顔合わせ
ニーロ襲撃から数日。いつものように街の警備をする日々を続けていた。時折抜け出しては、四人の為に食料などを差し入れる。シュネリも住民として街に入ることが難しいため、街と行き来出来るのは俺だけだった。
ハーディーが動けない中でも、俺達は作戦を続けていた。少人数のところを狙い、俺が助ける。それを繰り返した。他の団員達はそれ程強くない。ニーロの時のように目立ってしまわないように済ませ、他言無用を伝えればそれで済んだ。
ニーロと同様に協力を約束した事件団の人数は二桁に達しようとしている。
この団員達には、戦力としては何も期待していない。それでも、いざという時の為の駒として準備は必要だろうと思い、味方を増やした。
そんな数日の間に、ハーディーの腹の具合もかなり良くなっているようだった。既に歩けるまでに回復している。絶好調とまではいかないのだろうが、やはりメディの能力はすごいなと感心させられた。
やらなければならない事が一つある。そろそろ大丈夫だろう。その事を話すと、四人は複雑な表情を見せた。何より、シュネリとメディはかなり心配そうな顔をしている。
「シュネリもメディも、そう嫌そうな顔をしないでくれ。一緒に戦う以上、もう一度顔を合わせる必要がある」
そう、ニーロとこの四人との顔合わせだ。研究所に乗り込む時は味方として振舞う必要がある。戦力として必要になるであろうこの四人を待機させておく選択肢など無いのだから、わだかまりを少しでも減らしておくべきだと考えていた。
さすがに、ニーロが慕う老婆を襲ったサンダと、まだ傷の癒えていないハーディーをニーロに会わせるというのは怖い。そこで、俺とシュネリとメディの三人でどうにかしなければならない。
「本当に大丈夫かしら、いきなり殴りかかってきたリしないわよね」
「シュネリはマハトが守ってくれるでしょ。大丈夫よ。それよりも、マハトと一緒に騙していた私が居たら、余計にこじれないかしら」
「二人とも心配なのはわかる。何も起きないように、俺が必ず守るよ」
少し無理矢理かもしれないが、この言葉で不安が和らいでくれればと思った。そんな俺の言葉に、二人は半ば諦めたように小さく頷いた。
どのような話をするかを決めた。明日、俺がニーロと二人で警備する予定になっているので、時間を見て街はずれに呼び出す。そこで顔を合わせて、どうにか丸め込む必要があるのだ。
今から緊張を見せている二人を横目に、俺は小屋を後にした。
翌日、少し曇り空の下。ニーロと二人で警備の為に歩いてた。そろそろ昼に近い。少し話があると伝えると、ニーロはわかったと頷いた。
俺の顔も少しこわばっていたかもしれない。大事な話だということを、ニーロも察してくれたのだろう。目的の場所までは、二人とも無言だった。
街はずれ、二つの影がある。それに気が付いたニーロが、隣で立ちすくんだ。顔を見ると、変な汗をかいている。明らかに困惑した表情を見せていた。
それもそのはずだと、心の中で呟いた。
あの日戦った、敵と呼ぶべき女の隣に、病に伏せっているはずのアルツが並んで立っているのだから。
俺がクラフトとして偽っていた隣で、メディもまた、アルツとして皆を騙していた。だからこそ、俺はここにメディを連れてきたのだ。
シュネリだけならば、いきなり戦闘になってもおかしくない。見知った顔の方が多いのであれば、ニーロも無茶な真似はしないだろう。そう思っていた。
実際には、それ以上の混乱がニーロの頭を支配しているようだったが、とにもかくにも、話は出来そうでよかった。
「済まないなアルツ、シュネリ。待たせた」
ニーロが混乱しているうちに、先手を打つ。ニーロが暴れだしさえしなければこっちのものだ。
「シュネリ、紹介する。彼がニーロだ。例の作戦に協力してくれることになっている」
「おい、クラフト、これって……」
粗い声を出すニーロを制して、俺は矢継ぎ早に続けた。
「ニーロ、お前にも紹介するよ。彼女がシュネリ。以前話した協力者の一人だ」
有無を言わさぬよう、語気を強める。
「……どういう事か、話してくれるんだろうな、クラフト」
「わかっている。全部話すよ」
どうやらニーロも落ち着いたようだ。俺を睨む目には微かに怒気が含まれていることはわかる。正直、その怒りを無くす事は出来ないだろう。それでも、俺の能力で誤魔化せるはずだ。
「……大変、申し訳ないことをした」
その声に、俺を睨んでいたニーロの目線が逸れる。見ると、シュネリが深々と頭を下げていた。結んだ髪が地面に触れるのではないかと思えるほどだ。
その姿を見るニーロの瞳は冷たい光を放っていた。
「その謝罪は、俺に対してか? それで許すと思っているのか?」
ニーロは明らかに怒っていた。さて、取り繕うのはここからだ。




