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第1話 ようこそ、少年。

「やあやあ、待っていたよ」


 ここは……どこだ?

確か会社で仕事中であったはずなのだが。


 声のした方をみると、男とも女ともつかないような中性的な人物がいた。


「ここが、どこか。非常に難しい質問だね。君たちが天国、あるいは地獄と呼んでいる場所の狭間ってとこかな?」


「はぁ」


 よくわからない言い回しだ。というか、天国?地獄?だって?その言葉から一つの仮説が思いついた。とても信じられない、信じたくもない仮説だ。


「え、僕、死んだんですか?」


「うん、そうだね!過労死!」


「……まあ、そりゃそうか」


 時間外労働に次ぐ時間外労働、眠気を抑えるためのエナジードリンクの常飲。


 ……死んで当然か。


「まあ、そんなことはどうでもいいんだよね」


「よくないわ」


 目の前の美少年、あるいは美少女は一つ咳払いをすると、張り切って言った。


「パンパカパーン!おめでとう!君は選ばれた!」


「何に?」


「異世界移住キャンペーンさ!」


「異世界移住キャンペーン?」


「読んで字のごとく、書いて字の如く!君を異世界へ案内してあげるよ」


「いらないです」


「ええっーーー!」


 すると目の前のいやに美形な人物は両手を上げて驚いた。


 ……なんだか行動が大げさだなこの人。


「現代の日本人は異世界大好きなのに……おかしいな、どうしてか聞いてもいいかい?」


「僕さ、田舎暮らしがしたかったんだよね、スローライフってやつ?」


「うんうん、で?」


「庭の手入れしたりさ、土いじってさ、自分で作った庭を見ながらゆっくりしたいわけ」


 もともと自然が好きだった。しかし、安定して生きていくためには首都圏に出なければならず、のんびり田舎暮らしは隠居してから始めようと思っていたのだ。


「なるほどね、でもそれって異世界でもできるよね」


 確かに、異世界でもできるだろう。

 しかし、肝心なことを忘れてはならない。


「異世界にさ、冷蔵庫ってあるの?」


「え?」


「いわゆるスタンダードな剣と魔法の異世界ってさ、電気通ってないでしょ、別にスローライフっていっても自分で開拓したり発明したいわけじゃないんだよね」


「と、都会っ子め」


「いや、今時田舎にも電気は通ってるから」


「うーん……」


 目の前の神様みたいな美少年あるいは美少女(もう神様でいい)はしばらく悩むと、顔をあげて言った。


「分かった、そのあたりは僕が何とかしてあげるよ、そしたら異世界行ってくれる?」


「……行かせたいのか」


「……い、いやぁ?別にぃ?」


 神様はあからさまに目をそらして口笛を吹き始めた。

 ……怪しすぎる。


 僕が疑惑の目を向けていると、神様はどこからともなく書類を取り出して、読み始める。


「ああ、なるほどね。うーん、どうせ来世もきっと、会社勤めの社畜からの過労死をする可能性の方が高いと思うよ」


「マ?」


「うん、マジ。同じ地球で転生する場合、また日本で生まれることが決まってるから、君のその安定志向だと、猶更」


 神様は書類をペラペラと軽快にめくりながら言った。


 そうであるならば話は変わってくる。僕の定年退職からのどっか田舎の古民家を買い取って、家庭菜園して、庭園を手作りの計画が水の泡じゃないか。


 このままだと来世は今世の二の舞になってしまうかもしれない。


「それなら、ちょっと僕に賭けてみてよ。なぁに、悪いようにはしないって!ね!ね

!」


 神様は手を大仰に振って、説得を試みている。


 ……どうにも怪しいが、しかたないここは乗ることにしよう。

 このまま来世で再び過労死するよりはいいかもしれない。

 まあ、神様(推定)だし。ここは賭けてみることにするか。


「わかった」


「よかったぁーありがとうね」


 そいつは僕の手を握ってぶんぶんを大げさな握手を強制的に交わした、交わされた。


 感謝されるようなことなのか?なんか不安になってきたぞ?


「じゃあ、飛ばすからね、各種説明書は追って送るから!」


「おおお……!!?」


 神様は僕の頭上で指を使って円を書くように空中をなぞると、足元から眩い光があふれ出した。


「じゃねー」


 その言葉が耳に届くと同時に、俺の体は眩い光の奔流に包まれた。

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