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魔法使いはランクとかわからない


「冒険者……ッ!?」


「イエス。冒険者四名。ピィノ逃亡、モズリス追跡」


「ピィノを追ってきたってこと?」


「不明。しかし、掃討可能」


「ね、姉さま! 私もお供致します!」


「フェルミアは隠れてて。森の民(アールヴ)でも魔族だと思って話しを聞いてもらえないかもしれない」


「で、でも……」


 渋るフェルミアに「ここはまかせて」と伝えて、私は冒険者の許へ向かいます。

 念の為クロムには不可視のままでいてもらい、ひとまず私が交渉役です。

 野営地まで戻ると、四人の冒険者さんが身構えて私を迎えました。


「人間……か?」


 見たところ、剣士、弓師、魔法使い、神官一人ずつのパーティーのようです。

 私を警戒しつつ皆さんが剣士の男性を伺っているところからして、彼がリーダーのようでした。


「はい、人間ですよ。こんなところでどうされました? 冒険者さん」


 ひとまずは探りをいれたいところです。

 彼らが何の為にここに来たのかとか。


「……君も、いや違うか。君こそこんな町から離れたところで何をしている。一人か?」


「ちょっと……薬草を取りに来てまして、貴重なものは町近くに残ってませんから、ついついこんなところまで来てしまいました。でもこの辺りは比較的に安全と聞いていたのですけど何かあったんですか?」


「どこから来た」


 質問ばかりで応えてはくれないようです。

 適当に話しを合わせておきますか。


「旅のものです。各地を巡って薬草の自生地を調べつつ採取を行っています」


「冒険者でもないのに一人でか……?」


 よく見ると全員同じデザインの腕輪をしています。

 冒険者となるとそれを証明するものが交付されると読んだことがあります。

 私が冒険者でないと気づいたのも、そのブレスレットをしていないからですか。


 「えぇ」と相槌を打つと、剣士の男性は訝しげに私を観察した後、警戒を緩めたようでした。

 ひとまずは納得していただけたようです。


「失礼した。俺達はギルドの依頼でここに来た――銀の冒険者だ」


 全員揃って腕輪を見せてくれました。


「ぎ、銀の……」


「あぁ、そういうことだ」


 妙に大仰に頷いてくださいますが……どういうことでしょう。

 いきなり自慢げに銀の冒険者とか言われても、何一つ理解できないんですけども。


「この辺境の地は確かに比較的安全だったかもしれない。だが俺達が派遣されたということがどういうことか、理解してもらえるな」


「……一つお聞きしていいですか?」


「あぁ。できればすぐにでもここを離れて欲しいところだが……いや一人では危険か」


「リーダー、もう日が沈む、今日は一緒に野営して明日帰らせた方が良いんじゃない? あの妖鳥(ハーピー)ももう巣に逃げちゃったことだろうしさ」


 私を放って勝手に話が進んでいきます。

 あわてて私は声を上げて割って入りました。


「あの、銀の冒険者って……すごいんです……よね?」


 四人がポカンとして、次いで困ったように笑います。

 ほんのりと侮蔑的なかほりもしました。

 でも知らないものは知らんです。だってこれまでの人生で、冒険者さんのことを知る必要がなかったんですもの。


「どうりで今どきそんな格好してるわけね」


 ボソリと魔法使いらしき女の子の呆れたような言葉が聞こえてきます。

 確かにその女の子の格好は私とまるで違いました。

 ところどころにフリルをあしらった衣装に、小さなハットを頭に乗せていて、一見すると魔法使いとは思えない可愛らしい格好です。

 それでも私が魔法使いだとわかったのは、彼女の手にタクトが握られていたからでした。


「すまなかった、説明が足りなかったようだな。銀は……上から三番目の冒険者ランクなんだ」


 それすごいの?

 と喉元まで出掛かりました。

 この人あれですね、申し訳ないですが説明下手さんですね。


「あの、ちなみに下からは……?」


「四番目だ」


 それ、普通じゃない……?

 私の知識不足もあるんでしょうけど、つまり六段階のほぼ真ん中なのでいまいち凄さがわかりません。

 なのでどれくらい冒険者さんがいて、どれくらいの数が銀になれるのかを聞いてみます。


「おい冒険者って何人いるんだ」

「知るわけないじゃない。いっぱいいるわよ」

「白金は百年に一人っていうから、そういう言い方にしたら?」

「ですけどそうなると銀は……毎年たくさんなられますよ?」


 なんか悪い事を聞いてしまったようです。

 他の例えでもいいですよ、と私は譲歩する姿勢を見せてみます。

 しばらくの話し合いのあと、剣士の男性が振り向きました。


「銀は黒獣を一人で倒せる力を持っているんだ」


 なんか正解を導き出したかのようなスッキリした顔です。

 そこにこう言うのは心苦しいのですが、


「黒獣はどれくらい強いんでしょう……?」


 冒険者さんたちが固まりました。

 黒獣なら私でも倒せますし、凄いんだか凄くないんだかさっぱりです。

 あぁでも、もうこれエンドレスですね。もういいです。


「それより、そんな銀の冒険者さんがこんなところに何をしに?」


「……あ、あぁ、実はその黒獣の討伐依頼で来たんだ。知らないかもしれないが、黒獣は魔族の使役する厄介な怪物でな、こんな魔族領から離れたところに本来出てくるはずのないものなんだが」


 やっと欲しい情報が聞き出せたと思いきや、冒険者さんたちに緊張が走ります。

 それと共に森を何かが疾走する足音。


「きゅきゅっ!」


 冒険者さんの視線の先、私の後方にはこちらにかけてくるモズリスちゃんの姿がありました。あっちゃいました。


「あ、あれは大丈夫ですよ!! 精霊のいたず――」


「も、森の主ッ!? 全員戦闘態勢!!」


「だからこの子はモズリ」


 モズリスちゃんは私の脇を走り抜け、そのまま冒険者さんになぜか突進。

 先頭にいた剣士さんが容易く弾き飛ばされます。

 

「ぐ、あッ!? くっ、攻撃魔法の準備をしろ! それと治癒魔法だ!」


 何やら冒険者さん対モズリスちゃんの戦闘が始まってしまいました……。




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