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虚無戦線  作者: MIROKU
混沌極まる時
13/99

守護者編 季節は変わり……!の巻!


   **


 夏は終わった。少年少女は熱い恋の季節を過ごせたろうか。


 夏の守護者「サマー・テンプテーション」は再び眠りについた。人類が存続しているならば、来年も目覚めるはずだ。


 そして季節はハロウィンを迎える。


 人々の活力は未来へ向かって動き出す。


 一人が百歩進んでも世界は動かない。


 万人が一步を進んで初めて世界は動くのだ。


 未来を守るとは、未来を創っていく事でもある。欲望や計算で幸せな未来は訪れぬ。


「……新たな風が吹くか」


 百八の魔星の守護神チョウガイは、とある高峰から空を見上げていた。


 人間から半神半人の存在となって四千年。長ランをまとい、黄金の剣を手にした青年の姿であるチョウガイも、今が人類最大の危機だと感じていた。


「新たな風を吹かすのは、若き獅子達と麗しき娘達ですよ」


 チョウガイの傍らには導師姿の天間星「入雲竜」ソンショウがいた。


 即身仏の修行を完遂したソンショウは、この世とあの世を自在に行き来できる。自力で人間を越えたのだ。


「ふむ……」


 チョウガイは尚も美しい青空を見上げていた。


 超人。


 美少女戦士。


 彼らは男と女の概念の顕現だ。このような偶然があるのか。


 彼らの戦いは宇宙の「運命」とシンクロし、人類の未来を守るエネルギーとなっている。


「ところで、ハロウィンはどうすんだ?」


 ソンショウは――


 いや、魂は同一にして別の存在であるしょうは質問した。


「ゾフィーさんの事か?」


 チョウガイは――


 いや、魂は同一にして別の存在であるがいは咳払いした。


 彼らは祖父が兄弟であり、遠い親戚になる。年齢は同じだが一応、剴が兄貴分である。


「俺はゾフィーさんを守る!」


 空に向かって叫んだ剴の顔が紅潮していく。夏の間に、剴とゾフィーに何かあったのだ。


 翔は剴を見つめてニヤニヤしていた。彼もまた、彼女のギテルベウスと夏の思い出を作っていた。


「俺は…… 全ての仏敵を降伏ごうぶくし、人類の未来を守る!」


 それは男の魂の叫びであった。


 シリアス一辺倒で決してギャグなどやらない性格だったチョウガイが、ゾフィーという女性を愛した末に到達した境地であった。


 その気持ちは翔にも理解できる。翔もまたギテルベウスという愛する者を守る決意であった。


 その時だ、空の彼方から一筋の光明が差しこんで、剴と翔の二人を照らしたのは。


 宇宙の果てから差しこんだ光は、超越の存在から認められた証であり、加護であり、祝福であった。


 光明は一瞬で消え、あとには爽やかな青空が広がっていたが――


 剴と翔は戦慄に冷や汗を流していた。


「な、なんだ今のは……」


 剴は不動明王の眷属という事になるが、その彼ですら感じた事のない強大な力を感じた。


「さ、さあ…… 天之御中か、アッバか……」


 翔もまた青空を見上げて顔を蒼くしていた。虚空蔵菩薩から力と知恵を授かる翔にも、今の光が何を意味するかわからない。


 ただ、己の生きる道だけは見えたような気がする。


「ゾ、ゾフィーさんに連絡しよう」


「お、俺もあいつに連絡しよう!」


 剴と翔は揃ってスマホを取り出し、愛する女性に連絡しようとした。


 だが、この高峰は圏外だった。






「遅いわよ二人とも~」


 ギテルベウスは居酒屋の一室で酒を飲んでいた。部屋にはゾフィーもいた。


 欧州系の美女二人が、日本の居酒屋の個室で酒を飲んでいるとは。なかなか絵になる光景だ。


「いやあ、わりわりい」


 翔は悪びれた風もなく、ギテルベウスの隣に座った。


 緑色の髪を持つ化粧の濃い妖艶な美女ギテルベウスはスカートだが、座布団の上にあぐらをかいている。


「す、すまん」


「いいええ」


 ゾフィーは座布団の上に正座していた。


 黒髪ショートヘアーの某密偵家族の母に似た美女ゾフィー。


 そんなゾフィーに剴の心音は速まった。


「もうじきハロウィンねえ」


 ギテルベウスはビールの中ジョッキをイッキ飲みした。危ないから真似しないように。


 そしてギテルベウスはハロウィンの夜に「この世」と「あの世」をつなげる役割を担う女妖魔でもある。


「そうですねえ」


 ゾフィーは隣に座った剴の杯にビールを注いだ。さりげなく豊かな胸を剴の二の腕に押しつけている。それだけで剴は天にも昇る心地だ。夏はもっと凄い事をしたのだが。


 そしてゾフィーはハロウィンの守護者「レディ・ハロウィン」に仕える忠実な侍女「フランケン・ナース」でもある。


 ギテルベウスとは親友だが、敵でもあるのだ。なんという皮肉な偶然か。


「お、俺はこいつを守るぜ」


 翔は照れ混じりにギテルベウスの肩を抱き寄せた。


「翔……」


 ギテルベウスは目を丸くした。


「兄貴とは戦う事になるかもしれねえ」


 そう言った翔はかつてないほどに真剣な眼差しをしていた。


「うむ、それでこそ天道なり」


「わ、私はお嬢様のお手伝いをしないといけなくて…… 剴さんを一人にしちゃうのが申し訳なくて……」


「だ、大丈夫だゾフィーさん。ワシにはゴヨウもついている…… そういえばゴヨウは?」






 ハロウィンを目前にして、心を一つにした者達が力を合わせる。


「バカップルどもを地獄に叩き落としてやるぜえー!」


 百八の魔星の軍師、天機星「知多星」ゴヨウは激怒した。必ずや厚顔無恥のバカップルを地獄に叩き落としてやるのだ。


「ツアッー!」


 クリスマスの守護者ガーディアン「サンタクロース」白銀マンも闘志を燃やしていた。


 守護者として使命を果たし、彼女いない歴数億年の白銀マンもまた、バカップルを憎んでいた。


 ここに最凶タッグ「ハロウィン・デストロイヤーズ」が誕生した!

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