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第37話 予感

 その頃、美衣子は病院のベッドの上でテレビを観ていた。この時間帯のテレビ番組はどれも退屈だ。

 なんとなく、気分でニュースに変えてみた。普段はニュースなど滅多に見ることは無いが、見たい番組が無いので仕方なく、暇潰しのつもりだった。淡々とした口調で喋り続けるアナウンサー。画面の端から誰かの手が伸びてきて、アナウンサーに書類を手渡した。それを受け取ったアナウンサーは、尚も淡々と書類を読み上げていく。


『臨時ニュースです。本日昼過ぎごろ、東京都の●●駅で、男性と男子高校生の間で何らかのトラブルがあり、もみあっている内に男子高校生が線路内に転落し、電車と接触したようです。男子高校生は重態で、先程近くの病院に搬送されました。詳しい情報が入り次第、お伝えします。』


 そのニュースに目が釘付けになり、美衣子は慌ててベッドから起き上がった。


「あれ? ……この駅って、すぐ近くの……」


 ……理由はわからないが、何故か少しだけ背筋が寒くなった。つい先程大きな救急車のサイレンが聞こえていたが、もしかして、その電車に撥ねられた人はこの病院に運ばれてきたのだろうか?

 その時、勢いよく病室の扉が開いて、看護婦さんが室内に飛び込んできた。驚いて、弾かれたようにそちらを見る美衣子。看護婦さんとばっちり目が合った。看護婦さんは慌てたように美衣子の傍へ小走りで駆け寄り、息を切らしながら美衣子の手を握って、蒼ざめてこう言った。


「……美衣子ちゃん、この間、お見舞いに来てた子は雪山君って子よね?」

「え? あ、はい。そうですけど……?」

「下の名前は?」

「……? 拓正です。雪山拓正」


 看護婦さんがごくりと唾を飲み込んだ。美衣子は首を傾げて、看護婦さんの次の言葉を待つ。


「美衣子ちゃん、ちょっと、一緒に来てちょうだい」


 看護婦さんはそう言うと、足早に病室を出て行った。美衣子は言い知れぬ不安を覚えながら、慌てて看護婦さんの後を追いかけた。

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