6月6日
総理官邸の総理専用執務室にて、次回国会における準備を進めている光。そこにフルーレがカツカツと足音を立てながらやってきた。
「光様、少々お時間宜しいでしょうか?」
「ああ、構わないぞ、何か問題が発生したか?」
真剣な表情を浮かべて部屋に入ってきた後、こちらへと話しかけてきたフルーレに対し、光も心の奥底で何を言われても良い様にと身構える。
「光様の指示で向かわせたゴーレム技術者から詳しい報告を受けました。 人が乗り込み戦うことが出来る鋼の巨人という、私達の想像を遥かに超えるすさまじい技術を見せていただきました……しかし、なぜです? あれだけの力をなぜ光様は欲したのです?」
光は静かに立ち上がり窓の外を見る。そしてこう切り出した。
「その質問に答える前に……フルーレ、貴方達の部隊はどれぐらいの期間、戦闘や技術の訓練をしているか聞いても良いか?」
この光の質問にフルーレは少々考えながら……
「そうですね……最短60年、平均70年、上位軍人を目指す者ならば100年以上も珍しくありません」
と、フルーレは当たり前のように答えた。
「その時間、そうだな、貴方達にとって軍人を目指す者が訓練をするという100年間、それだけの時間があればこちらの人間は生まれて、育ち、生きて、死ぬには十分な時間なのだ」
この光の返答にフルーレが固まる。
「こちらの寿命までは調べなかったのかな? それとも誰も君に教えなかったのかな? ともかく、あと50年もすればフルーレは美しいまま、いやもっと美しくなるのかもしれないが、私はもう生きてはいまい……寿命でね」
光は窓の外を見ながら静かに話を続ける。
「君達の戦いは魔法があるから強いんじゃあない。 魔法はあくまで下地であり、長いしっかりとした訓練があってこその強さだと予想していた。 まさか100年間も訓練をしていることもあるという事にはさすがに驚いたがね」
軽くコーヒーを飲みつつ椅子に座りなおす光。
「そんな君達の横に我々が並ぶには時間が明らかに足りない。 だが、技術ならば別だ。 2000年以上この国の血と魂として受け継がれてきた技術力ならば、君達の横に並ぶことが可能だ。 鋼の巨人のような力を求めた理由の一つは、君達と対等に横に並び立つためだった」
フルーレが硬直から解放されたのか、バン! と大きな音を立てて両手を机に叩きつける。
「我々は貴方達を見下すような真似はしていませんよ!」
だが、光はそんなフルーレの意見をさらっと受け流す。
「君達はそうかもしれない。 だが、横に並ぶ、つまりお互いが対等である為には楽しい時は共に笑顔で語らい、苦しい時、戦わねばならぬ時は共に同じ戦場に立ち共に戦ってこそ対等と言えるのだ。 貴方達の後ろで守っていてもらうだけでは永遠に対等にはなれない。そしてその対等でないことで生まれる溝は静かに、だが確実に大きくなって行き、いつしか大きくひびが入る事になって、それをきっかけに我々と貴方達の間に無用な争いを生んでしまう事になるだろう」
光は軽く深呼吸をしてから、話を続ける。
「繰り返すが、こちらでは時間も寿命も、君達と比較してしまうと何もかもが足りない。 そんな脆弱な我々が君達と共に力を合わせて戦う為には、技術を駆使して生み出した鋼の巨人に乗り込み、君達とは違う方法で戦いの場に立つしかなかった。 フルーレ、我々は君達と対等でありたい。庇護を受け続ける対象ではいけないのだよ」
フルーレは黙ったままだ。 そんなフルーレを確認した後、光は話を更に続けた、聞いてもらわねばならないとばかりに。
「そして本来であれば。 各国に奴隷扱いを受けていた日本人の救出、国土の強力な防衛方法の構築、これらは……本来ならこちらの人間、つまり日本人が自らの力でやらなければならない事だった。 ところが、それをこちらに来てくれたフルーレ達にやらせてしまった上に、日本人救出の際にフルーレ達の手を血で汚させた。 だからこそいい加減にここから先は、こちらの世界に生まれ、生きてきた我々がやらなければならない事であるという理由もある、我々日本人は今はまだ『地球人』なのだから」
自分のケツは自分で拭く事が出来るのであれば、自分で拭くのが一番いい解決方法に決まっていると光は話をまとめた。 これ以上フルーレ達に頼りすぎてはいけない、それは無意識の依存につながり、向こうに旅立った後の国家存亡に後々響いてくる可能性がある事を否定できなかった。
「──お話は理解できました。 ですが、光様が専用の機体を作らせ最前線に立とうとしていると聞いています」
やはりそれを言ってきたか……そんなフルーレを見つめながら光は言う。
「国家存亡の危機だからこそ、将でもある自分が前に出る必要があるのだ。 前にも言ったが、『将が前に出なくてどうして兵に戦えと言える』という事だな。 ましてや最初で最後の機会であるこの流れを止めないためにも、国民全体の士気を高く保つためにも、総理である自分が恐怖に脅えず前に出て、その姿を皆の前に晒さなければならない」
フルーレは「ですが!」と食い下がるが。
「そして、何より今まで苦しめてきた連中をいい加減直接ぶん殴ってやりたいと言う個人的な心情もある。 白旗なんて許さん……今まで散々我々を苦しめた対価をしっかりと払ってもらわねばな」
そういいながらゴキゴキと指を鳴らす光。ため息をつくフルーレ。
「どうしても……考えは変わらない様ですね……」
「そうだ。君達とこれから先も、常に対等であるために避けて通ることは出来ない道だ」
フルーレは軽く息を吐くと、真剣な表情を見せて言葉を綴る。
「ならば、異世界の誇り高き戦士、藤堂 光よ! 我々と共に歩もう!」
そうして光に差し出されるフルーレの手。
「ああ、楽しいことも苦しいことも分かち合い、共に進もう!」
光もフルーレに手を差し出す。
そうしてお互いに差し出された手同士がしっかりと握手を交わす。 この時点でフルーレを頭とする異世界から来ていた部隊にとって、日本は自分達の世界に招く為の護衛対象から、共に戦う同盟者へと変化した。 後の歴史学者はこの話し合いが存在したお陰で、異世界転移を行なった後に色眼鏡で見られることなく、日本皇国が4番目の国家として素直に認められることになったと記している。
メカを出した最大の理由は戦闘方法の違いを出したかったからです。
異世界組→魔法を駆使し、剣なども使うファンタジー戦法
日本人組→人型兵器に乗り込み、銃やミサイルで戦う近未来系
対等の捉え方は多々あるでしょうが、私の話ではこうすると言う事です。
あくまで個人意見ですのであしからず。




