最終話 それでも、この道を
最終話です。
最後まで、どうぞよろしくお願いします。
始まりの村で、皆と、それぞれの道を、確認し合った、数日後。
俺は、久しぶりに、長い時間をかけて、ログアウトすることにした。
「行ってきます」
俺の言葉に、ユイ、タクト、クロトが、それぞれ、頷いた。
「また、こっちで、会いましょう」
ユイの言葉に、俺は、微笑んだ。
「はい、必ず」
――目を開けると、そこは、見慣れた、病室だった。だが、その光景は、以前と、少し、違っていた。
「稜、退院の、準備よ」
母が、明るい声で、そう、告げた。
俺は、身体を、起こしながら、周囲を、見渡した。荷物が、既に、いくつか、まとめられている。
「今日、退院、できるんだ」
「ええ。先生も、太鼓判、押してくれたわ」
ちょうどその時、佐伯先生が、病室に、姿を見せた。
「稜くん、準備は、どうだ」
「はい、大丈夫です」
先生は、俺の様子を、確認しながら、静かに、微笑んだ。
「本当に、よく、頑張ったな。三ヶ月前、初めて、君に、余命宣告を、伝えた時のことを、思い出すよ」
その言葉に、俺は、あの日のことを、鮮明に、思い出した。天井の染みを、数える日々。あの時の、絶望に、近い気持ち。
「先生」
俺は、静かに、口を開いた。
「Elysiumに、ログインして、本当に、良かったです」
「うん。良い判断だった。それに――君が、あちらで、選んだ生き方も、素晴らしいものだったと思う」
先生の言葉に、俺は、頷いた。
「これから、あちらの世界とは、どう、付き合っていくつもりだ」
先生の問いに、俺は、少し、考えてから、答えた。
「時々、ログインして、まだ、行ったことのない場所を、見てみたいです。仲間たちとも、機会があれば、また、一緒に、冒険したいですし」
「いいと思う。ただ――」
先生は、少し、真剣な表情に、なった。
「現実の生活も、大切にしてほしい。学校のこと、これからの、進路のこと。色々、考えていく、必要がある」
「はい、分かってます」
俺は、しっかりと、頷いた。
荷物をまとめ、俺は、母と共に、病院を、後にした。三ヶ月ぶりの、外の世界。太陽の光が、想像以上に、眩しく、感じられた。
「眩しい……」
俺の呟きに、母が、優しく、笑った。
「少しずつ、慣れていきましょう」
家に帰る道中、俺は、車の窓から、流れていく、景色を、静かに、眺めていた。見慣れた、街並み。だが、その全てが、以前とは、少し、違って、見えた。
その日の夜、久しぶりに、自分の部屋のベッドで、俺は、静かに、目を閉じた。
――目を開けると、そこは、始まりの村の、宿の一室だった。
「おかえりなさい」
ミラの声に、俺は、頷いた。
「ただいま、です。今日、退院しました」
「おめでとうございます」
ミラの声には、確かな、温かさが、感じられた。
一階に降りると、ユイ、タクト、クロトが、それぞれ、俺の様子を、確認するように、見つめた。
「退院、おめでとうございます!」
ユイの言葉に、俺は、微笑んだ。
「ありがとうございます」
その夜、俺たちは、久しぶりに、宿の食堂で、皆で、食事を、囲んだ。
「これから、俺たちの、活動も、少しずつ、変わっていきますね」
タクトの言葉に、俺は、頷いた。
「はい。でも――この繋がりは、これからも、続いていくと、思います」
俺の言葉に、皆が、それぞれ、頷いた。
数日後、俺たちは、それぞれの道へと、少しずつ、進み始めた。ユイは、現実での、看護学校の復帰に、備え、Elysiumでの活動を、徐々に、減らしていった。タクトも、同様に、リハビリのプログラムに、専念するため、こちらでの時間を、少しずつ、調整していった。
クロトは、始まりの村に、腰を据え、新人の指導を、続けていた。時折、俺は、彼と、模擬戦を、交わし、互いの、成長を、確かめ合った。
俺自身は、少しずつ、まだ見ぬ場所を、訪ね歩くようになった。ある時は、サーラと共に、あの遺跡の、さらなる調査に、協力し。ある時は、セリアからの、依頼で、新しいシステムの、実地テストに、協力した。
そして、現実の世界でも、俺は、少しずつ、日常を、取り戻していった。学校に、復学し、友人たちとも、少しずつ、関係を、再構築していった。
ある日の午後、俺は、母と、久しぶりに、街を、歩いていた。
「稜、最近、明るくなったわね」
母の言葉に、俺は、少し、照れくさくなった。
「そうかな」
「ええ。前は、いつも、どこか、思い詰めた、顔をしてた。でも、今は――」
母は、優しく、微笑んだ。
「自分の、生き方に、確信を、持ってるような、顔をしてる」
その言葉に、俺は、深く、頷いた。
「うん。あの世界で、色んなことを、経験して……自分なりの、答えを、見つけられた気がする」
「どんな、答え?」
母の問いに、俺は、少し、考えてから、答えた。
「奪わずに、生きる道。それは、決して、簡単な選択じゃ、なかった。でも――その選択を、貫き続けたことで、色んな人と、出会えたし、色んなものを、守ることが、できた」
俺は、空を、見上げた。
「それに――時には、その一線を、越えることも、あった。でも、それも、含めて、俺の、選択だったんだと思う」
母は、静かに、俺の話に、耳を傾けていた。
「これからも、その、生き方を、続けていくの?」
「うん。多分、これからも、ずっと」
俺の答えに、母は、深く、頷いた。
「それでいいと、思うわ」
その夜、俺は、久しぶりに、じっくりと、自分のステータスウィンドウを、開いてみた。
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【ステータス】
名前:リョウ
LV:49
HP:318/318 MP:222/222
STR:200 VIT:167
AGI:193 INT:125
冒険者ランク:A
名声:1,620
【所持スキル】
・痛覚遮断
・看破の真眼
・植物知識・中級
・木工の心得・初級
・調合の心得・初級
・回復魔法・上級
・回避の心得・上級
・風纏・中級
・身体強化・中級
・文献解読・初級
・並列詠唱・上級
・対人戦の心得・初級
・灼熱耐性・初級
・風刃・初級
・調停の心得・初級
【称号】
・一線を越えた者
・世界の歪みを正した者
・簒奪者
・世界の選択者
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このステータスの中に、俺が、この世界で、積み重ねてきた、全ての選択と、経験が、確かに、刻まれていた。
「ミラ」
俺は、静かに、呼びかけた。
「はい」
「これまで、本当に、ありがとうございました」
俺の言葉に、ミラは、少し、驚いたような、様子を、見せた。
「まだ、この世界との、付き合いは、終わってませんよ」
「そうですね。でも――ここまで、支えてくれたこと、改めて、伝えたくて」
俺の言葉に、ミラは、静かに、微笑んだ。
「私も、あなたと、共に、歩めたことを、誇りに、思っています」
窓の外、始まりの村の夜が、静かに、更けていく。三十日という、当初の、余命宣告から、始まった、この物語。その旅は、数え切れないほどの、出会いと、選択、そして、成長を、俺に、もたらしてくれた。
奪わない道を、俺は、選び続けた。時には、その一線を、越えることも、あった。それでも、俺は、この、自分自身の、選んだ道を、これからも、信じ続けていく。
現実の世界で、生きること。そして、この、Elysiumという世界で、まだ見ぬ景色を、見続けること。その、両方を、大切にしながら――俺の、これからの人生は、まだ、始まったばかりだった。
「命を喰うレベルアップ ―僕は誰かの余命で強くなる―」
その物語は、こうして、一つの、確かな、区切りを、迎えた。
だが、リョウの旅は、まだ、その先へと、続いていく。
最後まで、お付き合いいただき、
本当にありがとうございました。
「命を喰うレベルアップ
―僕は誰かの余命で強くなる―」
これにて、完結です。
奪わない道を選んだ、リョウの物語。
最後まで見届けてくださった皆様に、
心から、感謝申し上げます。
また、どこかで、お会いできますように。




