最終話 笑点で好きなものは三遊亭好楽のドヤ顔です
投稿です。
(ちょっとアンタ、起きなさいよ。起きなさいってば)
ん~あと五分だけ~。
(お願いだから起きてよ。ほら早く)
俺昨日殺人鬼やってたからすっげえ眠いんだってば~今日は善人でいるからさ〜。
(起きなさいって……)
あれ? 玲が俺より早起きするわけがないのに声がするってことは、……ど、泥棒か!?
「言ってんでしょうがーーーー!!」
「誰ゲファグガブギャアアア! し、舌がァ!」
くそうホント誰だよ! 顔を上げた瞬間に上から叩かれたせいで顎を打ってその衝撃で舌噛みちぎるかと思ったぞ! 三連コンボで目がギンギンだよ!
「さっさと起きないアンタが悪いんでしょ? これで目が覚めた?」
「ひ、陽菜? なんでお前がここに?」
「玲が『親父ならきっと図書室にいるぞい』って言ってから見に来たのよ」
あの野郎、余計なことを言いやがって。安眠を妨げられたじゃないか。
「そしたら寝てるもんだからアンタの読んでた六法全書で叩き起こしたわけ」
「まさに法の裁きが落ちたというわけですなゴファア!?」
前蹴りしないで座布団持ってきなさいよ山田君。上手いこと言ったんだからさあ。
「フン。六法全書を読む理由が弁護士になってその顔でも人を助けられる存在になれることを証明したいからって、バカすぎるでしょ。……そんなことしなくても、アンタを理解してくれる人はいるのに……」
「ああ、まあそうだな。今は嘉隆とイインチョぐらいだろうけど、他にもきっといるよなゲブルバなんで顔面殴るの!?」
「……バカ」
俺を罵る言葉を吐いてうつむいてしまった。何かいけないことでも言っただろうか?
うつむく陽菜の頭頂部を眺めていると何かを思い出したかのようにピクッ、と体が震えすぐに顔を上げた。
「で、アンタ葛城に何したのよ。やっぱりアタシがやらないとと思ってあいつの家に行ったら……」
「み、見たのかよあれを!? いやそれ以前にそんな真夜中に何するつもりだったんだよ!」
「へー、夜に何かやったんだ~」
「え? どゆこと?」
「アタシが行ったのは部屋の鍵が閉まっていた夕方。誰も真夜中とか言ってないけど。さあ、何をやったか説明してもらいましょうか?」
こ、こいつ、誘導尋問なんかしやがって……。だったらこっちはそれより謎なことを突き付けてやる。
「じゃあお前はなんでここに来たんだよ。陸上部はもう終わったはずだろ」
ちょっと切り替えがムリヤリだったがまあいいや。で、終わる時間は部活によって様々で陸上部はたしか早い方だったはず。それに外はもう完全に日が暮れて照明も点いてるぞ。
「えっ!? いや、その、アンタが勇気をくれたおかげでみんなが許してくれたわけだから、その……殴りに来たのよ!」
「ハッハァ! 予想通りィ!」
「な!? 避けたですって!?」
「三度目の正直、二度あることは三度ある、鬼の目にも涙だぜ、ってなんで泣いてんのぉ!?」
「う、ううううるさい待ちなさい涼馬! 殴らないと気が済まないわ!」
「殴られると分かって待つ奴がいるかよダァホ。それよりなんで泣いてんだよひーなちゃん?」
「うるさいうるさーーい待ちなさいってば涼馬ーーーー!!」
その日、俺と陽菜は幼稚園の頃に戻った。あの頃のように一方的な追いかけっこをして、お互いの名前を呼びあう、ちょっぴり痛かったけど懐かしいあの頃に————
余談だがその日を境に演劇部から大量のタキシードと鳥のマスクが消え、時々それを使って変装した人間が『魔王』を歌いながらランニングをするという、なんとも奇怪な現場が校内で見られるようになった。噂によれば盗まれた変装セットと鳥姫寵愛会の会員数が同じだとか違うとか……。
これで第01章が終わります。第02章は近々投稿していきますのでよろしければお付き合いください。




