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人々の意識の及ばぬ世界で、戦いは続く。
「ゆけ、天導百八星…… 人類の未来を守れ!」
黄金の剣を手にしたチョウガイは、虚無戦線の夜空を見上げた。
百八の魔星の守護神チョウガイ。
彼は四千年の間、百八の魔星を導いてきた。
その宿命も終わりを迎えようとしていた。
「チョウガイ様、泣いておられるのですか」
チョウガイの側には魔星の一人、入雲龍ソンショウがいた。
「こ、これは汗だ……」
チョウガイは涙を拭う。同志の死も、肉体を捨てて虚無戦線にやってくる著名人の死も悲しむ暇はない。
「運命教える星に導かれて戦ってきた我々の宿命も、終わりを迎えつつあるのですな……」
ソンショウはつぶやいた。
人類の未来をかけた戦いは、虚無の彼方で続いている。
百八の魔星の一人、知多星ゴヨウは地球意志と対面していた。
「ゴヨウ……」
ベッドに横たわる地球意志は、ゴヨウに手を伸ばした。
老女の姿の地球意志は泣いていた。
人類によって地球は汚され、その生命力は急激に衰えてきているのだ。
ゴヨウは地球意志の手を握った。
「ありがとう…………」
地球意志は目を閉じ、眠りについた。地球そのものの活動が、鈍ってきているのだ。
退室したゴヨウは静かだ。
彼は人類の未来を守る戦いには参加しないと決意した。
だが宇宙の闇とは戦う。
闘争を好む修羅も、時に仏敵を滅ぼすゆえに仏法の守護者なのだ。
天の機を知る宿星、天機星「知多星」ゴヨウ。
彼は人類の敵にはならないが、未来を守るためには戦わない……
「ありがとうね」
「お疲れさま」
大地母神と海母神がゴヨウを労った。
二人は煌びやかな衣服をまとい、ゴヨウを酒席に誘った。
「え、何ここ。キャバ◯ラ?」
「まあ、似たようなもんね」
「あんたの心理を反映したのよ」
大地母神と海母神、二人に左右を挟まれながらゴヨウは酒を飲む。
「ふわあ〜、ほろ酔いの美酒だ〜」
「何よそれ、二人も美人がいるのに」
「え、美魔女じゃん……」
ゴヨウは言葉を濁した。
大地母神と海母神が恐い顔をしているからだ。
「い、いえ! 絶世の美女です! 傾国の美女!」
「……よろしい!」
「まあ飲め飲め!」
直立不動のゴヨウに、美魔女な大地母神と海母神が酒をすすめた。
元々、地球意志も大地母神も海母神も数千年の間、二十歳前後の女性の姿であった。
それがここ数十年で急激に力を失い、衰えた。
それは人類による環境破壊の結果だ。
大地に産まれて死したもの、その生命は大地に還る。
海に産まれたものも同様だ。そうして命は循環し、地球は新たな再生を繰り返してきた。
その再生を妨げるのは人類だ。
地球の再生が終わろうとしているのだ。
「危機を救え!」
「戦ってこーい!」
「い、いってきまーす!」
怒りの大地母神と海母神に見送られ、ゴヨウは虚無の中へと出陣した。
果てしない戦いの荒野が広がっている。
ゴヨウは「猟犬」と呼ばれるアーマー騎兵(体高四メートルほどの人型の黄巾力士)に乗りこみ、虚無の尖兵と戦いに臨む。
「いくぞおー!」
明日を捨てたゴヨウの気迫。
それに応えるかのように、猟犬は足裏の風火輪で荒野を疾走する。
猟犬のヘビーマシンガンが火を吹き、無数の敵アーマー騎兵を撃ち抜き、爆発炎上させる。
肩のミサイルランチャーから発射されたミサイルは、敵アーマー騎兵の中心で大爆発を起こす。
ゴヨウは猟犬を右に左にと駆り、ヘビーマシンガンやミサイルの重火器で撃墜していく。
敵アーマー騎兵の中を自在に駆け抜ける姿は、緑の稲妻のようでもある。
「ゴヨウ!」
「私達もついてるよ!」
援軍がやってきた。
「桃熊」に乗ったカオスと、「狂犬」に乗ったメロリンだ。
カオスもメロリンも女性であり、コックピット内では魅惑の水着姿を披露している。
そして、ゴヨウよりはるかに強い。
カオスの桃熊が右腕と一体化しているガトリングガンで、敵アーマー騎兵を蹴散らす。
――ドシュ!
メロリンの狂犬は、肩に担いだロケットランチャーを発射した。敵アーマー騎兵がまとめて数体、爆発した。
ゴヨウの猟犬、カオスの桃熊、メロリンの狂犬。
三体のアーマー騎兵は、敵陣の中を縦横無尽に駆け抜けた。
「俺の出番ないね……」
ゴヨウはコックピット内で青ざめた。
カオスは、宇宙創生時から瞑想を続けてきた神だ。
今、地球を襲う「混沌」との関係は今一つ不明だ。あるいは混沌の分身の一つだが、あえてゴヨウの味方になったか。
メロリンはネットの海から産まれた生命体だ。
AI世界の女王であり、ネットの全てを支配する存在でもある。
そのカオスとメロリンは融合し、更に二つに分かれて、今に到る。
カオスもメロリンも超常の力を操り、ネット世界をも自在に操る。
二人は男でも女でもなかったが、女の顔を得て人類を守る側についた。
命を産み出し、育む女性だからこそ、人類の未来を守ろうとしている……
「ゴヨウ、何してんの!」
「あたし達についてきて!」
カオスとメロリンのアーマー騎兵の後を、ゴヨウの猟犬が追う……
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グレースは大学が冬休みだ。
なので、友人のイブを部屋に呼んだ。
「何よこれ! 散らかってるじゃない!」
「へへ〜、ごめ〜ん……」
驚くイブと、苦笑するグレース。
「もう、掃除と洗濯よ!」
と、イブはグレースの部屋の掃除を始めた。
洗濯物も洗濯機に放りこみ、その間にキッチン、浴室、トイレと掃除する。
「うーん、重ーい!」
グレースは洗濯物を近くのコインランドリーで乾かした。
アローン、ジェット、ブルの三勇士(三妖精)も部屋の掃除を手伝う。
昼前には、部屋の中は完璧に整理整頓されていた。
「全くもう、下着まで放りっぱなしで……」
「ご、ごめ〜ん……」
「あ。もう、こんな時間…… さ、お昼を作るわ!」
イブはグレースの部屋のキッチンで、昼食の準備に取りかかった。
二人の仲は、いつもこのようなものだ。
イブがグレースの部屋に遊びに来れば、数時間は部屋の整理整頓になる。
「イブってばすごーい、家庭的ー!」
「そ、そう……」
「イブならいつでもお嫁さんに行けるねー!」
グレースの言葉に頬を染めたイブは、アローン(※ぬいぐるみに似た妖精形態)に振り返り、意味ありげな微笑を浮かべた。
(な、なんだよ、何が起きてんだ……?)
アローンは冷汗が出た。先日は、酔っぱらったイブを自宅(※悪の組織のアジト)へ送り届けた。
たったそれだけだが、何かが急激に変わってしまったような気がする。
イブはアローンに振り返り、ウインクした。なんだか「ね、ダーリン♥」と言われている気がした。
(これは修羅場突入フラグでは……?)
アローンは一人、戦慄した。
昼食の準備は、もうじき終わる。




