守護者編 消える事なき魂の炎!の巻!
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世界の向かうべき方向とは?
今、世界を襲う苦難は「神を倒す戦い」なのだ。
創作の世界で超人と超神が戦ったように、人類も神に対して自らの力と知恵、勇気と理解を示さねばならない。
人類の一人一人に混沌の波動は問う。
何のために生きているのかと。
何のために命をかけているのかと。
その答えを出した者だけが未来へ進む。倒れても後を継ぐ者がいる。
命を守る、未来へつなぐ。
人類が四百万年続けてきた事とは、そのようなものだ。
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七郎――柳生十兵衛三厳――は冥府で戦っていた。
夜の街にも似た冥府の片隅で、人々を助けだすのだ。
それは某ゲームにそっくりだ。七郎はナイフと青じそ数枚を持って、怪物あふれる冥府に飛びこんだ。
「青じそで体力が回復してたまるかー!」
七郎は叫びながらナイフで横薙ぎに斬りつけた。向かってきたゾンビの首が飛ぶ。
街中を駆け抜け、ゾンビやゾンビ犬、更にゾンビから進化した異形の怪物を相手にしながら、逃げ遅れた人々を救い出す。
「さあついて来い!」
うずくまって泣いていた娘を引き起こし、七郎は救出ポイントへ案内した。
数名の男女が集まるビルの屋上で照明弾を打ち上げると、夜闇の中からヘリコプターが舞い降りてきた。
「さあ行け、魂の向かうべき場所へ……」
七郎は夜の彼方に飛び去っていくヘリコプターを見送った。
彼は死後に聖ウル ラに導かれ、冥府で救援活動を続けていた。
生前は謎に満ちた人生を送り、死後は冥府で救いを待つ人々を助けるために戦うとは。
それは正しく仏法天道の守護者であった。
「退屈はしないが、たまには楽させろ!」
七郎はカエル人間へ向かっていった。
カエルと人間が融合したかのような怪物は、生前は人間であったのだ。
冥府では生前の生き様を反映した姿となる。
善悪ではない、生き様だ。
他者を喰らう生き様のゆえに、この者はカエル人間になったのだ。
「うお、ぐお……」
一瞬の油断をつかれて、七郎はカエル人間の巨大な口に丸呑みにされた。カエル人間の強力な消化液によって、七郎は骨やナイフまで溶かされてしまうのだ。
――俺は負けん!
七郎の魂は一切の光なき虚空をさまよう。
生前は幾度も死線に踏みこみ、死後は仏法天道の守護者として幾度も蘇り、人々を助ける戦いに臨んできた七郎。
その魂は数千回の死を経て尚、闘志を燃え上がらせていた。
著名な剣客として後世に名を残す七郎は、消える事なき魂の炎を宿していたのだ。
――俺をもう一度戦わせてくれ!
果たして七郎を戦場に向かわせるのは何なのか。
幼い頃から追いかけた父の柳生又右衛門宗矩と、師事した小野次郎右衛門忠明、その二人の背中か。
あるいは己が成し遂げた「無刀取り」の最高の一手か。
七郎は無刀取りの妙技で三代将軍家光の辻斬りを止め、大納言忠長の狂気を制し、由比正雪と丸橋忠弥の暴走を食い止めた。
最高の一手を追求する、その思いが七郎を仏法天道の守護者たらしめているのか。
――いいですよ、気をつけてね〜
明るく優しげな女性の声。それは「戦場における良き死」の守護者、聖ウ スラの声だった。
謎の女アイダと共に七郎は戦う。
アイダはハンドガンでゾンビ犬を撃ち、七郎はナイフすら捨てて「追跡邪」へ組みついた。
次の瞬間には、追跡邪の巨体が背中からアスファルトの大地に叩きつけられていた。
刹那の間に閃いたのは、七郎の背負投だ。
柔よく剛を制す、それを体現した柔道の技だ。
「これを使って!」
アイダは七郎に向かってロケットランチャーを放り投げると、背を見せて夜の闇の中に駆け出した。
彼女の本来の立場では、七郎に助力するのは許されぬのだろうと思われた。
七郎はロケットランチャーを拾い上げた。追跡邪も身を起こしてきた。
――グオオオオ!
追跡邪は七郎の息の根を止めんと、駆け出した。
「当たれえっ!」
七郎はロケットランチャーを発射した。ロケット弾は追跡邪に命中し、激しい爆発が巻き起こった。
冥府で人々を救う七郎の戦いは続く。




