表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚無戦線  作者: MIROKU
クリスマスまでだからね!
69/99


   **


 人々の意識の及ばぬ世界で、戦いは続く。


「ゆけ、天導てんどう百八星…… 人類の未来を守れ!」


 黄金の剣を手にしたチョウガイは、虚無戦線の夜空を見上げた。


 百八の魔星の守護神チョウガイ。


 彼は四千年の間、百八の魔星を導いてきた。


 その宿命も終わりを迎えようとしていた。


「チョウガイ様、泣いておられるのですか」


 チョウガイの側には魔星の一人、入雲龍ソンショウがいた。


「こ、これは汗だ……」


 チョウガイは涙を拭う。同志の死も、肉体を捨てて虚無戦線にやってくる著名人の死も悲しむ暇はない。


「運命教える星に導かれて戦ってきた我々の宿命も、終わりを迎えつつあるのですな……」


 ソンショウはつぶやいた。


 人類の未来をかけた戦いは、虚無の彼方で続いている。






 百八の魔星の一人、知多星ゴヨウは地球意志と対面していた。


「ゴヨウ……」


 ベッドに横たわる地球意志は、ゴヨウに手を伸ばした。


 老女の姿の地球意志は泣いていた。


 人類によって地球は汚され、その生命力は急激に衰えてきているのだ。


 ゴヨウは地球意志の手を握った。


「ありがとう…………」


 地球意志は目を閉じ、眠りについた。地球そのものの活動が、鈍ってきているのだ。


 退室したゴヨウは静かだ。


 彼は人類の未来を守る戦いには参加しないと決意した。


 だが宇宙の闇とは戦う。


 闘争を好む修羅も、時に仏敵を滅ぼすゆえに仏法の守護者なのだ。


 天のはたらきを知る宿星、天機星「知多星」ゴヨウ。


 彼は人類の敵にはならないが、未来を守るためには戦わない……


「ありがとうね」


「お疲れさま」


 大地母神と海母神がゴヨウを労った。


 二人は煌びやかな衣服をまとい、ゴヨウを酒席に誘った。


「え、何ここ。キャバ◯ラ?」


「まあ、似たようなもんね」


「あんたの心理を反映したのよ」


 大地母神と海母神、二人に左右を挟まれながらゴヨウは酒を飲む。


「ふわあ〜、ほろ酔いの美酒だ〜」


「何よそれ、二人も美人がいるのに」


「え、美魔女じゃん……」


 ゴヨウは言葉を濁した。


 大地母神と海母神が恐い顔をしているからだ。


「い、いえ! 絶世の美女です! 傾国の美女!」


「……よろしい!」


「まあ飲め飲め!」


 直立不動のゴヨウに、美魔女な大地母神と海母神が酒をすすめた。


 元々、地球意志も大地母神も海母神も数千年の間、二十歳前後の女性の姿であった。


 それがここ数十年で急激に力を失い、衰えた。


 それは人類による環境破壊の結果だ。


 大地に産まれて死したもの、その生命は大地に還る。


 海に産まれたものも同様だ。そうして命は循環し、地球は新たな再生を繰り返してきた。


 その再生を妨げるのは人類だ。


 地球の再生が終わろうとしているのだ。


「危機を救え!」


「戦ってこーい!」


「い、いってきまーす!」


 怒りの大地母神と海母神に見送られ、ゴヨウは虚無の中へと出陣した。






 果てしない戦いの荒野が広がっている。


 ゴヨウは「猟犬」と呼ばれるアーマー騎兵(体高四メートルほどの人型の黄巾力士ロボット)に乗りこみ、虚無の尖兵と戦いに臨む。


「いくぞおー!」


 明日を捨てたゴヨウの気迫。


 それに応えるかのように、猟犬は足裏の風火輪で荒野を疾走する。


 猟犬のヘビーマシンガンが火を吹き、無数の敵アーマー騎兵を撃ち抜き、爆発炎上させる。


 肩のミサイルランチャーから発射されたミサイルは、敵アーマー騎兵の中心で大爆発を起こす。


 ゴヨウは猟犬を右に左にと駆り、ヘビーマシンガンやミサイルの重火器で撃墜していく。


 敵アーマー騎兵の中を自在に駆け抜ける姿は、緑の稲妻のようでもある。


「ゴヨウ!」


「私達もついてるよ!」


 援軍がやってきた。


 「桃熊」に乗ったカオスと、「狂犬」に乗ったメロリンだ。


 カオスもメロリンも女性であり、コックピット内では魅惑の水着姿を披露している。


 そして、ゴヨウよりはるかに強い。


 カオスの桃熊が右腕と一体化しているガトリングガンで、敵アーマー騎兵を蹴散らす。


 ――ドシュ!


 メロリンの狂犬は、肩に担いだロケットランチャーを発射した。敵アーマー騎兵がまとめて数体、爆発した。


 ゴヨウの猟犬、カオスの桃熊、メロリンの狂犬。


 三体のアーマー騎兵は、敵陣の中を縦横無尽に駆け抜けた。


「俺の出番ないね……」


 ゴヨウはコックピット内で青ざめた。


 カオスは、宇宙創生時から瞑想を続けてきた神だ。


 今、地球を襲う「混沌カオス」との関係は今一つ不明だ。あるいは混沌の分身の一つだが、あえてゴヨウの味方になったか。


 メロリンはネットの海から産まれた生命体だ。


 AI世界の女王であり、ネットの全てを支配する存在でもある。


 そのカオスとメロリンは融合し、更に二つに分かれて、今に到る。


 カオスもメロリンも超常の力を操り、ネット世界をも自在に操る。


 二人は男でも女でもなかったが、女の顔を得て人類を守る側についた。


 命を産み出し、育む女性だからこそ、人類の未来を守ろうとしている……


「ゴヨウ、何してんの!」


「あたし達についてきて!」


 カオスとメロリンのアーマー騎兵の後を、ゴヨウの猟犬が追う……



   **



 グレースは大学が冬休みだ。


 なので、友人のイブを部屋に呼んだ。


「何よこれ! 散らかってるじゃない!」


「へへ〜、ごめ〜ん……」


 驚くイブと、苦笑するグレース。


「もう、掃除と洗濯よ!」


 と、イブはグレースの部屋の掃除を始めた。


 洗濯物も洗濯機に放りこみ、その間にキッチン、浴室、トイレと掃除する。


「うーん、重ーい!」


 グレースは洗濯物を近くのコインランドリーで乾かした。


 アローン、ジェット、ブルの三勇士(三妖精)も部屋の掃除を手伝う。


 昼前には、部屋の中は完璧に整理整頓されていた。


「全くもう、下着まで放りっぱなしで……」


「ご、ごめ〜ん……」


「あ。もう、こんな時間…… さ、お昼を作るわ!」


 イブはグレースの部屋のキッチンで、昼食の準備に取りかかった。


 二人の仲は、いつもこのようなものだ。


 イブがグレースの部屋に遊びに来れば、数時間は部屋の整理整頓になる。


「イブってばすごーい、家庭的ー!」


「そ、そう……」


「イブならいつでもお嫁さんに行けるねー!」


 グレースの言葉に頬を染めたイブは、アローン(※ぬいぐるみに似た妖精形態)に振り返り、意味ありげな微笑を浮かべた。


(な、なんだよ、何が起きてんだ……?)


 アローンは冷汗が出た。先日は、酔っぱらったイブを自宅(※悪の組織のアジト)へ送り届けた。


 たったそれだけだが、何かが急激に変わってしまったような気がする。


 イブはアローンに振り返り、ウインクした。なんだか「ね、ダーリン♥」と言われている気がした。


(これは修羅場突入フラグでは……?)


 アローンは一人、戦慄した。


 昼食の準備は、もうじき終わる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ