4-7話 その現場だけ見ればボクが犯人だよな(※事件概要)
「ぐ……ぐゥウうううう……」
――茂みから緑の肌の人影が姿を現した。
先ほど照を襲ってきたあのホブゴブリンだ。
「どうしたのじゃ? 帰れと言うたはずじゃが?」
魔の森の女王であるマリーに睨まれるホブゴブリン。
だが今度は引く様子がない。
「……はやリ納得できなイ! そこの人間を殺させロ!」
そう言って決意を込めた目で照を睨みつけてくる。
「兄を殺した犯人ハ、そいツ以外に考えられン! だカら殺さなけれバ気が済まなイ!」
「ふむ……まだ言うか。お主がそこまでいう根拠はなんじゃ?」
「兄の遺体には大きな刀傷があっタ! 兄の命を奪ったのは人間の作った剣ダ! 鉄の武器を使うモンスターなドこの森にはいなイ。なら犯人は人間以外にいなイ!」
「……なるほど、疑うだけの理由はあるという事じゃな」
「それにソの人間が殺したのは兄だけではなイ! 兄を含めてこれまでに八匹のゴブリンが同じよウに切り殺されていル! このマまそいつを放置すれば、また仲間が殺されル!」
「……切羽詰まった事情もあるようじゃな。だが間違いじゃ、此奴は犯人ではないぞ」
「違っていても構わなイ! 人間なんぞついでに殺して何が悪イ!」
「妾も人間などどうでもよいが、一応は主の知人じゃからなぁ」
目の前で自分の命のやり取りがなされているのを聞き、戦々恐々とする照。
「命が軽い! ちょっと待って、ボクの命をそんなに軽く扱わないで!」
「――よし照、じゃあこうしよう」
焦る照の隣で、尊が何かを思いついたように手を叩く。
「あのホブゴブリンが言っている連続殺人……じゃない、連続殺ゴブリン事件か。その事件、照が解決してやれよ」
「……って、はいぃ!? 待ってよ尊兄ちゃん! どうしてボクがそんな事――?」
「だって照、お前[探偵]なんだろ? だったら探偵らしいところを見せてくれよ。そしたら俺も、お前の友達を助けるの手伝ってやるから」
「えぇえ~……なにその交換条件……? そもそもジョブが[探偵]なだけで、ボクがホントの探偵なワケじゃないんだけど……」
「そんなに嫌か? ならいいや。その代わり照の友達は助けないし、お前はずっとこの『魔の森』にいる事になるな」
「うぇえっ! それは困るよ!」
「だったらどうする? やるのかやらないのか、どっちだ?」
「ぐぬぬ……そんなの戦えないジョブしかない人間に拒否権なんて無いじゃないか!」
無茶な条件を突きつけられて歯噛みする照だったが、待てよ――と冷静になって考えてみる。
(朔夜さん鈴夏さんを助けるために、尊兄ちゃんの助力を得ることを考えたら、ここは事件解決に協力するしかないよなぁ。それに……)
照は改めてホブゴブリンを見る。
(コイツも仲間を殺されてるって言ってたよな。いくらモンスターだからって放っておくのは間違ってる。だったら――)
どうやら覚悟を決めた様子の照。
「……分かったやるよ、やればいいんだろ」
そう決心して尊を睨み、次いでホブゴブリンの方を見ると――
「ぐルるぅうううウウウ……」
「ひぃいいいいっ!」
――殺気の籠ったガンを飛ばされ、思わず悲鳴を上げる照。
(……ちょ、ちょっと無理かも! こんな奴と犯人探しなんてやっぱ無理かもぉおおおおっ!)
先ほどまでの決意はどこへやら、意気消沈して心の中で号泣するのであった――。
* * *
廃墟に転移させられた翌日――。
『魔の森』の廃墟で無事朝を迎えることができた照は、尊、魔の森の女王マリー、そして昨日のホブゴブリンと共に、連続殺ゴブリン事件の現場であるゴブリンの村へ向かうこととなった。
その道中、照は村まで先導していたホブゴブリンに[探偵の鑑定眼]を使ってみることにした。
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名前:ゴブ助
性別:男 年齢:3 種族:ホブゴブリン
状態:なし
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【タイプ】
[ホブゴブリンLv.9]
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【称号】
[ゴブリン族][進化の天才][D級モンスター]
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【ステータス】
ステータスレベル:28
HP:390/419 MP:289/324
攻撃:237 防御:243
魔力:212 魔抗:138
器用:210 俊敏:213
幸運:60
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【アクティブスキル】
[ゴブリンスキルLv.9][格闘術Lv.9]
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【パッシブスキル】
[繁殖力増強(中)][二段階進化][HP最大値+20][MP最大値+20]
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「ねぇ、キミの名前、ゴブ助っていうんだろ。ボクは照、よろしくね」
「黙レ人間、ぶち殺すゾ!」
「ひぃっ!」
鑑定で得た情報をネタに照がホブゴブリン――ゴブ助――に語りかけるも、けんもほろろな様子のゴブ助。
「女王様の命令だかラ、今は殺さなイ。真犯人とやラを本当に見つけられたら、その時ハ殺すのを勘弁してやル。だガ人間などと仲良くする気などなイ、俺に気安く話しかけるナ」
「……は、はい……」
照としては同行することになったゴブ助とのディスコミュニケーションを早めに解消しておきたいところなのだが……見ての通り取り付く島もない。
「ところで……」
そう切り出したのは、同じく同行中の魔の森の女王マリーだ。
ちなみにもう一人同行中の尊の方は、今回の捜査の発案者のくせにボーっとしてなんだか興味がなさそうだ。
「ゴブ助よ、村に着く前に聞いておきたいのじゃが、その連続殺ゴブ事件というのはどんな事件なんじゃ?」
「それハ……」
女王様に尋ねられ、ゴブ助が答えた連続殺ゴブ事件――。
概要はこうだ。
――数か月前から、村の外に出たゴブリンが切り殺される事件が多発。
最初に発見された遺体は左肩から右脇腹にかけ剣で切られた傷があった事から、何者かに殺害されたのだと推測された。
だがその犯人の正体は一向につかめず、時間が経って同じように切り殺される犠牲ゴブリンが二匹目、三匹目と増えていく。
そして昨日、八匹目の犠牲ゴブリンとして、村の最強の戦士であるゴブ助の兄、ゴブ郎が殺されるに至った――。
「ゴブ郎兄さんも今までト同じように剣で切られて死んでいタ。そしテ遺体の傍には剣を持った貴様がいタ。どウ考えても犯人は貴様以外にいなイ。
真犯人を探すなどト適当な事を言っテ、罪を免れようとしても無駄だからナ」
ゴブ助はギロリと照を睨む。
睨まれた照はアハハ……と引き攣った笑いを見せ――
(確かにその現場だけ見ればボクが犯人だよな……)
――と、冷や汗を流すのであった。




