6月14日
こっちの更新がはかどらない……。
本日は臨時国会が開催されている、が、基本的に国際社会から断絶している今の日本では転移までの物事の確認と、今までの行動による問題を洗い出して、先につなげるぐらいしかやることはなく、野党与党のある程度のやり取りこそあれ基本的にスムーズに進む。 なお、この国会は国民にも放送されている。
そして国会も終盤になったときに総理への質問が発生した。
「首相、この防衛費が10%に増加している理由をお答え願いたい」
いくつかの言い方の違いこそあれ、言っていることに違いはないので一纏めにさせてもらった。 今までの防衛費が0.1%以下だった訳で、あまりに大幅な増大に多くの議員が眉をひそめている。
「光君」
国会議長の声に光は立ち上がり理由を述べ始める。
「それでは多くの方から質問が上がりました防衛費増加の理由を申し上げます。 これは今回限りのことです。 理由ですが、これから12月31日に予定されている転移までに、世界が大人しく我々を送ってくれる可能性が0.1%未満だからです!」
騒がしくなる国会だが、光が手で押さえてくれるように頼むと静かになる。今までの行動で国連の場でも傾き、戦う宣言をしている光に対する国民の支持は非常に高く、国会議員の中にも、ようやく世界に一矢報いた痛快さに光を内心支持している人は多い。
「その戦いが予想される中、我々は異世界から来てくださった方々の庇護の下に居続けていいのでしょうか! 自らの国を守るというのに、他人任せで自分達が立ち上がらなくて良いのでしょうか!? 良い訳がありません! この防衛費は、日本の技術と、異世界から来てくださった方々の魔法能力を融合した防衛兵器の製造のために必要なのです!」
静まり返る国会。 フルーレを始めとした異世界魔法部隊の強力な魔法があれば安泰だ、などと考えている議員も多かったため反論が出来ない。
「私は、異世界から来てくださった皆様方と同等でありたい! そのためには楽しい時は共に笑い、悲しい時はその悲しみを分かち合い、そして! 苦しい時には後ろに下がって庇護を受けるのではなく、横に立ち、共に戦う! そうしなければ同等とは言えないのです!」
バン! と光はつい力が入り机に拳を叩きつけてしまう。
「その為に、異世界から来てくれた彼らの横に並び、戦える防衛兵器をすでに私の命と責任によって製造を行い、そのプロトタイプは完成しています!」
この光の突然の発表を受けて再び騒がしさを増す国会。
「その騒がしいままで結構! 見ていただきましょう!」
そうして国会議員だけではなく、国民全員にKAMUIの存在が正式に発表されたのである。
「人型兵器であり、本当に戦えるのかという疑問がお有りでしょうが、この機体は特別なオプションパーツなどを装着せずとも、どの様な環境であっても戦闘が行なえる機体です! 異世界の方々の高い能力差を我々が埋めるためには汎用兵器であるこの機体のような人型兵器が有用なのです!」
大まかなデータと共に発表されたKAMUIの姿にざわつく国会。
「この一機で世界と戦うのですか?」
との質問が聞こえてきた。
「いいえ、この機体をベースに、専用機1機、量産機30機の生産が予定されています、10%に膨れ上がっている防衛費は基本的に量産される30機のために使われます」
光の返答に、相談を始める各議員。
「パイロットはどうするのですか?」
次の質問に光はこう答える。
「すでにこのKAMUI、そしてもう一機の専用機『鉄』はパイロットが決まっております、量産機は苦しみに耐えてきた自衛隊の中から適正の高い人を80人選抜し、VRと実機を交えて訓練させます」
KAMUIのパイロットは、光陵重化学からすでにトレーニングを積んでいる人間を出すと連絡を受けている。
「そ、それでは、専用機に乗るのはどなたなのです?」
最後の質問に光は答えた。
「当然私です。 私も前に出て戦い、国民の皆様に振り下ろされそうになっている凶刃を絶対に届かせません!」
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当然国会放送が終わった後、国民の話は総理の発言が中心になった。 あの総理ならやりかねない、本当に総理は40代の人間なのか? など色々な言われ方をしながらも、CGなどではなく、れっきとした映像で発表されたKAMUIに注目が集まっている。
「本当にロボットを作っちまったのか!?」
「ネタじゃないの!? え、ガチ!?」
「てか、日本のトップが最前線で戦う宣言……いいのかよ!?」
などと、その日の夜のあらゆる場所で討論が行なわれていた。
「がっはっはっは! この国の総理は面白いのう!」
そう言いつつ酒を飲む異世界からきている魔法部隊のおじいちゃん隊長。
「この国へは助けに来たつもりだったのですが、この展開とは……ですが、私はこの心意気を高く評価しますね」
他の部隊隊長の一人は光を評価している。
「しかし、私達と一緒になんて……本当に戦えるのかしら? 戦えるというのであれば素晴らしいのだけれど……」
こちらの女性隊長は共に戦えるとはあまり思っていないらしい。
「どの道良いじゃねえか! ただ後ろにいて『助けろ助けろ』という奴らよりよっぽど助け甲斐があるじゃねえか」
そう二番隊の隊長が言うと、「それは違いない」と、一つの纏まりを見せた。 二番部隊隊長は更に話を続ける。
「それに、この総理が言っていたことは間違いがねえよ。 本当に色々キナ臭い状況になってきている訳だし、俺達だけじゃちっとまずいかも知れねえって話も上がってたからな、戦ってくれるならそれは良い事だろ?」
魔法部隊の隊長たちは一斉に頷く事で返答する。
「だからこそ、俺はこうやって戦うことを言い切った総理を評価するぜ。 どんな道具を使っても『同等』であるために戦うって宣言はかなり勇気がいることだぜ、そこんとこも分かるだろ?」
ましてや今国の総理は自分達魔法部隊の力を一番近くで見てきている、その上で同等と言った……。
「そういえば、ゴーレムを使える人達が総理のお願いを受けて借り出されて行ったけど、それはこの為だったのね」
その女性隊長の一言に他の部隊長たちも反応した。
「そうか、俺達のそういった部分の技術もコイツに混ぜているのか」
「そうなれば、私達と一緒に戦える能力があるかもしれませんね」
「なるほどね……日本皇国の技術者達もなかなかやるじゃない、面白いわ」
そして魔法部隊の隊長達がKAMUIの能力を知るのは、そう遠いことではなかった。KAMUIの戦いの場はしばらく後に世界から用意されることになる。
筆の進みが遅いのが改善しない(汗)。




