5-1話 処女ビッチとはいえ所詮は処女
【忘れている人のための、これまでのおさらい】
体は女で心は男なトランスジェンダー惣真照は、連続爆破事件に巻き込まれ、異世界にTS転移してしまった。
せっかくならチートハーレムを目指そうとするも、与えられたのが[探偵]という、どう考えても俺Tueeできそうにないハズレジョブ。
しかも公爵令嬢ウェルヘルミナの悪だくみを暴いてしまったせいで、危険な『魔の森』へ追放されてしまう。
『魔の森』からなんとか生還しようと頑張る照は、そこで照より四年も前に異世界転移していた瀬名尊と再会。
照は尊の手を借りて『魔の森』を脱出し、公爵令嬢ウェルヘルミナのいるノルド城に向かうのだった。
一方その頃、ノルド城に残された朔夜と鈴夏の二人はというと……。
(※このあとからが第五章本編です)
* * *
照がいなくなって五日ほど経ったノルド城――。
そこではひっそりと、女性だけの怪しくも奇妙な夜会が繰り広げられていた。
蝋燭の灯りだけに照らされた薄暗いベッドルーム。
豪華に彩られた装飾に、天蓋のある豪華なベッド。
そのベッドの上にいるのは『全校生徒の名前を憶えてる系生徒会長』でミステリーマニアの朔夜だ。
彼女はそのしなやかな肢体を投げ出すように、そのやわらかいシーツの上に仰向けに寝転がされていた。
朔夜は腕を引っ張ってみるが――
――ガチャガチャ
――と金属音が鳴るだけで身動きが取れない。
なぜなら彼女の手首と足首にはベルトが巻かれ、そのベルトから伸びた鎖がベッドの四隅の柱に繋がれているからだ。
はしたなく両手両足を広げた格好のまま、身動きひとつできない朔夜。
「ごきげんよう、サクヤ様」
そんな無抵抗な朔夜に声を掛けたのは、公爵令嬢でクレイジーサイコレズ(称号)のウェルヘルミナだ。
ウェルヘルミナはベッドの縁に腰を掛けると、うっすら笑みを浮かべながら朔夜の顔を覗き込む。
「ご気分はいかがですか、サクヤ様?」
「……そうね、最低な気分だわ」
吐き捨てるような朔夜のセリフに、ウェルヘルミナは笑みを深める。
獲物を前に喜ぶ肉食獣のごとき嗜虐的な笑みだ。
「ウフフフフ、怒った顔も魅力的ですわね。それに……」
ベッドに上ったウェルヘルミナは、なすがままの朔夜に寄り沿うように寝そべると、その肌に指を添わせる。
「美しいだけじゃなく、肌もこんなにきめ細かくて……。ほら、こんなにスベスベ――」
朔夜の太ももを怪しく撫でるウェルヘルミナ。
その手が次第に腰、脇と朔夜の体を上がっていく。
そして――ついに彼女の程よく膨らんだ胸へと手がかかった。
モミモミ……。
ウェルヘルミナが朔夜の胸を弄ぶ。
「ウフフ、サクヤ様ったら。柔らかくも張りがあって、素敵なものをお持ちですのね」
「――っ! この変態女っ!」
悔し気に歪む朔夜の顔に、愉悦の表情のウェルヘルミナが顔を寄せ――
――チュウゥッ
――朔夜の頬にキスをすると、そのまま耳元でささやく。
「その恥辱にまみれた表情も素敵ですわ、サクヤ様」
「――とんだ変質者ね、ウェルヘルミナ! いい加減にしなさい!」
怒りも露わに怒鳴りつける朔夜だが、今の彼女には成す術もない。
その様子にますます顔を上気させるウェルヘルミナ。
彼女の指が怪しく動き、朔夜の胸を優しく揉み解す。
「――さぁサクヤ様、このまま二人で楽しみましょう」
「くっ! やめなさい! やめ――」
潤んだ瞳で朔夜を見つめるウェルヘルミナは、そのまま彼女を――。
――――――
――――
――
――それから約三十分後。
モミモミモミモミモミモミモミモミモミ……。
ベットの上で、ウェルヘルミナは朔夜の胸をひたすら揉み続けていた。
「……ねぇ、ウェルヘルミナ」
たまらず朔夜がウェルヘルミナに訊ねる。
「これはいったい何なのかしら?」
「ウフフ。さすがのサクヤ様も、そろそろ音を上げ始めましたか?」
「音を上げるも何も……本当に意味が分からないわ。 いったい何がしたいのかしら?」
「決まっているじゃありませんか! こうして胸を揉む事で、サクヤ様に恥辱を与えているのです!」
「…………はぁ?」
「これほどの辱めに健気に耐えるサクヤ様の姿……ああ、たまりませんわ! いつまで耐えられるか見ものですわね。ウフフフフ……」
「…………」
あまりに意外な返答に、思わず黙り込んでしまう朔夜。
朔夜は色々と頭の中で整理をし、(ひょっとしてこの子……)と想像した事を訊ねてみる。
「……ねぇ、ウェルヘルミナ」
「何ですか、サクヤ様?」
「貴女……セックスって知ってるかしら?」
「セ……ックス……? 何ですの、それは?」
首をかしげるウェルヘルミナに、さらに質問する朔夜。
「それじゃタチやネコは? 貝合わせって分かるかしら?」
「……太刀? ……猫? いったい何を言っているのですか?」
「そう……」
彼女のリアクションに、やっぱり……と朔夜は得心する。
(この子……性的にバカなのね)
そんな朔夜の憐れむような視線に、不快感を露にするウェルヘルミナ。
「な、何ですの? サクヤ様はいったい何がおっしゃりたいんですの?」
「……そうね、ウェルヘルミナ。貴女に言えることはこれだけよ……」
朔夜は深くため息をつくと、ウェルヘルミナに向けて言い放つ。
「この――――ヘタクソ!」
「なっ! わ、わたくしがヘタクソ……?」
その一言に衝撃を受けるウェルヘルミナ。
朔夜はさらに言い募る。
「そうよ、ウェルヘルミナ。貴女の独りよがりな愛撫じゃ、いくらされたって私の体は堕とせない。少しは照くんを見習ったらどうかしら」
「テ、テル様? どうしてここで、あの男の名前が出てきますの?」
「決まってるじゃない。それは彼が最高のテクニシャンだからよ。彼のあの卓越した推理力による、繊細で、かつ暴力的なまでの解決劇! ああ、思い出しただけで体が疼くわ……あふんっ」
ウェルヘルミナにさんざん乳を揉まれても微動だにしなかった朔夜が、推理を披露する照の事を思い出しただけで嬌声を上げた。
お忘れかもしれないが……朔夜という少女はミステリー好きで、謎が解けるカタルシスでエクスタシーが得られるほどの変態なのだ。
「お、思い出しただけでこんな……!」
その様子を見て、ウェルヘルミナは敗北を知る。
それに引き換え朔夜は、まるで自分の事のように得意げだ。
「そうよ、ウェルヘルミナ。照くんのあの超絶技巧を味わってしまったら、貴女のようなテクニックの欠片もない愛撫なんかじゃ、心はおろか体だってイけないわ!」
「そ、そんな……! このわたくしが、何の価値もないからとゴミのように捨ててやった、あの男より劣っているというのですか!」
「当然でしょう、このヘタクソ。処女ビッチとはいえ所詮は処女。性交経験の皆無な貴女が、彼に勝とうだなんて百年早いのよ!」
「――っ! し、『しょじょ』が何だか分かりませんが、途轍もない敗北感ですわ――!」
ウェルヘルミナはガックリと肩を落とした。
このまま敗北を受け入れるのかと思いきや――
「……認めません、やっぱり認められませんわ!」
――ギリリと奥歯を噛み締めて立ち上がるウェルヘルミナ!
「わたくしがあんな男に劣っているなどあり得ません! 見ていなさい、サクヤ様! 今日は無理でも明日こそ、サクヤ様をアンアン言わせて見せますわ――っ!」
そしてそのままバタンとドアを開け、ベッドルームから飛び出していったのだった。
――ちなみに。
ベッドルームで起きた一連の騒動の間、二人はずっと着衣のままだった。
……裸だなんて一言も書いてないからね、性的搾取じゃないよね?




