その7 団五郎恐るべし! その後の美和ちゃんと天子ちゃん
その7 団五郎恐るべし! その後の美和ちゃんと天子ちゃん
「天子様。いつもこの団五郎を応援して下さって、本当にありがとうございます」
団五郎は天子に向かって、頭を深々と下げた。
「そんな……私の推しですもの。当然の事です。
今日は友達の美和ちゃんを連れて来たのです。
こちらの世界は初めてなんですよ。ほほほ」
天子は乙女のようにしおらしくなっている。
美和が団五郎を見ると、やはり白い光で体がキラキラと光っている。
(そばで見るとますます眩しい……)
「おや、美和ちゃんは私の光が見えるんだね」
「えっ?」
「天子様、いや弁天様からご加護を頂いてから、私が光っているように見える人達がいるんだよ」
「団五郎様は、この私が選んだお人ですから。神々が見える力がある人には光り輝いて見えるのでしょう」
「え、じゃあ私にも神様が見えるってこと?」
「そりゃ、そうじゃ」
天子は今さら何を言っているのか?みたいな目で見ている。
「美和ちゃんは、この世界にきても私が見えてるだろう。私は基本、この世界では見えるものにしか見えんぞ。ちなみに孔ちゃんもな」
「……びっくりしたぁ。向こうの世界では天子ちゃんが見えてるの、普通だったからさ」
この世界の神様や使役の話、見える人や加護の事、美和にとっては全く当たり前ではない。それなのに、天子ちゃんは神様なのに、そんなことは関係なくもう友達としか思えない。二人で何かするのが楽しくてしようがないのだ。
美和は視線を感じ、ハッとして団五郎を見た。
団五郎が二人をニヤニヤして見ている。
「天子様、もうすっかり美和ちゃんと仲良しなんですねぇ。良かったです。私は嬉しいですよ」
そう言うと、団五郎は美和の手を握り、じっと見つめてこう言った。
「これからも、この浦安団五郎と天子様をどうかよろしくお願いしますね。美和ちゃん」
……ズッキューン!美和はまるで心臓を撃ち抜かれた気がした。
「はうぁ!」
「え?美和ちゃん?どうされました!」
「ふ、ふぁい!勿論でありまする!」
「ははは、可愛いお人だ」
ぽんぽん。団五郎は美和ちゃんの頭をそっと撫でた。
「う〜ん……」
「美和ちゃん!美和ちゃ〜ん!」
天子ちゃんが呼んでいるのが遠くに聞こえる……
美和は、団五郎の破壊力MAXのファンサぶりに、意識が遠くなっていった……
「美和ちゃん、大丈夫か!」
美和がハッと目を覚ますと、布団に寝かされていた。
「ここは『落ち着き部屋』と言われている部屋じゃ。主に団五郎の魅了にやられた娘が運ばれ、落ち着くまでいる部屋のことでな」
「ああ、芝居中に気絶して運ばれた人たち、ここに運ばれてたんだ……」
美和はまさか自分がファンサで倒れるとは思わなかった。
「団五郎、ホント恐るべしだね」
「そうなんじゃ。大分慣れたとはいえ私も時々危うくなるぞ」
「天子ちゃんがまだ危ういって!どんだけ凄いの、団五郎!しかし、『落ち着き部屋』って、ネーミング!ぷぷっ」
「あははははっ」
二人は涙が出るまで大笑いした。
(こんなふうに、一緒に誰かと遊んで大笑いすることなんて、一体どれくらいぶりだろう。少なくとも元婚約者と別れてからは、なかったな……
ホント、何だか色々な事がスッキリしたよ)
思いっきり笑ったあと、二人は互いの顔を見た。
「そろそろ帰る時間だな。美和ちゃん」
「うん、天子ちゃん。色々本当にありがとう。あっという間だったけど、いままでで一番楽しい旅だったよ。あの……また会えるよね」
「うん、また遊びにいくぞ。今度はちゃんとハニミルも観たいしな!」
「分かった!それまで私もお仕事頑張るよ」
美和は少し泣きそうになっていたが、我慢した。最後は笑顔で別れよう。そう思ったからだ。
「じゃあ、準備はよいかの」
「……うん、天子ちゃん」
美和がそう言うと、あたりが光に包まれていき二人はまた神の道に入っていった……
◆
「はい、お客様どうされました?
ああ……それはご心配でしたね。
お辛かったでしょう。
はい、はい、そのお気持ちになられたこと、大変よく分かります。
それでは、これからご一緒に考えてまいりましょう……」
美和は、一件目の相談の電話を終えた。
美和は変わらず健康相談コールセンターに勤務している。しかしその電話対応が好評で、今年の最優秀賞に選ばれた。(これは毎年お客様アンケートで選ばれる)
やればできる子。美和は職場の同期にそう呼ばれている。以前とあまりに違っているからだ。
今はしばらくこの職場で頑張ってみようと思っている。
(結局私は、どこにいても困ってる人をほっとけない。そういう性なんだもん。ね、心花魁!)
そういえば、明日から最優秀賞の副賞でもらった、箱根温泉ペア旅行だ。
そしてその次の日はハニミルのファンミだ!モモ君に会えるんだもん。よし、気合入れなきゃな!
よく晴れた春の日、新宿の待ち合わせ場所に来たのは……
「美和ちゃん〜!お待たせなのじゃ〜」
美和とすみれ堂で買った姉妹コーデの着物を着た、あの神様だった。
このお話はこれで以上になります。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
※このお話は「早死して転生したアラフィフですが、異世界の江戸では人生愉快痛快です!
のスピンオフになります。




