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【完結】王子を救うため再び異世界へ戻った不遇少女は、騎士団長に溺愛される 〜初恋の王子と一途な騎士団長の間で揺れる心〜  作者: 夜炎 伯空


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エピローグ『本当に、あたしにこんな日が来るなんて』

「本当に、あたしにこんな日が来るなんて――」


 胸の奥がじんわりと熱くなる。


 今日はカイルとの結婚式。


 あたしは従者の方々に手伝ってもらいながら、純白のウェディングドレスに身を包んでいた。


 鏡に映る自分の姿を見ても、まだどこか現実味がない。


 たくさんの困難を乗り越えて、王国全土が安定し――あたしたちはようやく、この日を迎えることができた。


「澪、綺麗だ……」


 不意に聞こえた声に振り返る。


 そこには正装に身を包んだカイルが立っていた。


 その真っ直ぐな眼差しに見つめられた瞬間、心臓が大きく跳ねる。


「ありがとう……。カイルも、すごくかっこいいよ……。って、いつも一緒にいるはずなのに、こういう場だと、なんだか照れちゃうね」


 思わず視線を逸らすと、カイルが優しく笑った。


「澪のその美しい姿を見ると、やっぱり特別な日なんだと感じるな――」


「ですね」


 くすりと笑い合う。


 そんな何気ないやり取りさえ、今日は特別に思えた。


「そういえば、レオン陛下も来てくださっていたぞ」


「はい、あたしも見かけました」


 結局、レオンは賢者エリーシャと始まりの巫女の助力を受けながら、王として国を導いていくことになった。


 カイル自身も、王という立場に縛られるより、辺境伯として柔軟に王国を支えていきたいと考えていたため、その結果は誰にとっても良いものだったのだろう。


 もっとも――


 王家というしがらみを嫌がっていたレオンのことだから、本当は理由をつけて王位から逃げ出そうとしていたのかもしれない。


 そんな姿を想像してしまい、思わず苦笑が漏れた。


「レオンは乗り気じゃなかったみたいですけど、あの二人がいれば、きっと大丈夫ですね」


「まあ、そうだな」


 回復魔法(ヒール)浄化魔法(キュア)の研究はさらに進み、扱える魔術師も少しずつ増えている。


 今もなお、魔石人形(ドール)を依り代としている始まりの巫女の元には“悪意の念”が集まり続けているらしい。


 けれど、王宮の魔術師たちが協力しながら浄化にあたっているため、かつてのような悲劇が繰り返されることはなかった。


 世界は少しずつ良い方向へと進んでいる。


 その未来の中に、自分たちもいるのだと思うと嬉しかった。


「準備が整いましたので、式場へお願いいたします」


「わかりました」


 従者の言葉に頷く。


「それでは行こうか、澪」


 差し出されたカイルの右手に、自分の手を重ねた。


 大きくて温かい手。


 そのぬくもりに触れた瞬間、不思議と緊張が和らいでいく。


 ここまで本当にたくさんのことがあった。


 苦しいことも、悲しいことも、何度もあった。


 それでも――


 今、こうして隣にカイルがいる。


 それだけで、過去の苦労さえ愛おしい思い出に変わっていく気がした。


 教会の扉がゆっくりと開かれる。


 その瞬間、温かな拍手があたしたちを包み込んだ。


 集まった人々の笑顔が目に映る。


 祝福の想いが伝わってきて、胸がいっぱいになった。


 カイルと並んでカーペットの上を歩く。


 一歩、一歩。


 これまでの人生を噛み締めるように進みながら、あたしたちは壇上へと上がった。



 神官が穏やかな声で問いかける。


「新郎カイル。あなたは新婦澪を生涯の伴侶とし、喜びの時も悲しみの時も、その手を離さず支え続けることを誓いますか」


「誓います」


 迷いのない声だった。


 その言葉に胸が熱くなる。


「新婦澪。あなたは新郎カイルを生涯の伴侶とし、喜びの時も悲しみの時も、その心に寄り添い続けることを誓いますか」


 あたしはまっすぐカイルを見つめた。


 優しくて、強くて。


 何度もあたしを支えてくれた人。


 この人となら、どんな未来だって歩いていける。


「誓います」


 自然と笑みがこぼれた。


 神官が高らかに宣言する。


「ここに二人が夫婦となることを認めます」


 再び拍手が響き渡る。


 そしてカイルがそっとあたしの頬に触れた。


 愛おしそうな眼差しに見つめられ、鼓動が早くなる。


 ゆっくりと距離が縮まり――


 祝福の中、あたしたちは永遠の愛を誓う口づけを交わした。


 短いはずのその時間が、永遠のように感じられる。



 あたしはカイルのことが心から大好きです……


 あたしを選んでくれて、本当にありがとう―― 



「カイル、あたしはあなたと出逢えて本当に幸せです。これからも末永くよろしくお願いします」


 目元が少し熱くなる。


 嬉しくて、幸せで。


 言葉だけでは足りないくらいだった。


「こちらこそ、澪に出逢えたことで、どれほどの喜びを得られたのか計り知れない……。本当にありがとう。そして、これからもよろしく頼む」


 優しく微笑むカイルを見つめながら、あたしも笑った。



 病院で生を終えようとしていた、あの日――


 あたしの人生は、きっと誰が見ても寂しいものだったと思う。


 苦しいことばかりで、報われないことも多かった。


 それでも。


 あたしは諦めなかった。


 最後まで理不尽な運命に抗い続けた。


 まるで物語の主人公みたいに。


 あの小さな意地のおかげで、今の結果に繋がったのかどうかはわからない。


 だけど――


 こんなあたしでも、ここまで辿り着くことができた。


 大切だと思える人と出逢って。


 心から愛しいと思える人に巡り逢って。


 こうして、同じ未来を歩いていける。


 それが今は、ただただ嬉しかった。


 隣を見ると。


 そこにはカイルがいる。


 あたしが苦しい時も、迷った時も、何度も手を差し伸べてくれた人。


 その優しい横顔を見つめるだけで、胸の奥が温かくなった。


 きっとこれから先も、楽しいことばかりじゃない。


 悩むこともあるだろうし、ぶつかることだってあるかもしれない。


 それでも――


 一人じゃない。


 カイルがいてくれる。


 そう思うだけで、どんな未来だって怖くなかった。


 だから。


 これから先は、この人とたくさんの幸せを積み重ねていきたい。


 何気ない朝に笑い合って。


 一緒に食事をして。


 くだらないことで言い合いをしては仲直りして。


 そんな当たり前の日々を、何よりも大切にしながら。


 隣にいるカイルと共に。


 笑い合いながら。


 支え合いながら。


 歩いていきたい。


 この人を、誰よりも大切にして。


 誰よりも幸せにしたい。


 そう、心から想った。



 カイルがそっとあたしの手を握る。


 握り返すと、彼も優しく微笑んだ。


 その笑顔が嬉しくて、自然とあたしも笑みを浮かべる。


 ――これは終わりじゃない。


 あたしたちの幸せな未来の始まり。


 昔のあたしは、結婚式が人生で一番幸せな日だと思っていた。


 だけど、違う。


 明日はもっと幸せで。


 その次の日は、もっともっと幸せで。


 そうやって二人で歩いていけたらいい。


 そんな未来を想いながら、あたしは愛しい人の手を握り続けていた――

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