し、サクラもタマキの方を見ている。
この3人のPTの行動は、基本的にタマキが予定を決めているからだ。
「大丈夫です。シルバーシーカーって、確かギルドの転移便に同行出来ましたよね?」
二人の様子を確認したタマキがそう答える。
「そうね。もちろん可能であればという制限は付くけど、基本的に利用可能よ」
「なら問題ないです。中央都市への移動をどうしようかという位ですので」
「分かったわ。あと、3人で正式なPT名を決めて頂戴。
貴方達が国家ライセンスを取得するまでは、私のクランの所属という形でギルドに登録して匿っておくわ。
と言っても高校と大学での活動だから、虫よけという意味にしかならないけどね。変な事に巻き込まれそうになったら、名前を出して追い払ってしまっていいわよ。
ライセンスを取ったら3人で旅立ってもいいし、しばらくそのままうちにいてもいいし、ずっと居たっていいわ。サクラちゃんとお友達だしね」
3人はスミレの申し出を受け、クラン黄昏の所属として世話になることに決める。
サクラにとって、スミレは教会と離別した時の恩人でもある。
元々ダンジョンシーカーの国家ライセンスを取った後は、スミレのクランに所属したかったのだ。ユウキとタマキにとっては特にクランなどは考えていなかったが、別に二人だけでいる意味もない。どうせライセンスがとれるまではダンジョンの外に行けないのだ。サクラが興味を示しているという事で、とりあえず入っておくという事にしたのだった。
「さて、後は魔化とスキルの話ね。
先ずは魔化に関してだけど、おそらくは貴方達以外に使える人はいないと思うわ。
そもそも魔化というスキル名すら初めて聞いたわよ。この都市のギルドの資料にも載ってないわ」
魔法都市マジクは、小山ダンジョンの中でも中央都市に近い規模の都市である。
むしろギルドという意味では、最も力のあるギルドだ。
これは魔法の塔と魔具の塔という、非常に有用な施設が傍にある都市のため、その分管理が必要という事からだ。
つまりマジクのギルドの資料になければ、小山ダンジョン内の他のギルドの資料にだけのっている可能性は少ないのである。
「でも、貴方たちが気になっている『人間は魔力で出来ているのか』については、同じことを言っている研究者が居るわ」
ダンジョンは魔力によって出現したと言われている。
そしてそれは、ダンジョン内のあらゆるものが魔力で構成されているという意味だと考えられている。
ダンジョンの魔物の肉、ダンジョンで育った植物なども含め、それは魔力で作られたもの。それを食べている人間の細胞は、原子やさらに細かい素粒子段階で魔力で作られたものに置き換わっているのではないか。
これがその一部の研究者が唱えている、今の人間は魔力で出来ているという説だ。
そしてその根拠としている状況が、回復魔法や魔法薬、蘇生魔法の存在、そして<収納>の仕様だ。
今でこそ回復魔法や魔法薬、蘇生魔法は全ての人に効果があるとされているが、人類がまだダンジョンの外で生活している時期はそうではなかった。
ダンジョンの中に入る、一部の者にだけ効果が発揮される可能性があるという程度の不安定なものとされていた。
そして<収納>のスキルで保管できる物。
これは今も当時も、中に収納できる物はダンジョン内で手に入れた物だけだ。魔物、ドロップアイテム、宝箱の中身。ダンジョン内の資源や素材等々。
しかしダンジョンの中で過ごすようになってしばらくすると、これらに加えて24時間以上経過した動物の死体も収納できるようになった。
そしていつの間にか24時間以上経過した人間の死体も収納可能になった。
自分の体に対して所有権を設定できるように変わったのは、丁度この頃からではないかと言われている。
これらの事から、<収納>は魔力で構成された物を収納でき、そして人間やダンジョン外の動物も魔力で構成された存在に既に変わっているのではないか。
回復魔法や魔法薬、蘇生魔法は人間が魔力で構成された存在に変わったから有効になったのではないか、という仮説が立てられているのだった。




