表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/25

第二部・第24話(最終話):断罪の逆転――本物の聖女と、偽りの光に裁きを

王都・王城正殿“満月の間”。


今夜、この国の未来が決まる。

王族、貴族、聖職者、民衆代表が一堂に集められたこの場は、

かつてクラリスが「断罪」された、あの日と同じ舞台――


だが、今日の主役は違う。


玉座の下、証言台に立つのはクラリス・エルヴェール。

その隣には、眠りから目覚めた少女――本物の聖女、エレーナ・ルクレール。


静寂の中で、司祭が口を開いた。


「これより、“聖女リリアナ・セラフィーナ”に関する疑義申し立ての公開審問を開始します」


その宣言と共に、場に重苦しい空気が漂う。


やがて、奥の扉が開き、

白金の衣を纏った“聖女”が、静かに姿を現した。


――リリアナ・セラフィーナ。


かつて、クラリスを断罪の場に立たせた“神の寵児”。

今、その瞳に宿るのは、冷たい自信と――わずかな動揺。


「お久しぶりですね、クラリス様。……また会えて、嬉しく思います」


「私もよ。まさか、こんな形になるなんて思ってなかったけれど」


二人の視線が交差する。

誰よりも近く、誰よりも遠い関係だった“光”と“影”。


審問は、粛々と進む。


クラリスは証拠として、エレーナに関する記録の断片と、封印施設の調査結果を提示。

さらに、エレーナ本人が証言台に立つ。


「私は、かつて“聖泉の共鳴者”として選ばれた者です。……そして、“加護の移譲”という名の儀式で、意識を奪われ、存在を消されました」


会場がざわめく。


だが、リリアナは表情を変えず、微笑みながら口を開いた。


「確かに彼女は適性がありました。しかし、精神が極度に不安定で、“神の加護”を持つには危険でした」


「それを判断するのは、貴女じゃないわ」


クラリスが冷たく切り返す。


「貴女は“神託”を偽り、自分に都合のいいように制度を捻じ曲げた。

本物の聖女を封じ、自らの地位を築くために」


「……私が偽りだというのですか?」


「ええ」


その瞬間――クラリスは、用意していた最後の証拠を取り出す。


「こちらは、かつて“神託刻印”として選ばれし者にのみ与えられた、正規の印章です」


エレーナの胸元には、“月の刻印”が淡く光っていた。


そして、リリアナの衣にある印章は――明らかに模造されたものであることが、

魔導測定により暴かれた。


「……っ」


「貴女の“加護”は確かに強い。でもそれは“奪った力”でしかない」


クラリスの声は、堂々と響いた。


「私は、かつて断罪された。でも今は、“偽りの断罪”に抗い、“真実”を叫ぶ権利を手に入れた」


「だからこそ、今この場で問います。

リリアナ・セラフィーナ。貴女は、神に選ばれし聖女なのですか?」


沈黙が落ちる。


長い、長い沈黙。


そして――リリアナの口から、低い声が漏れた。


「……ええ、私は……聖女です」


だが、その声は震えていた。


誰もが、気づいた。


その言葉が、“偽り”であると。


その瞬間、クラリスはゆっくりと前へ出て言った。


「王国に告げます。

この場にいる少女こそ、“本物の聖女”エレーナ・ルクレール。

そして、リリアナ嬢は――加護を奪い、地位を偽り、王と民を欺いた“詐称者”です」


その言葉に、王族の長が立ち上がった。


「リリアナ・セラフィーナ、即刻その身柄を拘束し、神殿調査局にて厳正に調査を行う。

加護の出所、封印、全てを余が直に裁く」


「……っ、やめて……お願い……」


リリアナは、はじめて“恐怖”に顔を歪めた。


その姿はもう、誰の光でもなかった。


ただ一人の少女が、光に嫉妬し、全てを奪ってしまった――哀れな影にすぎなかった。


審問の後。


王都には静かな月が昇っていた。


「……終わったのね」


エレーナが、小さく微笑む。


「ううん。これからよ。貴女が“本物の光”として、もう一度歩き出す。

私はその傍で、今度こそ“支える側”でいるわ」


「クラリス様……」


エレーナがそっと手を重ねる。


その隣では、ユーリアが頭を垂れていた。


「……ごめんなさい。何もかも、取り返しのつかないことをしてしまった」


「それでもあなたは、真実を見てくれた」


「それだけで、私はもう“ひとりじゃない”とわかるの」


そして――


「……クラリス様」


カインが静かに現れる。


「影は、いつでもあなたの隣におります。これからも」


クラリスは、そっと微笑んだ。


「……ありがとう、カイン」


(私は、奪われて、傷ついて、それでも進んできた)


(でも今は――)


(光も影も、偽りも真実も、すべてを乗り越えて)


“本物の聖女”が、ここに還ってきた。


――そして、“断罪された令嬢”は、その光に選ばれるのだった。


(第二部・完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ