表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚無戦線  作者: MIROKU
クリスマスまでだからね!
70/99

5 〜無明を断つ〜


   **


 七郎は刀を手にして踏みこんだ。

「でやあああ!」

 夜闇を斬り裂く紫電一閃。

 七郎の鮮やかな一刀は、魔性を斬り裂いた。

 七郎が月光蝶と呼ぶ魔性の体が、半ば両断されて地に倒れ落ちる。

 一糸まとわぬ裸身、滑らかな白い肌、頭部に蠢く触覚、背に生えた蝶のような羽根、そして真紅に輝く瞳……

 正しく人外の魔性だ。

 だが七郎の持つ妙法村正は、刀鍛冶師の村正が世の平和を祈って打った一振りだ。

 降魔の利剣に等しき刃の前に、月光蝶も滅びたかと思われたが――

「何!」

 七郎は思わず叫んだ。

 真っ二つになった月光蝶の体が互いに蠢き、傷口を寄せあい、再生していくではないか。

 ――我は死なぬ。

 月光蝶の声が七郎の魂に響いた。

 ――我は人の心の悪意から生まれた…… 人間ある限り我が身は不滅……

 目の前で再生していく月光蝶を見据えながら――

 七郎は再び踏みこんだ。

「燃やせ!」

 それは自身の魂を燃焼させようとする、七郎の魂の叫びだ。

 横薙ぎの一閃は、月光蝶の首をはねた。

 だが次の瞬間、月光蝶の体は無数の光球に変わった。

「な、なんだこれは……」

 七郎は見た。

 拳大の無数の光球が、夜闇の四方八方へと飛び去っていく。

 悪意から生まれた、月光蝶の底知れぬ邪悪な意志――

 それが、あらゆる世界に飛び去っていく光景だった。

 月光蝶の悪意を秘めた光球は人に取り憑き、魂を貪り、やがては人ならざる者に変えてしまうのだ。

(人ある限り魔性は不滅…… だがやらねばならぬ)

 七郎は勝敗も生死も考えなかった。

 魔性を斬る。

 無明を断つ。

 それが七郎の使命だ。

 使命を果たすために戦うのみだ。

 たとえ力及ばず、志半ばで命尽きるとも……



   **



「……というわけで、時間も空間も越えた無数の世界に、守護者ガーディアンがいるブル」


 犬型妖精ブルはグレースに教えた。


「へえ〜、そうなんだ」


「姫様にとっては魂の同志だモン!」


 猿型妖精ジェットは言った。


 ブルもジェットも戦闘時には元の姿に戻り、グレースをサポートする。


「さーて、お勉強終わり! お風呂入ろ! ブルもジェットも洗ってあげるからね! あれ、アローンは?」






 犬型妖精アローンは、悪の組織のアジトにいた。


 彼は悪の組織の首領と対面していた。


「「「失礼いたします!」」」


 妖魔のメイド少女三人が、三メートルにも及ぶ巨大なワイン瓶を運ぶ。


 そして巨大なグラスにワインを注いだ。


 巨大なグラスを手にしているのも、巨大な妖魔の美女だ。身長は十メートル近い。


「えーと……」


 アローンは真の姿で対面していた。


 何がなんだかわからない。イブを送りに来ただけで、敵の首領の前に案内されるとは。


「……ぷはー!」


 巨大な玉座に座した巨大な妖魔の美女は、ワインを飲んで一息ついた。


 ワイン臭い息がアローンに向かって、突風のように吹きつける。


「……で? うちの娘とどういう関係?」


 首領のリリースはアローンに質問した。


「え、娘?」


「ママ、私達の結婚を許してよ!」


 場にはイブも現れた。アローンは困惑した。


「ママ? 結婚???」


「お待ちなさい、いきなり結婚だなんて言われても…… で、うちの娘とどういう関係なの? 敵同士よね?」


 リリースの質問に、アローンは硬直した。


 何か大変な事態になりそうな気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ