017 予定
あれからわずか30分の突貫作業で作成された動画は、公式の動画をおさえて500万回も再生されることとなった。
解説として参加させてもらったものの、申し訳ないことに肝心の解説は全くできていない。世間的にはおかしいということは薄々感じてはいるものの、俺にとっては当然のことをしているだけなのだ。相手の攻撃に反応できるから回避する。回避ができれば、あとはカウンターをする。それだけのこと。
―――予測しているってことにした方が良かったかな?
イメージ的に格好良いとは思うが、やはり嘘をつくのはいかがなものだろう。それにFPSというゲームに精通しているわけでもないので、余計なことをすると必ずぼろが出る。俺みたいにぼろが出やすい人間は、正直に生きた方が得…というか、正直に生きていくしかないと思う。
「大樹!おめでとう!いやー、知り合いから聞いたよ。動画もすごい再生されてるんだって。」
東のおっちゃんだ。
「いや…まさか本当に優勝できるとは思ってなかったですけど…。ゲーム機も手に入ったし、ありがとうございました。」
おっちゃんが紹介してくれていなかったら、俺は今もゲーム機を探す旅を続けていたと思う。旅、旅とは言っているが、要するに電気屋さん巡りとネットの通販サイト巡り。苦痛なわけではなかったが、そんなに楽しいことでもなかった。
「ということは全国大会にも出るってことかい?」
「はい。来月のはじめにあるそうです。今度の優勝賞品は、賞品じゃなくて賞金らしいです。」
「え!?ゲームの大会でお金がもらえるのかい?すごい時代になったな…。」
「本当ですよね…。びっくりです。俊に言ったら普通だよって言われたんですけど…。」
俺もおっちゃんと同じ感覚だ。ゲーム機はまだわかるのだが、まさか賞金がもらえるとは思っていなかった。しかも想像したよりも桁が2つくらい多かったのだ。それこそ平均年収を軽くこえるくらいの額。
お金に興味がないというのは嘘になるが、拝金思想の持ち主というわけでもない。もし万が一、優勝することがあったら、まあ、大学にいったときの生活費にでもあてよう。
「そうそう、うちのお店にもFPSを入れることになったんだ。良かったら遊んでいってよ。…ところで、今日、俊君は?」
珍しく1人でゲームセンターにいる俺。別に俊と何かあったとかそういうわけではない。俊は今日、デートなのだ。後から聞いた話なのだが、実は俺の地方大会の日、本当はデートの予定があったらしい。しかし、再生回数にめがくらんだ俊は、完全に予定をすっぽかした。
―――珍しく怒られてたよな…。
なんだか申し訳ない気持ちになるが、よく考えてみると俺に非はない。まあ、あんなに青い顔をした俊を見たのも久しぶりだったのだが。




