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いらない子は歓迎される

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 それが久方ぶりであるなら、町々の風景も自然の風景も等しく輝いて見えるというもの。


 のはずだったんですが、引きこもりは眩しすぎる太陽の日差しとガタコト揺れる馬車にすぐさまグロッキー。

 旅路を優雅に楽しむ余裕はありませんでした。


 それでも一週間近くかけてようやく目的地に到着。

 現金なもので、その途端に体調不良を忘れ私は目の前の光景に心を躍らせます。


 それはなーんにもない田舎の風景。

 その中心にあるのは、王都から来たので余計に寂れて見える小さな町。

 村と呼んでも差し支えないほどに小規模なものです。


 ですが広い草丘と森に囲まれたその場所は、私がいつか余生をここで過ごせたらとずっと考えていた場所でした。

 その理由は立地だけではありません。


 草丘の上からでもそれが見受けられます。

 並ぶ家々を取り囲む花壇に、そして壁を這う蔦に咲く可愛らしい花々。

 それらはア・レイラ国の忘れ形見。亡国にあったという、家屋や町を花で囲むという素敵な魔除けの風習です。


「思ったとおり。いや思った以上ーっ!」


 緑に囲まれて色とりどりの花が揺れる町。

 それをこの目で見れただけで大満足。


 と言いたいところですが、まさか駅馬車が隣町までしか運行していないとは思っていませんでした。

 おかげで半日歩くはめになったし、どこまでも続く草丘が本当にどこまでも続いているのではと不安にもなりました。

 無事に到着できたので良しとはしますが、私の足と腰はもう限界です。

 

 予定としては家探しがありますが、まずは本日のお宿。

 そしてこの重たい荷物を下ろすのです。

 繰り返しますが引きこもりの腰はもうとっくに限界です。


「よおしっ!」


 最後の力を振り絞り丘を駆け下り――ている途中でこけて転がり下りて、私は早速町へと入りました。

 甘い花の香り漂う素敵な町です。


 さあまずどこへ行けばいいかと思っていたところ、井戸で水を汲んでいる娘さんを発見しました。


 明るい茶髪をサイドでまとめた、どこか品のあるお嬢さんです。

 私より少し年上というところでしょう。

 早速声をかけようとしましたが、そこではたと気づきました。


 いけないいけない、まずは見出しなみチェックをしなくてはては。


 これでも私だって乙女ですから……というわけではなく、第一町民相手に粗相があればこの先色々と問題があるかもしれないから、という至極現実的な理由からです。

 第一印象ちょー大事。


 さっそく鏡を取り出してニッコリ笑顔の練習。

 肩まで伸ばした金色に近いアンティークホワイトの髪をささっと整えていると、ふと私の髪色を黄ばみとか言いやがってくださった老子を思い出します。


 何を今さらと気を取り直し、続いて丸い金色の瞳をぱちくりして確認。

 ふと私の瞳を金○とか言いやがってくださった老子を思い出します。


 いやいや今さら腹を立てたって仕方ないじゃないかと頭を軽く振って――


「あの、ばばあぁぁぁッ!」


 ――みたけど憤怒が振り払われることはなかったみたいです。仕方ないですよね。


「あっ」


 最悪です。

 第一町民が私に気づいてしまいました。


 しかしやってしまったことはもう取り返しようがないので、挽回に努めるといたしましょう。


「びっくりさせてしまったならごめんなさい。鼻がむずむずしちゃって」


「さっきのくしゃみだと言い張るんですか」


 あれ、無理があったかな?


「えっと……それはそうとこの町の方、ですよね?」


「あ、はい……。そのお姿、あ……あなたは……魔法使いの方です、よね?」


 そう、誰かどう見たって魔法使いという格好を私はしています。

 今時は逆に珍しいというとんがり帽子に黒い外套、伝統的な魔法使いの格好です。

 

『最近はちゃらちゃらした格好が流行ってるようだがね、魔法使いはこうと決まってるんだよ!』


 ばばあ――もとい老子がお酒を飲みながら、無関係な私に責めるようにそう言っていたことがありました。

 だから良い子な私はそんな老子の教えを忠実に守って――いるわけじゃなくて、外行きの服がこれ以外なかったんです。はい。


 もっと可愛いのを見えないメイドさんに用意してもらってれば良かったなあ。と思ったところで後の祭りですね。


「はい、古き良き魔法使いです。なんちっ――」


 娘さんの持っていた桶が落ちて、ぱしゃりと水しぶきが跳ね上がります。

 顔を上げると、娘さんは目と口をこれでもかと開けたまま固まっていました。

 こう言っては何ですけど、可愛らしいお顔が台無しです。

 ちょっとぶちゃいくです。


「お、おおお……」


「お? え、もしかして地方(こっち)の挨拶?」


「おぉおぉおぉおぉぉぉぉぉお……じいいいいいいちゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!!!!」


 なんでしょうこの子、可愛い顔してるのに言動がおかしい。

 地方の風習か、それとも何かしらの病気でしょうか。


「えい、第一治癒魔法(ヒアル)ッ」


「りらああああっくすッ!!」


 ダメだ、治んないや。


「どうしたソフィア! 何があったんじゃ!」


 通りに並んだ家の一つから、血相を変えて老年の男性が飛び出してきました。

 なんだか困った状況になってく気がしたので、私は先手を打ちます。

 やられる前にやれ、老子に教わった言葉の一つです。


「初めまして、私は魔法使いのリヴィ――」


「ぶるぅああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」


 こっちもかい。


「お、おぉぉじいちゃん、魔法使い、魔女の人がき、来てくれっ」


「あぁあぁぁ、ようやく、これでお前に不自由な思いをさせずにすむんぬ」


「みんなを、みんなにも知らせねばねば……!」


 おかしな言葉遣いで抱き合った二人の内一人が駆け出し、残ったご老人が泣きながら私の前に跪きました。


「どうかこの町をお救いくだせぇ、魔法使い様。どうか、どうか……冒険者様!」


「あ、いや冒険者じゃないです」


「…………」


 ゆっくりとご老人がぱたり。

 ゆすってみたけど反応がなく、ついでに脈もありません。


「って、え!? 私がやったみたいになる! 起きて! 挨拶代わりに死なないで!! 第一治癒魔法(ヒアル)! 第二治癒魔法(ヒアリア)! あぁもう、第三治癒魔法(ヒアリアス)ッ!」


 かいあってなんとかご老人は息を吹き返しました。

 が、気づけば町民のみなさんに囲まれております。

 私のファーストコンタクトはもうひどい結果です。


「町長が、生き返った……!?」

「伝説の……伝説の魔法使い様だ!!」

「まさかこんな凄いお方に来てもらえるなんてねぇ、あたしはもう嬉しくて泣いちまうよっ!」

「お姉ちゃんすごいすごいっ!」

 

 取り囲んだみなさんの予想外なそんな言葉に驚きつつも、面倒ごとに巻き込まれるの確定だなと思いつつ――


「私は大魔法使いの一番弟子、リヴィ・クオンティーナ……ッ!」


 ――外套ばっさぁ。やんややんや。


 えぇ、良い気になってしまいました。

 だって、褒められ慣れてないんだもん。


 こうして、私は早速厄介ごとに巻き込まれていくのでした。



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