表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/83

第39話 祈り

 それから、時間は流れていった。美衣子がここに来てから既に数時間が経過している。相当難しい手術なのだろう。先程から美衣子は何度も何度も時計を確認して、進んでいく時計の針を凝視していた。


「雪ちゃん……」


 時折、ぽつりと美衣子は雪山の名前を口にした。その度に看護婦さんは気の毒そうな顔をして、


「美衣子ちゃん、手術、長引くから病室に戻る?」


 と気遣ってくれた。しかし、美衣子は首を横に振った。


「いえ……。私、雪ちゃんの傍で雪ちゃんを応援したいんです。今まで何度も、数え切れないくらい雪ちゃんは私を助けてくれた。私を大切にしてくれた……。だから私も雪ちゃんの事を少しだけでも助けてあげたいんです。せめてここで力になれるように祈らせてください……お願いします」

「……そうね。美衣子ちゃんが祈ってくれたら、きっと雪山君は元気になるわ。美衣子ちゃんの祈りを、神様が聞いてくれないわけないものね」

「……はい」


 包帯を巻かれた美衣子の両手。美衣子はその手を力一杯合わせて、ぎゅっと握り締めていた。そのせいで包帯がところどころ捲れ、血が滲んでいる。


「美衣子ちゃん、包帯、取り替える?」


 看護婦さんが心配そうにそう訊いてきたが、痛みに顔を歪めながらも美衣子はそれをきっぱりと断った。


「いいんです。雪ちゃんはこれよりもっと辛い思いをしてる。一緒に苦しんで一緒に乗り越えられるように頑張りたいんです」

「そう……」


 そこで会話は途切れ、そのまま時計の針は時を刻み続けていった。

 病室内は消灯時間を過ぎ、ほとんど真っ暗になる。それでも美衣子はただ両手を硬く握り締めるだけで、眠そうな顔を見せることも あくびをすることも無くじっと【手術中】の3文字を見つめ続けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ