エピローグ
ごめん、鷹也。
僕は、隣で眠っている鷹也の胸に額をこすりつけて謝った。
僕が悪いんだと思う。
鷹也を苦しめているのかと思うとすごく嫌な気持ちになる。けど、鷹也を好きな気持ちを抑えることができない。
名取さんが僕に会いに来た時、最初、鷹也の恋人なのかと思って心臓が止まりそうなほど驚いた。
けどそうじゃなかった。
名取さんは僕のことをうらやましいよ、と言ったのだ。
その時、ああ、この人は鷹也のことが好きなんだと思った。鷹也は気付いていないみたいだけど。
もし、気付いたらどうなるんだろう。僕みたいな子供は相手にされない気がする。どう考えても、名取さんみたいな綺麗な人の方がいい気がした。
鷹也を取られたくない。
名取さんと鷹也はとても仲が良いみたいで、僕は嫉妬した。けれど、名取さんはすごく優しい人でいろいろアドバイスもしてくれた。
彼は、僕を見ていると、自分を思い出すと言った。
具体的な事は教えてくれなかったけど、僕くらいの年にすごく悩んで苦しかったらしい。けど、相談できる人がいなかったんだ、とも教えてくれた。
できるなら、女の子を好きになった方が楽だよ、と名取さんは言った。
それから柔道部に入ってタイミングよく女の子に告白されたけど、ずっと鷹也のことが頭から離れなかった。
どうして、鷹也はそばにいないんだろう。
どうして家を出て行ってしまったんだろう。
未成年だとダメだと言う理由もよく分からない。
今、一か月ぶりに鷹也が家に帰って来てくれて、一緒のベッドで眠っている。せっかくそばにいるから、寝ないで顔を眺めていたらかえって目が冴えてしまった。
鷹也はぐっすりと眠っているようだ。
やっと16歳になった。
恋愛に年の差ってやっぱり気になるよね。
「はあ…」
大きくため息をつくと、鷹也がもぞもぞと動いた。
「どした? 眠れないのか?」
低い声で囁かれ、僕はどきっとした。
「ううん、何でもない」
恥ずかしくて俯いた。鷹也の体は温かい。
「早く寝ろよ、明日も早いんだろ」
「うん」
強引に目を閉じる。何となく鷹也が見ているような気がした。目を開けてがっかりする。鷹也は目を閉じていた。
「鷹也」
名前を呼んでみると、すぐに目が開いた。
「ん?」
鷹也の声も顔も全部大好きだ。
「たまに家に帰って来てよ」
「そうだな…」
鷹也は苦笑して僕を抱き寄せた。
「俺さ、翠がいないとダメなんだよ」
「え?」
「偉そうなこと言ってるけど、さ。信じろよ」
「僕もLINEとか電話じゃなくて、鷹也の顔を見ていたい」
「俺も同じだよ」
お互い、離れて苦しかったのだと思う。
「鷹也…」
僕が熱っぽい声で囁くと、鷹也がぎくりとした顔で少し体を離した。
「いいか、何度も言うが、俺は…」
「25歳、僕は16歳」
「そうだ」
「キスくらいはいいんでしょ?」
仕方ないな、と言いつつ、鷹也がうれしそうに笑う。
素直な鷹也が大好きだ。
僕は、絶対に別れる気はないのだから。
鷹也の手を握りしめて、こっそりと誓った。




