1/41
少年たちの記憶
遠い鐘の音と街から響く怒号が、風に乗りここまで届いている。広く豪奢な部屋の中には小さな四つの人影があった。その中でただ一人の少女は瞳に涙を浮かべ、目の前にいる少年をじっと見つめていた。
「いやだ…いやだよ……」
窓の外で起きている異様な出来事。幼い彼等は、それが自分達の命に危険をもたらすものだと知っていた。
「…時間がない。早く逃げないと、今度こそ本当に……」
少女の目の前にいる少年は焦るでもなく、怯えるでもなく、ただ淡々と言い放った。
神父服の少年は、二人から少し離れた窓辺で、この建物に迫りくる人の群れを見ていた。彼等は雄叫びを上げ、狂ったように武器を振り上げて、明らかな敵意を剥き出している。その姿はさながら、獰猛な、飢えた肉食獣だった。
「いやだ!!私はリーフのこと忘れたくない!!考えよう、何か、何か他の方法が…!」
大声で叫ぶ彼女の背を、赤毛の少年が優しく撫でる。
神父服の少年は窓から離れると、クローゼットから外套を取り出し、少女の肩にふわりとかけた。
目の前の少年が優しい表情を見せると、少女の意識は少しずつ遠のいていく。
何かが剥がれるような感覚と共に、いやに響く鐘の音が脳裏に残った。




