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5話 禁忌にふれたよ


 フォレストアイが不幸な事故で機能不全に陥ったため、僕はダンジョンの外でスミレ達が出てくるまでずっと待っていた。



(お。ようやく出て来た……ボクからのサプライズを受け取ってよ!)



 僕はダンジョンの入り口に、これでもかというほどの花々を咲かせておいた。

 紫陽花に、パキラに、ベゴニアに、トケイソウに、ハイビスカスともう何でもごちゃ混ぜにしておいた花たちのフラワーゲートが彼女達を出迎え、その祝福には驚きを見せる。



「わ、なにこれ……すごいことになってる……!」

「レベル解放でお祝いってところかしらね?

 祝いの様式みたいなモノだから、そんなに感動しないの」


「えへへ……綺麗だねぇ~」

「スミレはのん気なものね……」



(あぁ、やはり花々に囲われたスミレ姫が一番お美しい……。

 その優しい笑顔に貢献出来たことは、ボクの一生の宝ですっ……)



 花たちの次は、猫娘族(アサシンキャット)の管理人が出迎えた。


「オオ、お疲れ様っス! どうやらバッチリだったみたいっスね?」

「ええ、私たちにかかればね」


「そだよ~それで私達さんじゅ、」

「スミレ。余計なことは言わない」

「ふぇえぇ……」


「これでギルドランクがFからEに自動で更新されるっス。まぁ登録するのは私の仕事なんですけど……。とにかくおめでとうっス。何か分からないことはあるっスか?」


「30レベルになったら、エトワールのホビット村に行けばいいんでしたっけ?」


「そうっス。しかし気が早いっスね。30レベルは私も結構かかったっスよ?

 長生きするコツは、あんまり焦らないことっス!」


「そうね、ありがと。世話になったわ」

「ありがとう~ネコのお姉さん~」


「頑張るっスよ~~!!」



 そうだ、ホビット村だ。思い出した。

 ホビットの奴ら、何度も()()()()()としつこかったのを覚えている……。


(あそこにはあんまりいい思い出がないんだけど……。

 彼女達のためなら火の中だって飛び込まなきゃいけないよな……ヨシ!)


 僕が謎の強がりを決意していると、彼女達は何故か街の方ではなく、森の外れまで歩いていく。

 こちらには特に何もなかったはずだが……?





「この辺にも、魔獣が居ないのね。仕方ないわ」

「どうしたの、マリィちゃん?」


「スミレ。今から本気で相手をして」

「えぇ……?」


「一気に強くなるなんて、何かの間違いかもしれないでしょ? だから誰も居ないところで試したかったの。でもモンスターは居ないから、スミレが相手をして」


 何やら穏やかじゃない展開だ。


 本当は彼女達には僕が贈る花束よりも重い物を持って欲しく無いのが本音だが、冒険者を目指している以上、その蛮勇も応援したいと思っている。荒事は似合わないと思っていても、彼女達の志を否定することなど僕に出来るはずがない。

 つまるところ、愛でたいという私欲よりもすくすく成長して欲しいという私欲が、ほんのちょっぴり上回っただけなのだが。



「さぁ、剣を抜きなさい。覚悟が出来たならね」



 マリーゴールドは彼女から離れて距離を取り、懐から杖を取り出して構えた。

 一方スミレはまだ躊躇っていたので、僕はその隙に周囲の安全確認をするために、スキル【気配察知】を発動した。



(100……200……300メートルまで人、及びモンスターの気配無し……。

 マリーゴールド様、人払いは済んでいるのでありますっ!!)



「わ、わかった……頑張るね……?」


 スミレもようやく剣を抜いた。

 3人の間に緊張が流れる……。




ダッ――


 スミレが走り出した!

 それと同時に、マリーゴールドが呪文を唱える!



 (めぐ)みの(みず)よ! (すべて)生命(いのち)(かて)(けもの)(しか)り、(へび)もまた(しか)り!


【水蛇】(アクアヴァイパー)!!



「やぁああっ!!」


 下段からの袈裟斬りで、水の猛威と化した蛇の化身をスミレが真っ二つに両断した。

 蛇は形を失い、ただの水となって広範囲に散って飛び、()()()()()()()()()()()



ぷしゃっ……



(二人の共同作業で産まれた、神聖なお水……??

 あぁ、神よ! 不敬なボクを、どうかお許しくださいッッ!!)


ぺろっ


ぺろっ


ごくごく……。


(お許しください、お許しください……)



 僕が倫理の壁を突破し観葉植物と化している間にもスミレは止まらずに駆け寄り、マリーゴールドへと一直線に距離を詰め、その勢いのままに斬りかかる!



「はぁっ!!」


カッ――


 剣と杖でのかち合いは不思議な音を立て、剣から滴っていた水がまとめて飛沫を上げる。そのまま膠着状態になるかと思われたが、マリーゴールドは新たな魔法を発動した。



【焔狼】(フレイムハウンド)!!


 突如スミレの足元から狼の(あぎと)が開き、彼女を一口で丸のみにしてしまった。






「ふぅ……私の勝ちね」

「あっちちち……酷いよ、マリィちゃん、黒焦げだよぉ~!」


「燃やす前にちゃんと水をぶっかけたでしょ、服も乾いたわよね?」

「う~……ちょっと器用すぎ~……」


「ダメージはどのぐらい?」

「えっとぉ……結構痛かったから、たぶん4割ぐらい……」


「そんなものかしらね?

 確かに私達、30レベルになっちゃってるみたいね……」

「私が死んだら自分も死ぬ、とかいつも言ってるくせに、ここまでしないでよ~!」



(30レベルになっちゃった……?)

 聞き捨てならない言葉だった。



 昨日まで、彼女達は10レベルになったばかりのはずだった。だがレベルの上限が解放されて今しがた洞窟から出てくると、30レベルになっていた?


 上限に引っ掛かったまま、経験値をストックしていたのだろうか? いやしかし、そもそもそんな簡単にレベルは上がらないハズだ。高レベルのモンスターでも倒さない限りは……。


 そこまで考えたが、僕は目の前の光景を見ているうちにどうでも良くなってしまった。



「ゴメンゴメン……ほらスミレ、仲直りよ」

「うぅ~~ゆるす~~」



 彼女達はお互いの健闘を称えて抱き合っていた。

 お水もおいしいし、ここが楽園(ぱらいぞ)か……。


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スミレとマリーゴールド。

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