6-19話 世界樹のペンダント盗難事件(捜査編②)
もうこの客室には何もないだろうと、探すのをやめて二階ラウンジへ移動する照たち。
そこで剣人と、他の冒険者パーティの三人と合流した。
「えっと……て、照……」
「な、何かな剣人?」
二人はまだ気まずそうだが、とりあえず捜査の報告を交わす。
「言われた通り宿屋の従業員さんにも手伝ってもらって、全員の身体検査をしたけど、何も見つからなかったよ」
「あ、ありがとう剣人」
ラウンジで待っていた剣人からそう聞くと、照は「うーん」と唸る。
「この宿屋の中に犯人がいるなら、世界樹のペンダントはこの宿屋のどこかに隠してあるか、犯人が身に着けていないとおかしいんだけどな? なのにどこにもないなんて、ペンダントはどこに消えてしまったんだろう?」
頭をひねる照に、隣にいた澪が尋ねる。
「それなんだけど……ねぇ照くん、例えば外部犯の可能性は無いの? ただの泥棒が出ただけなんじゃ?」
「外部犯ですか……いや、それはないんじゃないですかね。早朝から一階で働いていた従業員たちは、宿泊客以外の出入りを見ていないと証言してますし、客室の窓なども見て回りましたが、外部からの侵入の痕跡はありませんでしたし。それに盗まれたものがペンダントだけなのもおかしいです。物取りの犯行なら、机の上にあった財布や荷物に手を出さないワケが無い」
「だったら……エルウッド君の自作自演って可能性は?」
その澪の言葉にエルウッドが声を上げる。
「はっ!? お、俺っ!? そ、そんなわけないだろ!」
「だけど宿屋から外にペンダントを持ち出したとしたら、早朝のお祈りに出ていたエルウッド君しか可能性は無いんだよね。それに動機もあるよね? 嫌っていたドドンゴ君に犯行を擦り付ければパーティから追い出すことができるし」
「ち、違う! 俺じゃない!」
慌てるエルウッドを照が擁護する。
「いえ澪さん、その仮説は成り立ちませんよ。もし犯行の目的がドドンゴさんに濡れ衣を着せる事なら、彼の仕業に見えるようペンダントは宿屋の中に隠しておかなければ成り立ちません。だって犯行時刻から今まで、ドドンゴさんはずっと宿の中にいましたから。それに今みたいにペンダントが見つからないのは、エルウッド君の里の掟を考慮すると拙い状況で、これが自作自演とは考えにくいですよ」
「なるほど確かに。だとしたら……」
考え込む仕草を見せた澪がさらに照に尋ねる。
「じゃあやっぱり犯行動機はエルウッド君に対する嫌がらせね。宿の中にペンダントが無いのなら、考えられるのは客室の窓から外に捨てたって可能性かな? 宿屋の裏手は川になっているから、そこに投げ込めばペンダントが見つかることはなさそうだし。動機が嫌がらせなら、それで十分目的は達成できるでしょ?」
「それなんですけど……うーん……」
悩み込む照は、今度はエルフ美女のフォレスティーナに質問を投げかける。
「フォレスティーナさん。さっきペンダントを欲しがる人もいないって言ってましたけど、本当に貴重じゃないんですか? もし実際に売ったら具体的にどのくらいの値段になりますか?」
「値段? いえ、そもそも売れないと思うわよ。確かに珍しい素材ではあるけど、何かの素材にするには小さすぎるし、用途が何もないからね」
照の質問に答えるフォレスティーナ。
「レアな素材と言うだけだから、もしかしたら酔狂な貴族が欲しがるかもしれないけれど……一般人にそんな伝手は無いし、もし売れたとしてもそれほど高いものじゃないんじゃないかしら? さっきも言ったけれど所詮は木だからね。その用途は限られているもの。そうね、例えば――」
そう言って彼女は自分の弓を差し出した。
「この弓も世界樹の枝から作られているけど、せめてこれくらいの大きさが無いと素材として利用できないわね。エルウッドのペンダントはきっと、こういう道具を作った時に出る端材を利用して作られてるんだと思うわ。他に使い道もないからね」
「な、なるほど。この弓も世界樹の木で出来てるんですね。すごく装飾に凝っていて、なんだか神聖な感じのする弓だなぁ」
「そうかしら? まぁそういやドドンゴもこの弓の装飾は褒めていたわね」
弓を受け取った照が好奇心に従って鑑定をしてみると――
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[世界樹の弓]
世界創成から存在すると言われる大樹、世界樹の枝から作られた弓。
世界樹は火で燃えないため、この弓も火に耐久性がある。
放った矢に風属性を与え、飛距離を倍に延ばす。
効果:攻撃+45 風属性付与 飛距離倍化
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――鑑定結果を見るに、相当の業物のようだった。
「……アレ? でも待てよ……」
そこで照は、弓を返そうとした手を止める。
「……そうか、だったらそういう事かも……」
「どうしたの照くん、何か分かったの?」
――世界樹のペンダントを盗んだのは誰なのか?
――盗まれたペンダントは何処へ消えてしまったのか?
今回の事件にはこの二つの謎がある。
首をかしげる澪に、晴れやかな表情で照が答える。
「はい、スキルじゃ見えない真実が見えました」




