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3月25,26日

 先日の会議で動画を要求された如月司令が配下の人と突貫工事で再編集し、1日後に各国に動画を提供。受け取った各国代表は、それを側近と観賞して問題が無い事を確認した後に自国で流した。これが神々の試練に立ち向かう鋼鉄の戦士の新しい姿であると評して。


 動画の方は、まずブレイヴァーの素体が立っている姿を映し出すところから始まる。そこから手足の可動域を動く事で説明、そこから人間と同じように歩き、走り、武器を持って振り回す姿と段階を踏んでどういう動きが出来るのかを見せてゆく。


 片手剣&盾、槍、メイス、両手剣などの武器の演武を披露し終えたブレイヴァーは、追加装甲を身に纏う。ランサー、バーサーカー、ガントレットの順でブレイヴァー素体にどういったアーマーが装着され、戦い方が変わるのかを迫力あるアクション動作を交えながら盛大にアピール。この動画を見ている各国の国民は、完全に釘付けになっていた。


 動画を見ている各国の国民から受ける熱い視線と興奮を一手に集めながら、動画は終わる。そして当然のように、各国の政府に国民からの質問が殺到した。本当にあんなものが出来るのか、そして乗り込むことが出来るのか。絶望させることを回避するだけの魅せ要素ではないのか、などなど数え上げたらきりがない。


 が、各国首脳は即座に言い放った。先ほど見せた映像は嘘でもなんでもなく、あと少し先には実物を見ることが出来るようになる、と。即座にそう各国政府が言い放った事で、先程の映像は本当にこれからやってくる未来なのだと各国の国民も受け止めた。が、それは同時に……



「ティア様、絞り込みが進みません!」「ブリッツ殿、枠を巡って喧嘩を始めとした争いが多発しております!」


 何としてでも日本に渡り、テストパイロットの枠をもぎ取ろうとしているフォースハイムとフリージスティの人々をより刺激してしまう事となった。乗りたい、この道で活躍する一人として加わって貢献したい! こういった要求が高まったからである。やる気があること自体は非常に好ましいのだが、ありすぎるが故に空回りしたり、暴力に走ったりという問題も引き起こしていた。


 さすがにこうなっては強引にでも決めてしまおうという流れが強くなる。フォースハイム、フリージスティ両国ともに、同じ方法で500名の枠を選出する事になった。それは、くじ引き。古来からある運で決める方法であった。なお、魔法などの技術は一切抜きで作られたものが用意された。それを見た日本人は恐らく皆がこう言うだろう。『おみくじ』じゃねーか! と。


 この方法に不満が出なかったわけではない。いや、むしろ不満の方が遥かに多かった。しかし、そこはティアとブリッツがぴしゃりと言い放った一言で押さえた。


「文句があるなら大いに結構、但し代替案を示しなさい」「暴力で枠を勝ち取ろうなどとは、恥を知れ。お前たちの決め方では神々の試練と戦う前に自滅する! だからこのような方法で決めざるを得ない! 文句があるのであれば代案を出すがいい!」


 二人とも、文句があるなら代案を出せという所は一致していた。それに、これ以上もたもたしてはいられない。あと一年と数か月で嫌でも戦いは始まる。その戦いを迎える前にこれ以上の時間的な足止めを食っている訳にはいかなかった。国民から文句が山ほど出ようが、ここは強行する他ないと踏んだのだ。


 結局他の代案が出る事もなく、大くじ引き会が2国内で行われる事になった。当然会場には殺気に限りなく近い剣呑な空気がプンプン漂っている。そんな、普通の人がその場に居たら間違いなくお腹に手を当ててしゃがみ込みそうな中、くじ引きは行われる。フォースハイムでは10000分の500を。フリージスティにおいては30000の中から500しかない当たりを引く戦いである。


「む、無念!」「そんな、引けなかった……」「ぐぅ……」


 外れの方が圧倒的に多いため、次々と肩を下ろして会場を後にする人が絶えない。だが、それでも当たりを引く者はもちろん存在する。どんなに確率が低かろうとも、肝心要の時に当たりを引ける人間、そう、天運を持っている──これは言い過ぎかもしれない。だが、とにかく自分の方に良い流れを引き寄せる人間は確かにいるのである。


「……」「よし!」「やった!」


 無言で当たりくじを掲げ、空いた方の手で握り拳を作る者。これで戦えると気合を入れ直す者。素直に喜びを表現する者。反応はさまざまであるが、彼らは幸運であると表現するのは正しくないかも知れない。そう、戦いの舞台に先に上がるのに相応しい者が選ばれていると言うべきだろうか。


 なんにせよ、これにてフォースハイム、フリージスティ共々要望に上がっていた500人の枠は埋まった。もちろん両国はすぐに日本皇国とのコンタクトを取る。伝える内容はすべて同じ、代表が決まったから受け入れる用意をお願いする、である。当然光はこの要請をすぐに受諾。受け入れ態勢も整っているため、明日にでもと返答を返した。


「最後はくじ引きか、やむを得なかったのだろうなぁ」「あらゆることを行ってふるい落としを行おうとしたはずですからね。それでも絞り込めなかったのでしょう。とにかく、受け入れは何時でもできるように整えてあります。恐らく明日には来るでしょうから、食材などの準備も進めておきます」


 両国との通信を終え、話を聞いた光と如月司令はくじ引きにせざるを得なかった経緯は当然理解している。正直、光であっても両国の状況から、代表の500人を絞り込むためにはくじという方法を取るしかなかっただろうなと感想を持った。


「なんにせよ、これで3カ国すべての代表が出そろう。ブレイヴァーの生産を進めるとともに、ソーサラーとランチャーの設計がようやく始められる。とにかく最初はマルファーレンスと比べて国によって魔力の流れが違うのかどうかから調べて行かないとな」


 国によって魔力の流れが違うのか、それとも同じなのかはまだデータが少なすぎて何とも言えない。だからこそ最初にきっちりとデータを取って確認しなければソーサラーとランチャーの製作に取り掛かれない。同じならブレイヴァーの製作で得た経験がそのまま流用できるが、明らかに違うとなれば当然それに対処せねばならない。


「作った後に不具合の発見なんて事態は避けたいですからね。もちろん作らなければ分からないところもありますが、出来るだけ作る前に問題点を潰しておかなければキリがありませんからな」


 ブレイヴァーの製作過程で得たノウハウはある。だからある程度はソーサラーやランチャーでの製作に役立つだろう。ただ、その『ある程度』の範囲が今の所は未知の世界。大きいのか小さいのか、それとも殆どそのまま使えるのか、逆に全くと言っていいほど使えないのか。その辺りも知らねばならない。知らなければ、前に進めない。


「また技術班には負担をかけるな。ソーサラーとランチャーが終わっても、その先にはコロニー建設が待っている、休みを与えてやれん」「ですが、我々にはあまり時間がありません。ですから来年を乗り切るまでは踏ん張ってやるべき事を成していかねばなりません。それに、魔法のおかげで栄養ドリンクに頼らずともある程度の疲労なら効率的に抜くという方法も手にしていますからね。環境は良くなってますよ」


 光の申し訳なさそうな表情を浮かべながらの言葉に、笑みで返答する如月司令。付き合いはまだ長くはないが、共に戦った戦友である。お互いを思いやるのは当然の事だろう。


「総理、貴方も休める時には休んでください。休まないなら、またフルーレ様や沙耶さまを呼んで寝かしつけますよ?」「それは勘弁願いたい。寝かしつけられる前に恥ずかしさで卒倒してしまう。あの時と同じ思いをするのはさすがに嫌だぞ」


 ハハハ、とお互い自然に笑い声が出る。難題は山ほどあるが、彼らはそれらから逃げずにまっずく突き進む。その考え、その意思。それこそが遠き宇宙の果てから来る存在を怯えさせる一手に他ならない。

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