第201話 鋼ノ狂体
ルティーナとエリアルの前に突如として姿を現した竜の魔物――デンゴラド。
ルティーナ達を外部からの侵入者だと判断すると、封印されたイスガ王国からの脱出に協力するよう要求してきたのであった。
『俺を倒すとでもいうのか? 何ができる?』
『だが貴様に興味が湧いたぞ』
『名前だけは聞いておいてやろう。我が名はリュウガだ』
ルティーナとリュウガがにらみ合う中、エリアルはその光景をじっと見守る。
「ルナ、魔物と何を話しているんだ?」
(俺は馬琴だ! リュウガでいいのか?)
(この子はルティーナ! 俺は彼女の意識の中に存在している!)
『ほぉ、ますます面白い……』
(ここから外に出たいなら協力しないこともないが、質問に答えてもらってもいいかな?)
馬琴は交渉を装い、疑問を投げかけ始めた。
だが、リュウガには聞かれる内容などおおよそわかっていた。
しかし半笑いで話を聞くことにする。
(なぜ、イスガに攻め込み、国民をこんな姿にした)
『ふん、やはりつまらん質問だったか……まぁいい、答えてやろう』
『我はこの世界を調べていた――』
リュウガは初めて立ち寄ったこの国で、巨大な爆弾が作られていることを知った。
『こいつらは危険な民族とみなし、兄者の言いつけの通り滅ぼそうとしただけさ……』
(兄者?)
そのまま、地上の人間を魔物化させ、城の上空から街を破壊し続けていたリュウガであった。
だが、イスガ王の封印により空が砂に埋め尽くされ、激しい砂流と砂圧にリュウガは巻き込まれてしまう。
そして身動きが取れなくなり、流されるままに何十年も彷徨っていたのだった――。
(それで砂の中を泳いでいるようにシャルに映ったのか)
『それがどうだ? 数か月前、突然、流砂が止まったかと思うといきなり岩と化したんだ』
(! まさか)
『閉じ込められたには変わりないが、流砂が止まってくれたおかげで、体の自由が利くようになったのさ』
リュウガは自力で岩を砕きながら、この場へ戻って来たという。
(そうか、俺達がこの国を封印してしまったから……)
「(結果的に助けちゃったってこと?)」
『そうか、貴様らのおかげで我は脱出できたのか! あははは』
『気が済んだか?』
『今度は我の番だな……』
リュウガは口から炎の玉を発生させ、ルティーナ達に構える。
『改めて問う』
『ここから地上に出ることに協力するなら、命だけは助けてやってもいいぞ――』
(くっ)
『いや、おかしいな』
『俺が居なくとも兄者達ならば、地上は既に滅んでいるはず……』
(「達」だと? 二匹以上、地上に? いや、居ないぞ――)
『居ないだと? 何を知っている……答えろっ』
「(でも封印したんだよね? 確実に一匹は――)」
『――っ! 兄者が封印されているだと!』
(ルナとの会話が――思念でつながっている以上、ダダ洩れか!)
『…………ぶっ、ぶははははっははぁ~っ! 小娘』
『何を考えているかと思えば……ハッタリだったか?』
(リュウガ! お前は何も知らないんだな)
『! まさか、貴様ら俺を封印するために、ここに来たということかっ!』
『貴様らと戯れている場合ではない! 一刻も早く兄者を――』
馬琴は、黒竜の前哨戦と位置づけ、『デストラクション・シューター――武装型電磁砲――』が通用するか勝負に出る。
『前哨戦……だと? ふざけたことを――死ねっ』
(しまった……思念が聞かれた!)
リュウガは馬鹿にされたことの報復に、ルティーナ達に向かって、火炎を今にもぶちまけようとしていた。
ルティーナは『デストラクション・シューター』の電極の準備が必要であったため、エリアルに防御するように指示する。
――その瞬間、リュウガは火炎を放出する。
エリアルは大剣に氷属性を与え、ルティーナの前で盾となり火炎をなんとか防ぎ切る。
そして反撃の準備ができたルティーナは、火炎が止まった瞬間にエリアルの肩の上に『デストラクション・シューター』を装着した右手を置き、狙撃手のように構える。
「くらえっ!」
リュウガに照準を合わせ、手裏剣に二十五センチほどの【爆】を描いて撃ち出す。
高速に発射された手裏剣は、見事にリュウガの腹部に命中する。
「マコト! やっちゃぇ!」
馬琴はすかさず爆発させるが、その煙の中からはほぼ無傷のリュウガの姿が現れる。
『デストラクションなんとかと言ったな? 試しに喰らってみたがそんな威力か』
「(なんて固さよっ……)」
『この体にはそんなもの――』
しかし、エリアルも黙っていなかった。
氷属性にした大剣から、氷の刃を飛ばし攻撃していたのだった。
グオォォーンッ!
(いや、様子がおかしい……エリアルの攻撃が読めなかったのか?)
(違う、意識に介入できるのは一度に一人なんじゃないか?)
『……』
『そんなことどうでもいい! そっちの娘も始末してやる!』
ルティーナはあきらめずに、エリアルと二人で攻撃をし続ける。
たまらずリュウガも空から火炎砲撃で応戦する。
『く、くそぉ~っ! ゴミ虫共がぁ~っ! 調子に乗りおってからにぃぃぃぃ!』
(俺の意識を放置して、エルの攻撃でも探ればいいじゃないか?)
『……』
その隙に、エリアルの氷攻撃がリュウガの羽を襲う。
すると一部が凍りつき、動きが鈍る。
「もしかして、羽はもろいんじゃない? こいつ」
リュウガは弱点を隠すように羽を折り畳み、攻撃対象にならないようにして地上へ降りる。
そして、手や足、そして尻尾を振り回す攻撃に変更する。
「うぁ、誰だ! こいつ」
エリアルが突然、頭を押さえながら混乱する。
「これがルナと会話していた……リュウガ」
馬琴はリュウガの意識がエリアルに移っている隙を見逃さなかった。
ルティーナに一瞬で作戦を指示し、『デストラクション・シューター』の【電】を一度解除し、もう一度、先ほどの倍の大きさで描いて再起動する。
そして、再び手裏剣に二十五センチほどの【爆】を描いて撃ち出す。
「これならどう?」
手裏剣はリュウガの腹部に、先ほど同様に突き刺さる。
だが――。
『貴様っ』
(今度はさっきより刺さり具合が違うようだな? 起動――っ)
ドゴーンッ!
グオォォーンッ!
明らかに反応が違った。
そしてリュウガの腹部からは血のようなものがにじみ出る。
「(マコト! 効いてる効いてる!)」
(あぁ、もっと電力を強くすれば体の中に打ち込めるかもな)
リュウガの意識はルティーナへと戻る。
『き、貴様っ! ふ、ふざけるな!』
『今まで多少手加減してやったが、今度は最大の火炎を浴びせてやる!』
リュウガの口元には先ほどとは比較にならない火炎が集まり始めていた。
「ルナ、さすがにあれは防げないっ!」
「エルっこっちに来て、城を後ろ盾にするのよ!」
しかし、その行動を見たリュウガは攻撃をやめる。
『ちっ、頭は切れるようだな……城――いや爆弾を盾にするとは』
(お前が最初に言ったんだぜ)
(爆弾が城にあるのがわかっているから、街を破壊しんだろ?)
『ふん……お前の洞察力を侮りすぎていたようだな』
「僕も会話に混ぜてもらうよ!」
「『ソード・オブ・ボルケーノ』っ!」
(【炎】)
エリアルは小剣に炎を纏わせ、ルティーナが負わせた傷めがけて二刀流殺法で攻撃を仕掛ける。
「くらえっ、氷炎の舞っ!」
グオォォーンッ!
『なんなんだ、貴様らの個々の火力の異常さ……本当に兄者の身に』
そして、リュウガは危険分子とみなし覚悟を決める。
『俺の身がどうなろうがどうでもいい! 城と一緒に塵にして――……』
――その時、リュウガの動きが完全に止まった。
「なんだ、楽しそうじゃねぇか?」
「あたいも混ぜてくれよ」
「「ミヤッ!」」




