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それから先──

 菫という新しい家族を迎え、その数年後に子供を授かった事は世界にとって大きなニュースとなった。上皇陛下自らが祝いの言葉を述べられ、お祭り騒ぎとなってしまったのである。男の子であった子供には祐樹という名が与えられる。


 子育てにはフルーレ、フェルミア、沙耶も積極的に参加して菫の負担を減らした。更にレスター、アルミア、琴音も祐樹の事を可愛がった。そのため祐樹は寂しい思いをすることなく、家族の愛を受けて立派な人間へと育つことになるのは先の話──


 一方で光は総理の椅子を降りた後も、相談役とガーディアンズの一員としての仕事に精を出していた。だが、流石に総理であった時より忙しさは下であり、家族団欒をする時間は十分にあった。そのため祐樹の成長をそばで見続けることが出来た。そんな中、またしても神々の試練が世界に襲い掛かってきた。


 しかし、これをガーディアンズは1人の犠牲も出さずに完全撃退。ソウルガーディアンとなっている大和と長門も健在で、大きく活躍した。更に各国の機体も大きく強化されており、過去に苦戦した超大型隕石でさえも今は10機いれば難なく破壊して見せるだけの力を手に入れていた。


 とはいっても、一手間違えれば簡単に死ぬ戦場であることに変わりはなく、今回1人の被害も出さずに勝利を挙げたのはガーディアンズ全体の統率力と積み重ねてきた訓練を生かしたことが大きい。どんなに機体が優秀になっても、パイロットがそれを生かせなければ全く意味が無い。そのことを皆は魂によく刻み込んでいる。


 ガーディアンズに就任する時に、パイロットは誰一人例外なく一番被害が大きかった最初の作戦の記録を必ず見せられることになっている。いくら機体が改良、進化していてもそうなる可能性は常にあると言う事を教えられるのである。それを見せられた後に、お前たちは訓練する時間が十分にある。こうならぬように必死で訓練を積み重ねろと言われるのだ。


 一方で、その映像でどうしても光が駆る神威参特式の特殊性もまたはっきり認識されてしまう。その為、神威参特式が整備されている時には、見学に来るガーディアン候補生の数は非常に多い。そしてあこがれを持ってしまう。


 事実、ガーディアンズに所属する人間で一定の結果を出した場合、機体のカスタマイズが許されるのだが……武器を草薙の太刀、八咫鏡、八尺瓊勾玉のどれかを模した形にするパイロットは非常に多い。


 その様な感じで、光の存在感は薄れる事はないまま月日は流れる。いくら寿命が大幅に延びたとはいえ流石に相応の月日が流れれば光の髪の毛には白いものが混じり始めるが、肉体の方はまだまだ元気な光はでしゃばり過ぎないように注意しながら日々の仕事と、家族との団欒を楽しむ健康的な日々を送っていた。


 子供達も自分の道を歩き、家に帰ってくることは少なくなっていった。まだ結婚したい相手が見つかったので挨拶に~という話は聞こえてこないが、それもまあいつかはやってくるだろう。その時は祝福するだけである──なんてことを思いながら、光はフルーレ、フェルミア、沙耶、菫の4人と一緒に縁側でお茶を楽しんでいた。この日は完全な休みだったのだ。


「しかし、ここまでよく来れたなと今更ながらに思うな」


 真っ青で雲一つない空を見上げながら、光はぽつりとつぶやいた。いまだに地球にいた時の記憶は定期的に頭によぎってくる。そして、あの時自分は本当は過労で死んでおり、ここはその後の夢を見ているだけの状態なのではないかといつも思ってしまうのだ。


「色々ありましたね……ええ、本当に。戦いも多くありましたし、別れもありました。でも、私達はやり遂げたからこそ、今はこうして穏やかにしていられるのです」


 そんな光に微笑みながらフルーレが声をかける。


「ふふ、そうですね。仕事なんかもう数えきれないぐらいいっぱいやりましたものね……ですから、今はこうして穏やかに過ごす時間を持っても決して罪ではありません」


 フェルミアは好みのお茶となったほうじ茶を飲みつつ、フルーレの言葉に続いた。


「うむ、お主様は働きすぎというぐらいに働いてきた。こんな日をむしろもっと持たねばならんぞ? 先日も青二才に泣きつかれてあれこれ骨を折ったそうではないか。本当に、引退が許されん男じゃなぁ、我らの旦那様はの」


 沙耶が言っているのは、先日今の総理大臣がちょっとしたやらかしをしてしまった事への尻拭いである。普通の元総理大臣なら絶対できない事だが、光は例外だ。もっとも、それなりの叱責をして同じ失敗をするなときつく言っておいたのであるが。いくら光と言えど、何度も尻拭いをするのは御免被る。一回ぐらいは仕方がないが、同じ失敗を何度も繰り返すようならば──


「まったく。あのお方はもうちょっと気を引き締めていただきたいところですわね……優秀なのは間違いないのですから、あのうっかりな所をもう少し補佐してくれる人を見つけるなどして欲しい所です」


 年月を重ねて、もはや光に向けるその愛はあまりにも深くなりすぎて測定する事すら憚れるようになった菫がふくれっ面を浮かべていた。今の総理大臣は菫が高校に在籍していた時の同級生であり、その性格はよく知っている。なお、告白された事もあった。もちろん、菫は一刀両断してしまっているのだが。


「ま、あと数年もすれば大丈夫だろう。菫の言う通り、優秀なのは間違いないのだ。後は経験を積むだけだ……未熟な時は、俺みたいな経験者がある程度支えてやればいいのさ」


 そう言って光は微笑んだ。その光の微笑を見て、4人も微笑んだ。


「はあ、私が未熟な時に光様のような方がいらっしゃったらどんなに助かった事か……国の象徴になった初めの時は大変でしたもの」


 なんて事をフェルミアが呟いたとたん、フルーレと沙耶も同感だとばかりにあれこれ失敗したエピソードを語り始める。話が進むうちに、光は内心で(これ俺が聞いていいのか?)と思うエピソードがゴロゴロ出てくる。だが、こういう時の対処法は心得ている。この場限りで忘れるのだ。


「そんな事もあったのか、わらわの方もなぁ」「私もこういう事がありましたよ。本当に先達がもうちょっと支えてくれれば……あの時は聞いてもなるようになるとしか言われなかったので……ちょっと今から父を殴ってきます」


 沙耶の言葉の後に、フルーレがそんな言葉を残して消えた。なお、フルーレの父親であるガリウスは老いてなお盛ん。今でも一流の武人であり、上皇陛下と同じくガーディアンズ入りを果たしてしまっている。なのでフルーレがよほどひどい殴り方をしなければ大丈夫だろうが……


(本当に大丈夫か? まあ、専用の医師も常に控えているしいきなり大問題になる事は無いと思うが──)


 そんな事を考えつつ、内心でガリウスに合掌しておく。まあ、ガリウスも色々とはっちゃけたことをしており、フルーレに負担を掛けた事は一度二度ではないので、多少は殴られてもしょうがないだろう。と言う事にしておかないと心が持たない。そこから更にフェルミアと沙耶が色々なエピソードを話し、光と菫がそれに対する相槌を打っている時にそれは訪れた。


「ひ、光殿! 娘を止めてくれ!」「まだ殴り足りないんですよ! 大人しく殴られなさい! とりあえず1000発!」「死ぬわ! 流石に死ぬ!」


 ガリウスが光の家の庭に現れた直後、フルーレも戻ってきた。フルーレの振り上げた腕を、ガリウスが必死で抑えている状況が目の前で繰り広げられている。光だけでなく、他の全員が一体どういう事? と首を傾げる。


「娘が突然やってきて、過去の話を持ち出して、その時の苦労を今返させてさせてもらいますと言って突如殴りかかってきたんだ! いや、本当にそれらの件は反省しているんだ! だから娘を止めてくれ!」


 普段の歴戦の戦士とした威風堂々とした姿はそこにはなく、ただただ必死で目の前の災難から逃げ出す新兵のような哀れな感じがそこにはあった。ここに、穏やかな時間という物は見事に消し飛んだのである。


「反省しているのでしたら大人しく殴らせなさい! 大丈夫です、死んでも蘇生しますから! 完治させますから! その後にまた殴ります!!」


 フルーレの発言に、ガリウスは悲鳴を上げながら必死でフルーレの腕を押さえ続ける。ここに来てやっと状況を理解した光が、まあまあと仲裁に入る──そんな日々がこれからも続く。これから先、大変な事はたっぷりある。だがそれ以上に手に入れた幸せは前に進む力を与えてくれる。だから光は大丈夫だ、いつか天寿を迎えるその日まで目の輝きを濁らせることなく生きて行ける。


 彼の人生に、あふれるほどの幸があらんことを。

と言う訳で、総理大臣 藤堂 光(旧題そんなに日本が嫌いなら、国ごと地球から出て行ってやる!)はこれでおしまいです。


途中長期のスランプの為、1年以上も更新が止まってしまった事を改めてお詫びいたします。ですがその時に見捨てないでいてくれた方々のお陰で、今こうして完結させる事が叶いました。


実は総理大臣を主人公にした作品は過去に存在し、書籍になっているのですが──

そちらの主人公は可愛い女の子だったんですね。なので、自分ならどうするか? と考えた結果がこの作品と言う事になります。


まあ、目いっぱい無茶苦茶な事を書いた自覚はありますが、逆にそうした世界だからこそ全力でやってしまえ、のノリでやりたい放題させていただきました。


今後は、他の書きかけの再始動がメインになると思います。完全新作の方はストックが全然ないので。


では、そろそろ失礼いたします。長い間お付き合いいただいた皆様ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 無事な完結おめでとうございます そして面白い作品を読ませて頂きありがとうございました
[良い点] 完結お疲れ様です! そして、完結までいってくれたこと、本当にありがとうございます。 復活した時は本当に嬉しくて嬉しくて… 最後まで見届けられて良かったです。 今後も試練は続く世界でしょ…
[一言] 完結おめでとうございます! 素晴らしい作品をありがとうございます。 終わってしまうのはとても寂しいですが光が満足の行く人生を送れてよかったです。 止まられた際に非公開などにせず戻って来てくだ…
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