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保健室の攻防

m(__)m…。

ごめんなさい。

速く書けません。


鼻腔を擽る匂いに意識が半分だけ覚醒する。


まだ身体は眠りに着いたままだ。


…ここは…?


考える事もスローになっているらしく、暫くして記憶が甦って来た。


その記憶に苦味を感じ、意識内でしかめっ面になる。


あの教室でコロッと意識を手放してしまった…。


情けない…非常に情けない…。


気持ちを切り替える為に少し深い呼吸を数回繰り返す。


ひとまず自分の感情は置いておいて、現状の確認が優先だ。


匂いや状況で場所が分かった。


どうやら保健室に運ばれたらしい。


まぁ、正しい判断だな。


耳を澄ますと聞こえてくる規則正しい寝息。


結構、近い。


って事は、俺はリタの傍に置かれている。


生徒を守る結界が厳重に張られた学舎と、俺がリタに掛けている守護の魔法、その両方が正しく機能している。


警戒する必要は無かったようだ…。


正直、自身の不甲斐なさには落胆しているが、リタの身の安全が確認出来ると、少なからず心が軽くなった。


リタの寝息に誘われ睡魔が押し寄せてくる。


うつらうつらとした微睡みの状態が気持ちいい。


眠りの世界にこのまま溶け込もうか という頃に突如として人の気配を感じ取った。


一気に覚醒する。


直ぐに目を開くと、光が瞳を射してかなり眩い。


眩しさに目をすがめるが視界はクリアに見てとれる。


その視界のど真ん中に写る間抜けた驚き顔の人物。


目を覚ますとは思わなかったのだろう、微妙な姿勢で停止している。


その右手には太いペン、左手にはカメラを持っている彼を見て眉間に皺を寄せた。



「何て顔をするんだ…、失礼だよ、心配して様子を見に来た僕に対して。」



声音は言葉通り、少々憤慨しているように感じるが、その表情は明らかに面白がっている。


声だけ聞いていたら騙されるだろう。



「手に光マジックとマルチカメラ…プラス、その表情。どうしたらお前の言葉を信じられるか教えて欲しい位だな…。」



光マジックは空間に光で描く物だ。


ほぼ1時間位で自然消滅するが専用の消ゴム(?)も存在している。


なかなか便利な物だが、学生にとっては楽しい悪戯グッズといったところだ。



「本当に心配のしがいが無いな…。レンは、もう少し愛嬌を振り撒いたほうが良い。」



光マジックとマルチカメラを手にしたまま器用に腕組みをして、こちらを見下す。


その仕草に他意が有るのか無いのか分からないが無性に腹が立つ!


キッ!!と目の前にいる、ラインを睨み付けた。



「大きなお世話だ!!」



声を張り上げ牙を剥き出し威嚇。


そんな俺の姿を、何故かラインは左手に持っているマルチカメラで撮影を行う。


そして、やたら楽しそうだ…。


「また、連れない事を言う…、僕はこんなにも君の事が気になっていると言うのに!!!」


サラサラの髪をわざとらしく乱し、どこぞの姫君へ語るようなセリフを並べ立てる。


片膝を着き胸に手を当て、さも心が痛いと大袈裟なジェスチャーで示す。


うん。


これは、立派な嫌がらせだな。


ラインの行動を一際冷めた眼差しで見ながら、俺は、さて、どうしたもんかと考えていた。


所謂、このまま放置するのも…うざそうで嫌だなって事だ。


ひとまず、爪研ぎ板がわりにでもしとくか…。


そう決めると最近はずっと仕舞いぱなしにしていた自前の爪をニョキっと表に出した。


いざ飛び掛からんとして爪の先が足元に敷かれている布に引っ掛かる。


おうっ!!とっとと。


バランスを崩して出鼻を挫かれた。


今度は布に引っ掛からないように爪の出し具合を調整。


準備万端。


前足を浮かせ、後ろ足に力を入れ……られず硬直。


再び行動を止められた俺の前にラインが恭しく差し出したマルチカメラ……。


再生ボタンを押されたカメラの上に、立体映像が写し出されている。



「!!!!!なっ!!」



それはグレーがかった黒い猫の何枚かの映像。


一目で分かる…すべて俺だ!


スライドショーの設定がされているのか、次から次へと映像が変わっていく。


その殆どは寝姿で、丸まっていたり、大の字だったり、絶対苦しいだろう!?って言いたくなるような格好だったりする。


俺の周囲には輝く光文字がイロイロ…。


ラインが書いたのは明らかだ、光マジックを持ってたからな…何となく予想はしてたさ。


だが、書かれる前に起きたはずだった…。


恨めしい視線をラインに送ると、より一層の輝きをもった笑顔を向けてくる。


してやられた感が増大だ!!



「僕はこの辺りの映像が良いと思うよ。レンの気持ちが良く現れていらるからね。」



なっ・なんだ!?!!!


言葉の後に写し出されたのは、威嚇をしている姿にショッキングピンクの光文字で、『素直に成れないボクでごめんね…。』

と書いてある。


それを目にした途端に尻尾の先から頭に向けて何かが通って行った。


ブルッと体を振るわせる。


落ち着け…落ち着くんだ俺は何も負けて無いぞ。


何の勝ち負けを競っているのか?


実は何も競ってなどいないが、…まぁ、細かい事は気にすんな!


俺は大人だ…俺は大人だっと繰り返し思い、ササクレだった心を落ち着かせた。



「おぉ〜!凄いな!まるでポストカードだよ。」



大丈夫だ、不自然じゃない…。


子供のする事に、いちいち取り乱したりしない。


これは大人の余裕ある態度だ。


ふふんっと軽く鼻を鳴らし、笑顔でラインを見上げる。


そこで真面目な顔をしているラインを見てしまい……なんだか、負けた気がした…。



「ポストカードか…。」


ラインはカメラを自動再生にしたまま、適当な棚の上に置き、ポストカード…、と呟きながらグルグルと歩き回っている。


顎の辺りに左手を添えて考えている風情だ。


突然の豹変に、ちょっと付いていけない感じの俺だったりするんだが…。


うぅ~ん…。


考え事中のラインに何を言っても聞いてない。


無駄って事だ。


拍子抜けになった感があるが、穏やかになったんだ、良しとしよう!


俺は一人ウンウンっと頷き、改めて部屋の中に視線を巡らせた。


俺の直ぐ隣にリタがいる。


まだ、スヤスヤと心地良い眠りに着いていた。


あの騒ぎでも起きなかったか…。



「まだ眠っておられるのですね。」



背後から聞こえた声は、警戒する必要の無い、見知った相手のもの。



「ああ。寝てる。」



眠るリタを見続け、振り返る動作さえ起こさない。


「環境が変わって、一月だ。ちょうど無理が体に現れ始める頃だよ。」



返した言葉に背後の人物が頷く気配が伝わって来た。



歩き回っているラインの動きも緩やかに変化してきた。


自分の中で、何かを定めつつあるのだろう…。


視線をリタから外し、振り返った先に居たのは、予想通りの人物。



「行くか…。」



「えっ…?」



脈絡も無い言葉に戸惑われたようだ。


俺は微妙なしかめっ面をして見せる。



「俺に話があるんだろ?ここで話せば、リタの邪魔になる。場所を変えよう。」



まだ何も話していないにも関わらず、用件を察した事に、相手は幾らかの驚きを感じたようだ。


それは直ぐ様微笑みで隠されたが…。



「そうですわね。レン様の仰る通りですわ。場所を変えましょう。」



「何処か話をするに良い場所は無いか?ケイト。」


ちょっとだけ、思案顔をしたケイトは、直ぐに答えを見つけ再び言葉を紡ぐ。



「では、生徒会室を使いましょう。」



ケイトの提案に俺は頷き疑問を返す。



「俺は構わないが、良いのか?生徒会室使ってるんだろう?

他のメンバーを追い出す事になるぞ。」



クスっと小悪魔めいた笑みを浮かべたケイトが、そっとラインを指差す。


「そう言う事は、生徒会長の彼が引き受けて下さいますわ。」



あぁ、なるほど、面倒事は強制的に彼にか…。


ちょっと気の毒だな…ラインの奴。


同情の眼差しでラインを見ていると、思案していた事に一定の決断をしたのか、普段の彼の様子に戻っていた。



「何だか知らんが、もう良いのか?」



首を傾け見上げながら問いかける。


声を掛けられ、俺に視線を向けたラインが、何故か呆れ顔を見せる。


しかし直ぐに含みのあるニタっとした笑顔に切り替えた。



「ああ。来年度分の生徒会予算の件で悩んでいたんだ。」



話と表情が合わない…。


生徒会予算と聞いてラインを見つめるケイト。


自身も副会長の位置にいるから気になったようだ。



「何かよろしい案がございまして?」



うちの学舎は世間一般の学校と呼ばれる機関に比べて少々変色ぎみだ。


勿論、魔法を学ぶと言う大前提を元にした故の事だが。


その一つとして、部活や委員会の予算だが、その活動に従事する者達で賄わなくてはいけない。


年度末に来年度分の活動予算をどの位確保出来たか学舎に報告をし次年度の活動許可を取らないとならない。

それは学舎卒業後、直ぐに魔法師として活動する生徒達に、自身の行動に責任を持つという事を学ばせる為。


っと学舎は説明しているが、俺は違うと思っている。


全く嘘って訳では無いのだろうが、8割方の理由は金が無いって事だろう。


国公立であろうが、貴族の子女が学ぶ学舎であろうが、魔法を教えるという事には金がかかるのだ。


道具や材料などは、ほぼ使い捨てになってしまうのが現状だ。


いくら有っても足りるはずがない。


まぁ、そんな訳で皆、頭を悩ませているんだ。


して、生徒会だけ特別、等と言う事もあるはずもなく、皆と同じく頭を悩ませる問題になっている。


つまり俺にチョッカイ掛けていたのは、手軽な気分転換だったって事だ…。


はぁ~…。


溜め息を吐き出した俺はラインに持ち上げられた。


目の位置が同じ高さになる。



「レン、君のお陰で来年度予算はどうにか出来そうだよ。ありがとう。」



この言葉を伝える為に同じ目線にしたのか…。


何とも気恥ずかしいが、まぁ、たまには良いよな。



「それで、何をなさいますの?」



ケイトが疑問を投げ掛ける。


確かに…俺のお陰でって言っていたが内容は不明だ。


さっきはポストカードって呟いていただけだったしな。


ケイトをかえりみたラインは、ごく当然の事という風情で返事をする。


「ザックリと言えば、生徒会グッズを作って 販売って感じだね。」



売れない…絶対売れない。



「考え直せ…ライン…、あの只の丸の中に生の字が書かれただけの生徒会グッズなど誰が買う!!?」


そんな物を作ってしまったら来年度予算どころか、本年度予算だって大変な事になる。


一緒にラインを止めてくれるだろうケイトに目を向けた。


驚いた事に、今度は彼女が思案顔だ。


どう考えても、これはボツ案だろー!!



「今までと同じ生徒会グッズを作るわけないだろう!?あれでは売れないさ!!Newバージョンを作るのだよ。」



得意満面の顔で、どうだ!!っとばかりに言い放つライン。



「新しく作る……ですか、メインの題材はどうなさいますの?」



ケイトの言葉にラインは持ち上げたままの俺を前に着き出す。



ん?何だ?



「これを生徒会マスコットにしようと思う。」



付出された俺とケイトの視線が合う。


一瞬後に驚きが訪れた。



「はぁ!!!?」



「レン様をマスコットに…良ろしいかもしれませんわね。」



って、よろしく無いぞ!!!


俺とは対照に肯定的なケイトの言葉に頭を抱えるしかない。



「待て!!お前ら!!それこそ考え直せ!!!!」



「おや?ケイト嬢は賛成してくれるんだね。」



発した言葉はすげなくスルー…。



「生徒会にとってプラスになる事でしたら是非などございませんわ。」



ケイトにまでスルーされた…。



「俺は嫌だ!この話はお断りだ!!だから他の事を考えろ!」



ジタバタと足を動かすが意味がない。


空中では連続空振りしてるだけ…。



「皆への説明はライン様にお任せいたします。」



珍しく天使の微笑みをラインに向けるケイト。



「分かった。もう少し立案を具体的にしてから説明する。」



……………俺の意志は?



「あまり時間がございません、早めにお願いしますね。」



………俺の…意見は?



「2・3日中には終わらせておくよ。」



…どこ?



「では、レン様。生徒会室に向かいましょう。リタ様の安らぎの邪魔ですわ。」



誰か、こいつらを止めてくれ………。



力無く俯く俺にケイトが困った顔を見せる。



「移動する。移動するよ…だから、その困り顔はやめろって…。」



下におろせとラインに要求。


イゴイゴと動く俺は、そっと床に降ろされた。


ぐぐぅ~っと身体を伸ばし筋を解す。



「じゃあ、行くぞ!」



幾らか先に進むが、後が来ていない。


保健室のドアの前で振り返ると、困ったから困惑に変化した表情のケイトとその奥で、ニシシっと笑い続けているライン。


意を決し、近づいて来たケイトが、そっと指摘してきた。



「その前に、レンのこだわりでしたら、私が口出しする事では無いのでしょうが…。」



言い難そうな顔…。



「そのまま保健室を出るのは…お勧めできません。ご一緒に歩くのは遠慮申し上げたいところですわ……………。」



なんとも辛辣な言葉…。


気まずく感じていると、ケイトは素早い動作で俺と自分の間に魔方陣を刻む。


指輪の石に淡い光が灯っている。


魔方陣を指差し言葉を奏でた。



「ウォーター・ミラー!」



言葉と共に水鏡が出現。


綺麗な楕円形に整った水鏡、きちんとした魔力のコントロールが出来ていないとこうは成らない。



「さぁ、レン様。ご自身の姿を確認して下さいませ。」



俺は水鏡の前に寄り姿が写るのを暫し待った。


俺を認識した水鏡が映像を結び出す。



「!!!!!!!!」



驚き顔の猫の周りには、ショッキングピンクの光マジックの文字が…!


あの写真映像そのままに写っていた。



「・・・ラ、イ、ン・・・!!!」



へらぁ~っとした誤魔化し笑顔を振り撒くラインに詰め寄る。



「いやぁ~、だって君、消ゴムで消す前に凄い勢いで起きちゃたじゃないか!?」



なぁにぃ~!!俺のセイにするかぁ!?



「そのまま放置するな!馬鹿者!!」



髪をクシャっと掻いたラインが、またあの呆れ顔を向けて来た。


何だと言うんだ、全く。


「消すタイミングが無くてな、そのうち自分でも気づくだろうと思ったんだが…。」



ジィーっと見つめられた。



「あまりにも気付かないから、面倒くさくなったってところだ。」



平然と言いのけやがった。


フルフルと全身を怒りに振るわせた俺は、爪をマックスまで表に出しきった。


身体全体をバネのようにしならせて最高のジャンプを披露する。



「うわあぁ!!レン、やめ、やめろー!!!」



ラインに向けて繰り出した左右の猫パンチは猛スピードで獲物に襲いかかった。



「生徒会マスコットなんて知るかー!!もぉ絶対、協力なんかするもんか!!!」



繰り出した攻撃は、すべてがクリーンヒットになった・・・。


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