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圭太君へ 一九九六年四月一七日
ただ素直にしてたって自由にはなれないさ。素直に心を開けば手に入る自由もあるし、それで自分の要求やのぞみが通ることもあるだろうけれど、世間は、人が心を開いた内に入り込み、その心の中にくもの巣のようになあみをはりめぐらせる、人をからめ取るわなでもあるからね。つまり自分を出せば「自分」は世間に組み込まれて、いつの間にか、それまで自分がのぞんでいた方向とはちがう方向に世間の波に運ばれていくのさ。心の一部を自分だけのものにしておくのも自由になる一つの方法さ。
仁以千絵より




