4-6話 ナイチチってのはやっぱりシンドイ
鑑定結果はこうだ――。
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名前:タケル・セナ
性別:男 年齢:20 種族:人間
状態:なし
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【ジョブ】
[勇者Lv.10(Max)][魔物使いLv.10(Max)]
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【称号】
[異世界からの転移者][S級冒険者][歴戦の猛者][特級魔術師][ソロマスター][おっぱい星人][性欲魔人][ヤリチン百人斬り][細マッチョ][スピードスター][勉強家][モンスターの友][バトルジャンキー][ジャイアントキリング][英雄に至る者][魔物の主][迷宮『魔の森』踏破者]
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【ステータス】
ステータスレベル:67
HP:1055/1109 MP:1004/1101
攻撃:713 防御:569
魔力:641 魔抗:516
器用:432 俊敏:661
幸運:166
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【アクティブスキル】
[聖剣術Lv.10(Мax)][聖剣術Lv.10(Мax)][隷属魔法Lv.10(Мax)][鞭術Lv.10(Мax)]
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【パッシブスキル】
[経験値×10倍][HP最大値+100P][MP最大値+100P][攻撃力+70P][魔力+70P][気配察知(上級)][性力増強(大)][物理被ダメージ10%軽減][防御+20P][瞬発+100P][魔抗+20P][全ステータス+20P][ピークエクスペリエンス][ティムマスター][リモートエンカウント『魔の森』]
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(うわぁ、尊兄ちゃんもめちゃめちゃ強そうだなぁ。ジョブが[勇者]って、朔夜さんと同じレアジョブじゃないか。う、羨ましい……)
尊のステータスを順番に確認していく照。
(えーっと称号は……って、ナニコレ? [おっぱい星人]とか[性欲魔人]とか、性関連の称号がいっぱいあるんだけど……。くっ、この『エロエロ勇者』め!)
称号にちょっと引きつつ、照はさらにステータスを読み進める。
(ステータスレベルは67か。マリーさんのレベル100には及ばないけど、尊兄ちゃんも充分高いよね。あとは……って)
「――っな!」
思わず声を上げてしまった照。
スキルの数、性欲関連の称号、高いステータス。
だけど、それら以上に照が気になったのは……。
([隷属魔法]!? これってウェルヘルミナと同じ魔法じゃないか!)
――[隷属魔法]とは、ジョブ[魔物使い]が覚える魔物を従えるための魔法だ。
(いやでも……よく考えてみれば当然か。マリーさんが『従魔』なんだから[隷属魔法]が無いとおかしいもんな。しかもこれ、ウェルヘルミナより上のレベルマックス? だったら……尊兄ちゃんなら……)
「……? どうした、テル? 俺のステータスを見たまま固まっちゃって」
不審な表情で尋ねてくる尊に、照は――
「お願い、尊兄ちゃん! 朔夜さんと鈴夏さん……いや、あの城で[隷属魔法]にかかっている全員を助けてよ!」
――そう懇願する。
照を『魔の森』に追放した悪役令嬢ウェルヘルミナは、この[隷属魔法]を使って人間を従えることに成功していた。
このまま放っておけば、残された朔夜と鈴夏もいずれ奴隷にされてしまうだろう。
それを防ごうと必死な照の態度に、今までヘラヘラしていた尊の表情も引き締まる。
「…………どういう事だ? 詳しく聞かせろ」
ようやく真面目な態度を見せた尊に、照は異世界転移してから今までのいきさつを語る。
アインノールド城に転移してウェルヘルミナと出会い――。
朔夜と鈴夏と共に『成人の儀』を受け――。
突然起きた殺人事件を解決し――。
最後はこの『魔の森』に追放されてしまった――。
そして――。
――照が今までのいきさつ全てを語り終えたとき、尊は険しい表情になっていた。
「そ、そんな……そんな恐ろしい事が……」
「分かってくれた? 尊兄ちゃん!」
「ああ、とんでもないことが起きてたんだな」
真剣な顔で尊が頷く。
「まさか…………照が男になってたなんて」
「いやいやいや! 今はそこ、どうでもいいから!」
慌ててツッコミを入れる照。
だが――
「何言ってるんだ、重要な事だろ!」
――と、尊はいたって真面目な様子。
「女の子からのお願いだと思って聞いてたら、まさかの男だったなんて……。え~、ないわ~、やる気出ないわ~」
「こ……この人……。さっきからホントにもうノンデリ過ぎる……」
尊の変貌ぶりに思わず涙を流す照。
一方の尊は――
「……いや待てよ。男でも照ぐらい可愛ければ一回くらい……。試してみるか……?」
――と、何だか『アッー!』な事を言い始めた。
「ちょっ、試さないで! やめてよ、怖い事言うの!」
「……ああそうだな。想像してみたが、貧乳どころか全くの無乳ってのはやっぱりシンドイわ」
「アンタ……いい加減にしろ! どこまでコンプラ違反すれば気が済むんだよ! おっぱい好きにも程があるだろ!」
「なんだ照、お前はおっぱいが嫌いなのか?」
「――好きだけど! 大好きだけど! でも今はそれどころじゃないだろ! とにかくお願い、助けてよ! 皆に掛けられた[隷属魔法]、尊兄ちゃんなら解除できるんじゃないの!?」
「うーん、どうかなぁー」
腕組みをして考え込む尊。
その様子を見た女王様が提案する。
「なんじゃ主様、もしかしてソイツに頼られて迷惑しておるのか? なら知人とはいえもう必要なかろう。その人間、妾が処分してやってもよいぞ?」
「……………………いや、コイツは大切な知人だ。手を出すな」
「フォローまで随分と間があったけど何で!? ボクが男になったから!? ねぇ尊兄ちゃん!」
ツッコむ照に、だが二人は構わずイチャつき始める。
「主様がそう言うのなら手は出さぬよ。妾は主様の言いなりじゃからな」
「アッハッハ、可愛い奴だな、マリーは」
「ウフフ、だったら主様、もっと撫でてほしいのじゃ」
イチャイチャイチャ………………。
「…………あのぉ、そもそもお二人はどういったご関係で?」
見ていられなくなった照が、思わず質問してみると、マリーから返事が返ってくる。
「……関係のう。言ったと思うが、妾は主様の従魔じゃ。一か月ほど前だったかのう、主様がふらっとこの魔の森にやってきてな。『この『魔の森』ダンジョンを攻略しに来た』と生意気な事を言う人間だと思うて殺しに行ったら、返り討ちに合ってしまったのじゃよ。その時の強さに惚れた妾が、主様の従魔になる事を受け入れたのじゃ」
(へー、尊兄ちゃんとマリーさん戦ったんだ。でもレベルはマリーさんの方がずっと高かったよね? なのにマリーさんを倒して従魔にしたの? てことは……結構すごいジャイアントキリングやったんだなぁ)
女王マリーの話から分かる尊の活躍に、素直に感心する照。
そのとき――近くの茂みがガサリと音を立てた。
「――何者じゃ!」
音のした方の茂みに向けて、怒気を向けるマリー。
すると――




