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6-18話 世界樹のペンダント盗難事件(捜査編①)

 エルウッドの泊まっている客室に、捜査の名目でやってきた(テル)

 部屋の中は他の客室と同じく六畳ほどの広さ。

 備え付けのクローゼットにベット、あとライティングテーブルと椅子が一式置かれていた。


「そのペンダントというのは、この引き出しに入ってたんですね?」

「そ、そうだ! 昨日寝る前にココにしまってたのに、今朝見たらなくなっていたんだよ!」


 テーブルに付いている引き出しを開きながら(テル)が尋ねると、エルフ少年のエルウッドがイライラした様子で答えた。

 テーブルの引き出しには鍵がついているのだが、それを壊したような痕跡がある。


「犯人はわざわざ引き出しの鍵を壊して、中にあったペンダントを持って行ったのか……」


 (テル)は引き出しを引き出しを占めてテーブルの上に目を移す。

 そこにはバッグと財布、それに魔法の杖が置かれていた。

 捜査を続ける(テル)の隣で不満を漏らすエルウッド。


「まったく……どうしてこんな奴に捜査なんて……」


 そんなエルウッドに対し――


「ふーん? 私の命令がそんなに気に食わないの?」


 ――そうチクリと言ったのは、魔法騎士団団長でメガネ美人の(ミオ)だ。

 彼女は現在、部屋の扉の前に立って二人を監視している。

 どうして彼女がいるかというと――騒ぎを聞きつけてきた(ミオ)に、(テル)が状況を説明すると、『面白そうね』と捜査に協力してくれる事となったからだ。


「ミ、ミオ様! いえ、滅相もありません!」


 慌ててエルウッドは居住まいを正す。

 捜査で自分の部屋を調べるとなった時、最初エルウッドは渋っていたのだが、(ミオ)が間を取り持って許可させていた。

 昨日の恋愛事ではしゃいでいた(ミオ)の様子からは思いもつかないだろうが、こう見えて彼女は数少ないS級冒険者であり、かつて国を救った英雄の一人であり、今は軍のお偉いさんだ。

 エルウッドが畏まるのも無理はない。

 ちなみに他の四人――朔夜(サクヤ)鈴夏(スズカ)(タケル)蓮司(レンジ)は、まだ就寝中のようだ。


「そう、それじゃ捜査を続けなさい、(テル)くん」

「わ、分かりました、(ミオ)さん。それじゃエルウッド君、ちょっと質問させていただきますけど……」


 (ミオ)に急かされ、(テル)がエルウッドに問いかける。


「昨日、この引き出しにペンダントを入れてから、この部屋を離れたのはいつ、どのくらいの時間ですか?」

「それは……朝のお祈りで二十分くらい外に出ていたけど、部屋を空けたのはそれくらいかな? あとはずっとココにいたけど……」

「じゃあ盗まれたとしたらその二十分間?」

「ああ、だと思う」

「時間としては限られてますね……。というか、ホントに盗まれたんですか? 部屋の中をよく探しました?」

「ちゃんと探したよ! 鞄やクローゼットの中も調べたよ! でもどこにも見当たらなかったんだ!」


 エルウッドが苛立たしげにそう答える。と、そこへ――


「すみません、いいですか?」


 ――と、廊下の外から声がかかった。

 そこにいたのは、宿屋の制服を着た従業員の女性だ。


「従業員総出で、空き室と冒険者の方々の部屋の中を調べましたが、そのような木のペンダントはありませんでしたよ? あとはまだ起きてきていないお客様の部屋だけですが……」


 捜査に協力してくれた従業員がそう報告してくれた。


「ああ、それなら大丈夫、ボクらの仲間は犯人じゃありませんから」


 (テル)がそう答えると、(ミオ)が驚いた表情を見せる。


「へぇ……(テル)くん、犯人じゃないって言いきるって事は、何か根拠があるのかしら?」

「ええ、(ミオ)さん。ボクたち一行にはアリバイがありますからね」

「アリバイ?」

「はい、(ミオ)さん。実は事件の前、ボクは部屋に戻るエルウッドくんと、二階のラウンジで会っているんです。覚えてませんか、エルウッド君?」

「……ああ、そういえばフォレスティーナとドドンゴと一緒にいたな」


 思い出したようにエルウッドが答えた。(テル)が続ける。


「だけどその場面の前、ボクは剣人(ケント)の部屋の前にいました。起こすかどうか二十分ほど悩んで、最終的にドアをノックして留守だと分かったんですけど……」

「で、それがなんだっていうの?」


 尋ねるエルウッドに、(テル)が答える。


「ペンダントが盗まれた時間は、今朝エルウッドさんがお祈りで部屋を離れた二十分間――。

 その犯行時刻である二十分間、ボクは剣人(ケント)の部屋の前にいたんです。剣人(ケント)の部屋の前からは、同じフロアにある仲間全員の部屋のドアが見える状態でした。そしてボクがそこにいた二十分間、部屋から出てくる人も部屋に戻って来る人もいませんでした。つまり――」

「――つまり(テル)くんが私たち全員のアリバイの証人という事ね」


 納得した様子で(ミオ)が台詞を引き取った。


「確かにそれなら私たちの犯行はあり得ないか」

「まぁ、あくまでボクの主観では、ですけどね。ボクが嘘をついていると疑われたら、証明できる手段は無いですが……」


 エルウッドが「別に疑ったりしないさ」と、肩を竦めて会話に参加する。


「だって犯人はドドンゴで決まりだからな。俺はドドンゴ以外疑ってないぜ」

「そう決めつけていいとは思いませんけど……」


 (テル)は苦笑いをしながらエルウッドの言葉を受け取る。


「でも、泊まった客室はボクたちが二階でエルウッド君たちが三階。階が違うので当然エルウッド君たちのアリバイまでは証言できませんし、従業員はそれぞれ早朝から仕事中でお互いのアリバイが主張できるようですしね。犯人がいるとすればやはりエルウッド君のパーティの中しか考えにくい状況ですね」

「ちょっと待って、(テル)くん。そうは言い切れないんじゃないかな?」


 そう疑問を呈したのは(ミオ)だ。


「さっき(テル)くんが私たちのアリバイを証言してくれたけど、一人例外がいるでしょ?」

「例外?」

剣人(ケント)くんだよ。彼は誰よりも早くに起きて早朝トレーニングしてたって話でしょ? 彼のアリバイは証明できないんじゃないの?」

「それなら大丈夫。剣人(ケント)はエルウッド君より先に早朝トレーニングのため宿の外に出て、戻ってきたのもエルウッド君の後でした。そのことは一階で作業していた従業員さんも目撃しています」

「――なるほど。エルウッド君が部屋を空けていた時間、剣人(ケント)くんも宿の中にはいなかったんだね。だったら彼にも犯行は不可能か」


 そんな会話を続けながら、(テル)たちは、エルウッドの泊まった部屋の中を徹底して家探ししたのだが――結局何も見つからなかった。

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