表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/219

3月29日~4月5日

 数日後、フォースハイムとフリージスティ両国から500名ずつ、合計1000名が日本に来日。用意されていた家に入り、様々な状況が落ち着くまでに2日ほどを要した。その後はマルファーレンスの戦士達と同じよう光陵重工にて機体製作の為に必要な身体のデータを確認。その結果、魔力の流れはマルファーレンス、フォースハイム、フリージスティ各国の出身地によって違う事が判明する。


 マルファーレンスの人々は特に腕と足に強い流れが存在する。フォースハイムの人々は頭部、口、そして脊髄に強い流れが存在していた。最後にフリージスティの人々は強い個所が存在せず、満遍なく全身に流れが存在する。この特性が判明したため、フォースハイムとフリージスティの人々用の機体は個別に作る必要性が出てきた。

 それでも基本的な機体のフレームなどはある程度流用できる部分もあり、3割ほどのパーツは同規格でいける事も分かった。残り7割は各国から選出されたパイロット候補が持っている能力をより引き出すために新しく作る必要があるが、それでも3割軽減されるというのは大きい。


 そんなデータを集めるために長時間拘束されたフォースハイムとフリージスティの人々であったが、彼らの不満を解消したのはやはり食べ物であった。だが、寿司、すき焼き、天ぷらなどではなく──


「あー美味い。やっぱり来て正解だった」「本当、このきのこ美味しいわね。こんな様々なきのこをお腹いっぱい食べられるなんて」「うむ、まさに贅沢の極みだな。そしてここで酒を飲めば……くぅー、最高じゃないか!」


 フォースハイムの人々が飛びついたのは椎茸、シメジ、なめこetc……などの、各種きのこであった。もちろんフォースハイムにも食用として適しているきのこは存在している。が、種類も数も多くない。例えるなら、人工的に養殖できる前の椎茸といった所であろう。


 話がそれるが、椎茸は養殖技術が確立される前は非常に高級品だった。一般的に食べられるようになったのは養殖技術が確立された後の話であり、ピンとこない人が多いかもしれない。その一方でフォースハイムの方ではきのこは天然物を見つける他なく、毒キノコとの見分けもなかなか難しいため、専用の魔法を使って食用に出来るきのこかどうかを調べる魔法使いすら存在する。


 当然数も少なく、手間もかかればお値段は相応に跳ね上がる。お値段相応の味を楽しむことが出来るのは確かなのだが、なかなか手が出し辛い。それが日本に来れば、各種見た事が無かったきのこを使った料理が存在している。そこに飛びつかない理由は無かった。


 味こそフォースハイムのキノコにやや劣るが、その代わり種類では勝る。さらに手軽に食べられるお値段でたくさん食べられるのだから、連日きのこ料理を出す店にフォースハイムの人々がやってくる光景が出来上がるのにそう時間は掛からなかった。


 その一方でフリージスティの人々を魅了した料理は……豚肉を使った料理であった。とんかつ、豚汁はもちろんの事、生姜焼きや豚肉が入った野菜炒めなどこれまた料理を上げ始めたらきりがない。そして彼らは品評会を始めてしまう。


「あの店はとんかつが旨いな」「こっちの店では生姜焼きが一番だと思います」「いやいや、生姜焼きならあっちの店の方が──」「とんかつならこっちの店も旨かったぞ。それにご飯とお茶も旨かったぞ」「うむ、豚肉料理だけではなく脇を固めるおかずの存在も大事だな」「正直、どの店もその店の味を出してるんだよな。巡るだけでも楽しみすぎてな」


 どの店が一番美味い、ではなく……その店に行ったらこの豚肉を使った料理を食わなければ意味がないという感じの話し合いが熱心に交わされる。この話し合いもまた、彼らにとってはストレスを発散する材料の一つとなっていた。そして話し合いがだいたい終わると……


「よし、では次はこの店にアタックしてみよう」「オコノミヤキ、という料理を出している店か。オオサカという本場からの出店らしいし期待してもよさそうだ」「ブタタマ、という奴だな。種類が多いようだから間違えるなよ」


 そんな次に向かう店の担当が決まって行く。とにかく豚肉を使っているならどんな料理でも構わないからまずは食ってみる、が彼らの行動指針となっていた。



 そのような食べ物に関する動きはあるが、昼間の彼らは新しい機体を生み出すために光陵重工の技術者達と綿密に協力しながら行動していた。ソーサラーとランチャー用の手足を動かしてみて、スムーズに動くかどうか。さらにソーサラーの方は専用の武器である杖からの魔法発動が問題なく可能となるかのテストもある。


 ブレイヴァー制作時の経験があるおかげで手足の方は比較的早く開発が進むが、一方でソーサラーの杖の製作は難航していた。ソーサラーの腕までは問題なく魔力が流れているのだが、そこから先の杖にまで魔力が流れてくれないのだ。全く流れていない訳ではないが、流れる量が10分の1ぐらいまでがた減りしてしまうのだ。これでは満足いく結果なんてことは口が裂けても言えない。


「なぜ魔力がこうも流れないのだろうか? フォースハイムの方々から聞いた杖の製作法に則って組み上げた杖なのだが──」「こちらから見ても、杖に欠陥があるとは思えません。しかし、確かに魔力の流れが上手く行っていないのも間違いありません。もしかすると、今までの杖の考えではダメなのかもしれません」「とにかく、問題点を洗い出して作り直しだ。ソーサラーの根幹にある物は魔法を主軸に置いた戦闘だ。このままでは使い物にならん!」


 機体その物の開発は問題ないのだが、この杖の方の開発には非常に難航する事となる。実際、ブレイヴァー、ソーサラー、ランチャーのうち、一番開発にかかった時間が長いのはソーサラーとなってしまうのだ。その原因は全て、このソーサラー専用の武装である杖が全ての原因である。が、苦難の末に完成した杖から放たれる魔法の威力はすさまじく、神々の試練で大きく勝利に貢献する事になるが、それはまだまだ先の話。


 一方でランチャーはスムーズに開発が進んでいた。ランチャー専用の各種銃器の方も試作品が次々と出来上がり、フリージスティの人々が試作機のデータを適用したVRの世界で各銃器の使い心地を確かめつつ、使い難い点や改良点を上げて更に試作品が作られるという流れが出来上がっていた。


「ゴツいキャノン砲か、良いな。俺好みだ」「私はこちらのスナイパーライフが好みね。これならば遠距離からあの神々の試練で飛んでくるメテオを狙い撃ちできるわ」「このサブマシンガンも面白いな。一発の威力は低いが撃ちまくれるってのがいい!」「連射力は劣りますが、このヘヴィリボルバー2丁も面白くてよ? 威力的に私の好みはこれね、追加アーマーを着せるにしてもこの子達は手放したくないわ」


 それぞれが試作品に触り、VRで試射を重ねるうちに好みの銃器を自分のランチャーに身につけるようになっていく。ランチャーは言うまでもなく射撃を重視した機体ではあるが、刀剣類も一応用意されている。ただし射撃の邪魔にならぬよう、人間でいうショートソードぐらいの長さであり、あくまで不意の接近戦時における対処用でしかない。


「へえ、こんなのもあるのね」


 そんな中、一人のフリージスティからやってきた女性が一つの試作品を見つける。砲の上下に刃をつける事により基本は射撃、緊急時には武器を持ち換える事無く近距離攻撃を行える剣と銃の合わせ武器。たいていはロマン武器レベルであり、強度の問題やどっちつかずという事で失敗作として終わる事が多いパターンの武器である。


 だが、そこに地球ではなかった魔法という技術が混ざる事によって、強度の問題、威力の問題を一定レベルで解決する事に成功。螺旋を描いて相手を抉る射撃に、斬撃攻撃を行うときは魔法による強化のバックアップを受ける事で強度と斬れ味を両立。実戦レベルまでの能力を獲得した、と判断されたが故に一つだけ試作品として置かれていた。


「お前はまた、そんな変わった武器を選んで……過去にも研究されたが、剣なら剣、銃なら銃とはっきり区別しておいた方が結果的に強い武器になると分かってるだろうに……」


 女性の知り合いであると思われる男性が、そんな声をかける。が、女性は数回首を横に振ると……


「試さずに駄目だ、と決めつける事は出来ないよ? それに、そもそもゴーレムに剣や魔法、銃を持たせて戦おうなんて考えは私達の中からは出てこなかった。そんな私達の常識外にある人達がこうして試作品を用意しているのなら、誰かが胸を張ってこれは使える武器だと確信しているはず。それを確かめもしないで否定する事は、私は嫌だな」


 その女性の目を見た男性は、こりゃ一歩も引かないわと諦めた。


「そうかよ、まあいいさ。まだ試作品だし、確かにお前の言う通りとりあえず試してみるってのは確かにアリ、だ。ただ、ちょっとでも物足りなさを感じたら即座にやめとけよ? その物足りなさのせいで死ぬような事になったらつまらねえだろ? さて、俺はこいつにするかねー」


 男性はそう言い残し、ガトリングガンを使う事に決めてVRの機械へと入っていく。その後に女性もVRの世界でさっそく見つけた試作機を使ってみたが──


「へえ、面白い、面白いわ! 銃口が小さいから威力はそんなにないと思ったらそんなことないし、近距離のブレードもいい感じ! ただちょっと運用するとエネルギーの消費が激しいなぁ。そこら辺が改善されてくれれば、相棒にしてもいいかも」


 と、不満点こそあるが手応えも感じていた。そして、この武器は幾度もの改造と姿を変えて彼女が使い続ける長い相棒となって行くことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ちなみに一般的に70〜80cmがショートそれ以上がロングと分類するのが多いけど1番有力な考え方は歩兵が使う刀剣がショートソードで騎兵が使う刀剣がロングソードという考えらしい つまり明らかに歩…
[気になる点] きのこの養殖ではなく、栽培では?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ