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2月20日(前半)

 この日、マルファーレンス帝国の代表であるフレグが、正式に日本の賓客として来日した。目的は当然、ブレイヴァーの製作がどれほど進んでいるかの確認である。もちろん日本から細かく報告は行っているのだが、彼は一度己の目で直接見てみたいと申し出てきた。その気持ちは良く解るので、日本側もそれを受け入れた形である。


「ようこそおいで下さいました、フレグ殿」「ヒカル殿、お忙しい中こちらの要望を聞いていただいた事、心より感謝する」


 官邸内で握手を交わした後、さっそく光陵内のブレイヴァー開発部へと車にて直行。フレグは車に乗るのは初めてになるのだが、魔法でも己の体を使う訳でもない初めての移動手段に少々戸惑いを隠せなかった。だが、すぐに適応して『なるほど、なかなか便利ですな」と感想を言えるようにまでなっていたが。


 そんなちょっとしたやり取りの後、目的の光陵重化学工業に到着。前もって連絡が入っていた如月司令が自ら出迎える形でフレグを歓迎する。簡単な挨拶を交わした後に、ついにフレグに直接ブレイヴァーの現状の様子を見てもらう。


「現時点で、腕部60%、脚部55%ぐらいでしょうか。基本的な動きであればすでにこなせますが、戦士である皆様方のイメージ通りに動かすまでにはまだ至っておりません」


 マルファーレンスの戦士達の協力の元、ブレイヴァーの試作版腕部と脚部が動いている姿をフレグは見て、そのサイズの大きさと動きに圧倒された。五本の指は人の物と変わらぬ動きを見せ、脚の動きも人と大差ないように見える。すでに神威という前例を見ているが、こうして間近で巨大な機体の腕や足が滑らかに動く姿に改めて驚いたのだ。


「ふうむ、キサラギ殿と言ったかな? 私の目には、すでに手も足もほぼ完成と言ってもいいような感じを受けるのだが……本当にこの出来栄えでまだ6割前後だというのか?」


 このフレグの問いかけに、如月司令は迷うことなく頷いた。


「はい、フレグ様のご出身であるマルファーレンス帝国から来てくださった戦士の皆様のおかげで、機体の腕や足に魔力を流す方法などの方法はほぼ完成し、物を掴むなどの行動は問題なくできるようになりました。しかし、今の現状では戦士の皆様が磨いた技や動きを再現する事が出来ない状況なのです。次のエリアに来て頂けますか?」


 如月司令を先頭として次のエリアに移動する一行。次のエリアでは大きさが約一メートル位の小型機体が実際に剣やハンマー、槍に盾を用いて戦っていた。


「これは現状の完成度合いで制作した小型版の試作ブレイヴァーです。この小型ブレイヴァーで戦士の皆様の動きを十全に発揮できるようにならなければ、本命となるサイズによる機体を組み立てることが出来ません。なお、この小型ブレイヴァーは皆マルファーレンスの戦士の皆様が遠隔操作で動かしております」


 激しくぶつかり合う各小型ブレイヴァー。光陵重工の研究員たちはコックピットを模した遠隔装置で本気の戦いをしてくださいとマルファーレンスの戦士達にお願いしている為、ガッチガチの本気の戦いが繰り広げられている。しかし、フレグの目にそれがどう映ったかというと……


「むう、これは本当に私達の戦士達が動かしているのか? 皆、動きがどうにも……経験の浅い戦士同士の戦いに見えてしまうのだが?」


 フレグの言葉に、まさにその通りとばかりに頷く如月司令。


「はい、そこが完成度60%と申し上げた所なのです。基本的な動きこそできるようになり、現状でもそこそこ戦えるスペックにはなりました。しかし、今の状態では戦士の皆様の力を発揮させることが出来ないのです。例えばあそこの剣と盾を持ったブレイヴァーですが、あれを動かしている戦士の方は剣と盾のコンビネーションが見事な方なのですが……」


 盾のシールドバッシュで相手の態勢を崩し、さらに剣で追撃を掛けようとするが──相手の両手剣で剣が弾かれてしまっていた。如月司令を始めとした研究員、開発員は皆、事前に戦士の皆がどのような戦いをするのかの模擬戦闘を生で見させてもらっている。だからこういった動きでは、本来の物とは程遠いと理解している。


「先ほどの盾から剣の追撃という動き、動かしている本人でしたら防御を許さず決まっているはずなのです。しかし、この試作ブレイヴァーだとその動きの速さと巧みさがまだ再現できず、ああして防がれてしまったのでしょう。これではとてもではありませんが完成とは言えません。動かしている戦士の方も思うように動けないのではストレスもたまりますし、やられてしまう事にもつながります」


 如月司令の言葉に、深く頷くフレグ。選抜し、日本に送った戦士達は皆強者ぞろい。それがこんな動きしかできないのでは、とても完成したとは言い難い。しかし、その一方で……


「わずかな期間で、ここまで動く物を作り上げた。その手腕は実に見事としか言いようがない。我々ではとてもではないが、作り上げる以前に考える事すら出来無かったものを、だ。この状態からどこまで戦士の動きを再現できるようになるのか、大いに期待させていただこう。希望は間違いなく、ここから生み出されていると知ることが出来た。それだけでも日本に無理を言ってやって来た甲斐があった」


 フレグの言葉に、光と如月司令はそっと目を合わせて小さくうなずく。一定の成果はこうして上がっており、希望を捨てる必要は無いのだという事を理屈ではなく心で分かってもらえたからだ。


「では、もう一つ見ていただきましょうか。ブレイヴァー用の新型武器のテストとなります」


 次の場所に移った一行は、小型ブレイヴァーが様々な武器を振りまわして的に攻撃を当てている現場へとやって来た。


「先ほどのブレイヴァー達も武器を使用しておりましたが、こちらはより特殊な武器の開発を進める場となっております。とりあえず、解説するより見てもらった方が早いと思いますので……」


 如月司令の言葉に頷き、テスト現場を眺めるフレグ。だが、その表情はすぐに驚きに変わった。武器に炎や氷を纏って攻撃しているブレイヴァー。複数の剣を宙に浮かべ、それらを別々の的に当てているブレイヴァー、二丁クロスボウで次々と弾を乱れ射ちしているブレイヴァー……高等技術であったり、自分達には使用が難しい魔法であったりと……そういった類の物が平然と存在しているからであった。


「馬鹿な!? 魔法剣はなかなか習得できぬ大技だぞ! あの剣を浮かべて攻撃しているのはなんだ!? フォースハイムが使う光弾魔法に似ているが……そしてあのクロスボウ、なぜあれだけ連射できる!? 矢の装填はどうなっているのだ!?」


 ここに来て、感情を隠さずに驚くフレグ。それとは正反対ににやりと笑うのは如月司令。


「フォースハイムやフリージスティの皆様の協力と、我々の技術力を結集して再現した数々の武器です。これらの武器を用いれば、近接する事が難しい状況であっても見ているだけという歯がゆい状況に陥る事はまずないでしょう。これらの武器もまだまだ改良すべき点が多くありますからな、マルファーレンスの皆様にブレイヴァーの完成形をお渡しする時には、もっと性能を上げた物を同梱できるはずです」


 如月司令の言葉を聞いて、フレグは如月司令に対して信じられない物を見たという目を向けてしまう。今までの常識が、フレグの中でガラガラと音を立てて崩壊している真っ最中でもある。尤も、これはここでテストを行っている戦士の皆様方も体験した事なのだが。


「これ、以上、だと!? キサラギ殿、それは本当なのか? 正直に言って、現時点でもあのブレイヴァーが使っている剣やクロスボウの性能はすさまじいとしか表現のしようがない! これ以上の改良点があると、貴公はそう言うのか?」


 フレグの言葉に、自信たっぷりに「はい」と告げる如月司令。


「まだまだ、こちらが満足するレベルに至っていませんからね。強大な相手に立ち向かう戦士には、最高の武具を。それが私の考えです。そして、今はまだその最高の武具と呼べる域には達していません。実際、今のテストだけで改良点がいくつも見つかっているようです。できるだけ消耗を抑え、効果を最大限に発揮するようにするまでには、まだ研究の時間が必要ですから」


 フレグから目を逸らさずに言い切った如月司令の姿を見て、フレグもにやりと笑みを浮かべる。


「勝てる、勝てるぞ。長年何もできなかった神々の試練に、我々は勝利できる。そうとも、ここまでの物を手にして負けるなど、マルファーレンスの戦士としてあり得ん! 神々よ、我々は長い間怯えてきた。しかし、今度はそうはいかん。我々の故郷に隕石を一つでも落とせると思うなよ……!」


 フレグが右手で握り拳を作る姿を見て、光と如月司令は再び頷いた。いろんな意味で手ごたえあり、と。

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[一言] 最終的に美少女化しないよな?(ボソッ
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