カインと宿命
カインは現在17歳。このベクト王国の第一王子である。
兄弟は他に15歳と13歳の弟と10歳の妹がいる。
小さい時から王になるための教育を受けてきているのだが
民の子供たちと同じ学校に通い、一緒に遊んだりしているために
あまり“王”になるということの意味がよくわからなかった。
(どうして王が必要なんだろ?みんな平等の方がいいのに・・・)
カインは選挙で首長が選ばれる民主主義国家に強い興味を持っていた。
だが、現在の君主制に関する疑問を直接父にぶつける事はできないでいた。
カインはいつもジャンと一緒にいる。
というよりも、ジャンがカインの傍を離れないのである。
ジャンはカインの王宮の秘書官の息子である。
カインとは同い年であるために、いつも王の側近の父から
“カイン様をお守りしろ”と言われていた。
だが、ジャンがカインの傍にいるのはそれだけが理由ではない。
カインにはジャンを始めとする周りの誰もを自分の味方にしてしまうような
不思議な魅力があった。
カインには邪というものが無かった。
極めて屈託の無い純粋な心が、周りにいる人の心を打つのである。
ジャンはカインのことを
“この国の王と成るべくして生まれた人物”だと思い
一生彼について行こうと決心していた。
・・・あの事が起こるまでは・・・
※ ※ ※
その日は王宮全体が暗い雰囲気に包まれていた。
普段はどっしり構えている父や母も慌しく動いており、
ただ事ではない様子が伺われた。
「ねえ、一体どうしたのかな?」
カインは一緒にいたジャンに尋ねた。
「さあ、私にもわかりません。
父も私には何も話しては下さいませんでした」
「そうか・・・」
二人は王宮の混乱した状態をただ黙って見ているだけだった。
その日の夜、カインは父と母の下に呼ばれた。
「父上、母上。 今日はどうされたのですか?
あの騒ぎようは一体・・・」
「カイン、私たちの話を落ち着いて聞いて欲しいのだ。
お前なら大丈夫だと思うが・・・」
父はカインの顔を辛そうに見つめた。
母は既に目にいっぱい涙を溜めていた。
「今日、ついに金の星と土の星とが重なった」
「何ですって?」
カインは耳を疑った。
「でも、あれは20年周期だと・・・」
「そうだ。だが、今回は少し早かったようなのだ。
まさか2年も早いとは・・・」
カインはショックのあまりに声が出ず、しばしの沈黙が流れた。
やがてカインが口を開いた。
「では、さっそく決めるということですか?」
「そうだ。これはできるだけ早い方がいい。
時間が経てば経つほど選ばれる方は苦痛になるだろうからな」
「いつの予定なのですか?」
「5日後、この王宮の前に皆を集める。
カイン、お前も行くことになる。
覚悟はできているか?」
「はい。わかっております、父上」
「カイン・・・」
カインの母は泣き崩れていた。
「母上、心配しないで下さい。僕は大丈夫です。
こうなることは覚悟していましたから」
カインの父は、カインが王子だからとの理由で
主神の守役の選考から外すようなことはしなかった。
それは18年前、隣国「カイライ」の守役が決まった時に
既に覚悟をしていたことだった。
次はわが国の番・・・
カインに兄弟がたくさんいるのも
それを考慮しての事だったかもしれない。
だが、わかってはいたものの
いざ息子を守役の選考に出すということは
自分の身を切られるがごとくに辛かった。




