◆繋がる想い……そして……の巻◆
こんばんわ、楽しんでいただけましたら嬉しいです。
優雅なシルエットは燦々とそそがれる陽光を浴びて極彩色豊かな神々しい輝きを辺り一面に放っていた。
輝くその箱船はドーム型のとても雄大かつロマン溢れる箱船だった。
これほど巨大な箱船の正体……それは女帝が長い年月をかけて構築した居城そのものだった。
ゆきな・つくし・オリムラによる『千年の計画』が造り出した最高の産物であり女帝の最後のカードをきった証明でもあった。
この箱舟はふだん城としての役割を果たし、その全容をベールで覆い隠す為に巨大な城壁と私設親衛隊トランプの兵隊が厳しい監視していた。
現在の城壁はその意味を失ったために女帝の魔法により粉塵と化し、トランプの兵団はもてる総兵力を監獄島全域で魔女達を失い本能拘束というタガがはずれた執行人と戦っている。
女帝の呼びかけに応じて、この箱船城まで逃げてきている妖怪達がかなりの数が乗り込んでいる。
俺の回りだけでもゲゲゲ愛好家などの間でヒット間違えなしのリアル妖怪大
辞典が作れそうな数がうじゃうじゃと駄弁っている。
妖怪が姦しいというのも不思議な気分だなぁ。
そして、俺もその中の一人として甲板の先端に腰かけて想い巡らせながら監
獄島を眼にやきつけて眺めていた。
先ほど、箱舟に乗り込んだ妖怪達に女帝が発信した情報では、2時間後にガブリエルに魅入られた4人の魔女が肉体と魂の双方がガブリエルに取り込まれて、その人智を超越した魔力によって復活するらしい……って何故、女帝がそのことを知っているのかは俺にとってはミステリーだぞーっ。
ただ、俺はあの女帝を知っている……『兄っち』……そう呼ばれる事がここ最近あったばかりなのだから。
想い悩んでいる……その果てしなく深く……深淵の淵の辺りまで入り込むように悩んでいる……これぞ思春期と言うべきか……俺は燦々と輝く太陽を仰
ぎ見た刹那、グサッ……ぎぁぁぁぁぁぁぁーっ!!
青天の霹靂!! 突然、俺の頭に激痛がぁぁぁぁーっ!
ずぽっとくちばしを抜くとクククッとムカつく笑い声をあげる。
カラスがめいっぱいのドヤ顔を俺に向けてくるぞ。
――お前の仕業かぁぁぁ!――
「どうした……エロ将軍……下半身……露出狂……」
再びクククッと笑うカラス……やはり、どきつい仕置きはしておくべきだーっ!
俺がこっそりハリセンを取り出そうと右手を後ろの袈裟袋に回した瞬間……
大量の蒸気が吹き上がりたちこめる。オリムラはカラスから女性の姿になる。
俺は息をのんだ……恐らく驚き・桃の木・山椒の木ほどの驚愕さが滲み出ていただろう。
――檻村先生――
腰の辺りでふぁっと広がる光沢のある髪に切れ長の瞳、神様が極めて丁寧に創造したと言っても過言ではない端正な顔立ちに理想的に均整がとれたプロポーション……服こそ民族衣装のような地味な衣装だか、見間違えるはずもない。
「ゆうき君……凄く頑張りましたね。この姿が私の本当の姿です。セクシーでしょ♪ 今まで、色々な姿で貴方の目の前に現れてごめんね。だけど興奮したでしょ♪ ……すぐにでもゆうき君を抱きしめたかった……私は先生である以前に貴方の事を心から愛している一人の女だもん……だけど……取り決めたルールがあってね」
ぽむっと檻村先生……いや、オリムラが俺の背中に腕を回して包み込むように抱きついてくる……心が伝わるように、優しく、凄く優しく、女性特有の柔らかな感触と体温が繋がり合うように俺の身体をしっかりと包み込む。
とても懐かしい香りがする。
鼻腔をくすぐる甘く優しい香り……間違えない……感嘆する俺の心、ただ少しだけ……少しだけ気になった……何故、残虐非道悪玉カラスの時と行動ギャップがこんなにあるのだろう……それと『ルール(、、、)』って言葉?
「さて、生き残っていた全ての監獄島の住人が乗り込んだみたいですね」と
俺の思考を遮るようにオリムラは小さく耳元で囁くと俺の顎に妖艶に大人の魅力たっぷりに指をはわせて破顔する。
その悪意のない無邪気な微笑みのまま俺の唇は柔らかなもう一つの唇と重なり合った。
ぷしゅー!
大人のお、お姉さまの魅力を存分に正面から受けてしまって血流が良くなりすぎてトマトよりも真っ赤に赤面する俺。
体内温度は血液沸点をせ上回る五千度はあったかもしれない。
どれ程の時間がたったのかはっきりわからない程にとろけてしまっている
俺……あまりの突飛な出来事に脳内小人達が熱中症で倒れだすほど、ぐんぐ
ん体温が上がってします……まさに湯でたこ状態である。
「この女カラスーっ、ダーリンから離れるのじゃーっ」
バコッ――
完全に油断していた……突然――俺の腹部に強烈な回し蹴りが炸裂する!
あまりの勢いに5メートルは吹っ飛んでしまった。
何が起こったのだーっ!? ――痛むわき腹をナゼナゼしながら身体を起こ
すと正面でオリムラと……柳眉を逆立たせたつくし? らしき少女が口論となっている。
つくしにしては煤ぼけていない……それに今の蹴りは魔力が含まれていたぞ。
「ダーリンに何をするのじゃ! この、吸血鬼! あの日、あの時、あの場所での我ら誓い、よもや忘れたわけではないよのぉ」
プリプリとじたんだを踏みながら全身をバタバタさせてプンスカと怒っている。
それに残念な程の絶壁な胸……つくしさん決定ですーっ!
ふぅぅぅと溜息をついた俺に包帯がグルグル巻きの手が差し出された。
「あの二人はあれでかなり仲が良いのですよ。だから、兄っちも私のラブラブチューになりましょう」
手をとり立ち上がると純白の包帯でぐるぐる巻きの女帝がとても懐かしむような雰囲気で俺に寄り添ってきた。
女帝が現れたと言うことで、俺の回りには女帝を恐れている妖怪達がクモの子を散らすようにすっと逃げて行った。
すっかり広い広場になってしまいましたぁぁぁ。
「ふふっ、朕は嫌われている存在ですので……」
憐憫な想いが少しだけでたのだろう……寂しそうに呟いた。
――もしかして――
俺はその時……心に引っかかっていた疑問が確信に変わっていく。
「おまえ、もしかしてゆきな?」
その問いにコクリっと頷き、女帝は俺の肩にもたれかかってきた。
「兄っちの想像どおりです……さすが兄っち!! 思考能力抜群ですね。だだ、朕もあそこの二人もこの世界の……いえ、この次元の住人ではありません……時間軸の分岐でずれている何処かの世界のゆきなです……ただ、朕の世界は……もう、滅んでしまいましたが……」
肩を落としながらしなだれかかるゆきな。
俺は頭を抱えて包帯ごしに思いっきり愛でてみる。
豚のかく煮よりも甘くとろ~んとなるゆきなの瞳、陶酔しきっている……はっ、こちらの状況に気づいた二人が、黒いオーラを滲ませて物凄い剣幕でやってきますよぉーっ!
「「ゆーきーなぁぁぁぁぁ」」
二人揃って殺意成分三割増しの声をあげたぞーっ! ……しかたないなぁと言う面持ちで立ち上がった包帯グルグル巻きのゆきなは名残惜しそうに俺を見る。
ちょうどそんな中……
ゴゴゴゴゴッ――
巨大なドーム型の箱舟がネオングリーンのオーロラに包まれた空に飛び立っていく。
俺は食い入るように空を……島を……監獄島を眺めた……そして、いつの間にか次元の狭間が閉まるように、静かに穿っていた空間がネオングリーンのオーロラと共に消えていった。
そんな、俺の隣にオリムラが腰を下ろした。
ふっと瞳をあげると、グルグル巻きの女帝と真っ白な(煤まみれていない)つくしの姿がない……あれほどワンワン吠えていたのに……俺の怪訝な表情を察したのかオリムラは左手で俺の前髪をかきあげながら少し寂しそうな面持ちを浮かべた。
「あの二人は……こちらの世界の二人と融合するためにそれぞれどっかに行ってしまいました」
――まだ、心が繋がっているのか――
俺は不意に心で語りかけてみた、するとオリムラはにっこりと微笑みながら頷く。
「私はもともと、こちらの世界には存在しないみたいなので……私は私のままです」
雑踏する船内を見渡すと希望に溢れかえっている雰囲気が容易に読みとれた。
そのことに安堵したようにオリムラは『ふふっ』と小さく笑った。
そして、俺に語りかけるように、大切に言葉を紡いだ。
「ゆうき君、この船はしばらく、時空の狭間を旅します……そして、新たな島を形成するために……ここに居る、皆が幸せになるために、償いの島を創ろうと私達は考えています。ただ、ゆうき君を連れていくわけにはいきません。貴方はこの世界の住人……ご両親もいれば、この時代を生きる使命があります」
とても切ない表情を浮かべた。
俺も心が締め付けられるように凄く切なくなってくる。
「さようならは言いません……ゆうき君とは魂で繋がっています……だから、必ず再び邂逅します。幾千幾万の距離や次元があろうとも必ず巡り合えます」
俺はオリムラにぐっと抱きしめられた。
悲しみで打ち震える身体が小刻みに振動して俺に伝播していく。
そして耳元で呟くように優しく愛が溢れだすような声で哀しい呪文を唱えていく。
深い……とても深い眠気が突然俺を襲い……身体に力が入らなくなり……やがて焦点も合わなくなってくる。
俺は最後にニッコリと微笑んだ……力のない声で「ありがとう」と呟いた……ボンヤリとだがオリムラが物凄く泣いていた映像が瞳から脳裏に、少し心細いが俺は深い眠りについた。
もう、どうする事もできない……俺はただ、深い微睡みに落ちていく。
いかがでしたか?
明日で最終回です。
最後までお付き合いしてくださいね(☆∀☆)




